1冊の単語帳を1127日かけて2周したら語彙力が1万2千語になった (original) (raw)

「英文がスラスラ読めるようになりたい」私の切実な願いに、読書猿さんは言い放った「まず2万語な!」―――6年前の話だ。

藁にもすがる思いで手を出したのがこれ。1127日かけて2回読んだ。結果は次の通り。

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7870 words 始める前 9944 words 1周目(610日)完了後 12509 words 2周目(517日)完了後

語彙力はpreplyでテストした。

Preply

語彙力が増強されていることが数字で分かるが、あまり驚きはない。この『Merriam-Webster's Vocabulary Builder 』は、250もの語根や語幹をベースに単語を解説する単語帳で、私の英語力で背伸びして読めるレベルなので、そりゃ2回も読んだら強くなるわな、と思う。

それよりも、3年も続いたことに驚いている。

学校を卒業してから、英会話学校へ通ったり(1ヶ月で挫折)、通信講座を受けたり(2ヶ月で挫折)、英語の本に挑戦したり(1時間で挫折)してきたのだが、どれも続かなかった。

「継続こそパワー」なんて知ってる。問題は、「継続」が続かないことだ。

この記事では、どうやって継続したかに着目して、私がやってきた工夫を紹介する。

骨しゃぶりさんの「プログラミングに挫折したならAIお姉ちゃんに任せなさい」から学んだ。プログラミングの上達レベルに合わせて教えてくれたり、エラーのトラブルシューティング先になってくれるAIお姉ちゃんだ。

分からない単語や、掘り下げて知りたい単語に出会ったとき、辞書を引けばいい。単語を長押しすると辞書と連動した画面が出てくる。

それだけでも便利なのだが、その単語を語根から解説したものや、同じ語根の単語、同義語、反意語、使用例をまとめて知りたい。さらに、単語だけじゃなく、イディオムや文章もまとめて翻訳・解説してくれるとありがたい。

もちろん、辞書をあれこれ引けば出てくるし、ネットを探せばあるのも知ってる。けれども、いちいち検索するのは面倒だ。この面倒なことを一手に引き受けてくれる、英語お姉ちゃんを錬成した。

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何でも言うことを聞いてくれる英語お姉ちゃん

英語お姉ちゃんのスペック。

一つの単語を聞くたびに、芋づる式に単語が増えていくし、複雑に絡み合った英文が出てきても怯まなくなった(英文を渡した後、このthatって何?とか、主語は何なの?と聞いて、構文を確かめることができるのも有難い)。以下、fallacyを聞いてみた例。

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毎日彼女と話し込んでおり、日によっては、リアル嫁様よりもコミュニケートしていると言える。

工夫2:ラーニングログ

『独学大全』で教わったやり方。

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何をどれだけ学ぶかの目標を決め、それに向けてどれだけ進んだかを記録する。ページ数や章・節、学習単元という積み重ねを、手帳などに一覧できる形で記録する。そして、記録を見返すことで、目標と現在位置を把握する技法だ。

私の場合、Googleスプレッドシートに単語帳のページ数を一覧化し、その隣に日付を入れる欄を設けた。読み終えたページ番号の脇に日付を入れると、自動的にそのセルが塗りつぶされるようにした(実際のラーニングログ)。

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単語帳は692ページある。これを全部、一気に読むのは不可能だ。だから分割して、一つ一つ石を積むように塗っていく。朝起きてからの10分間、単語帳を読むことをルーティンにするのだ。

ラーニングログのことを、読書猿さんは「航海日誌(ジャーナル)」と呼んだ。出発点と現在に至る軌跡の累積であり、ペースメーカーなんだ。

工夫3:コミットメントレター

これも『独学大全』で学んだ。

学習予定を書き出して、家族や友人に渡す。受け取った人がチェックする必要はないが、それだけで強い動機付けになるという。なんならSNSに公開してもいい。自分との約束は破りやすいが、それを見せることで、社会的な縛りにする技法だ。

私の場合は、twitter で宣言することにしている。

Merriam-Webster's Vocabulary Builder を毎日読みます。読んだ分を記録して公開します(2周目)。 #独学大全 #ラーニングログ #コミットメントレターhttps://t.co/Uas8DyN7ZN

— スゴ本の中の人 (@Dain_sugohon) September 9, 2024

人は環境の生き物だ。私の「鉄の意思」なんて真夏の氷のように溶けやすい。

だから、「私の意思」を外出しにする。誰でも見ることができる場所に晒すことで、自分を縛るのだ。やらなかったからといって批判する人は、おそらくいないだろう。それでも「見られている」という感覚は残り続ける。

いまさら英語をやり直す理由

1周目の成果はここに書いた通りだが、1万語というボーダーを超えた今、確かに自分が変わっているのが分かる。

最初はロクに分からなかったのに、だんだん読めるようになった。大量の英文が出てきても、怯むことが無くなった。ざっと見て、精読する必要があるかどうかを判別し(←ここ重要)、必要なら英語お姉ちゃんに聞くか、翻訳サイトに任せればいい。

DeepLなど優秀な翻訳ソフトがあるのに、なぜ英語をやり直すのか?

たどたどしく読むよりも、母語でスラスラ読むほうが何倍も速いに決まっている。読むべきサイトや論文のURLやPDFを放り込んで、出てきた日本語をナナメに読めばいい。「まだ英語で消耗してるの?」なんて煽られたこともある。

確かにその通りなのだが、やり直し英語を積み重ねてきて分かってきたことがある。それは、「読むべきものを選ぶために、読めるようになる必要がある」という点だ。

tweetに貼り付けられた寸言、飛ばされたリンク先の英文PDF、goodreadsの膨大なレビューなど、様々なタイミングで目に触れる大量の英文を一つ一つ翻訳ソフトに入れるわけにはいかない。自分の最も重要なリソース(=時間)を使って、その先を読むべきかどうかを瞬時に判断する必要がある。

かつて語彙力が貧弱なときは、英文というだけで退却していた。そして、日本語の解説を元に、重要だと判断できるものに限り、DeepLやGoogle翻訳で読んでいた。

それが、さっと見て、「これはもっと時間をかけて読んだ方がよい」とか「これは既知だから無理に読まなくてもいい」といった判断ができるようになった。完璧じゃなく、たどたどいいけれど、少なくとも「英文をみたら退却」はしなくなった。

これ、実は日本語でもやっていることで、大量の情報の中から、自分の興味を惹くものをピックアップしていく。同じことを、(日本語ほどの精度はないけれど)英語でもできるようになった。要するに、英語のチャネルが開いたのだ。

チャネルが開いたとはいえ、精度もスピードも、まだまだだと感じる。おそらく、2万語の壁を超える頃には、さらに上達していることだと考える。

『Merriam-Webster's Vocabulary Builder 』の。今から3周目を始めよう。この語彙力を、もっと確かなものにするために。