【ネタバレあり】幻想的というかとてもファンシーだと思った小説【この闇と光】服部まゆみ (original) (raw)

この闇と光】をこれから読もうか迷っている方に私が言えることはたった一つ。

読むなら事前情報ゼロで読むのが一番面白いので、

このブログは閉じて、不必要な情報を目にしてしまう前にさっさと読みましょ。

いってらっしゃーい。

【この闇と光】を読んで感じた不快感(褒めてる)

今回なぜ【ネタバレあり】にしたかというと、

この小説について何か1つでも語ると、

全てがネタバレになってしまうような気がしたから。

そしてその情報は、これから読もうとしている人に、

不利益しかもたらさないと思ったから(読んだ人ならわかるよね?)。

私自身は「これから読む本」を先にネットで検索することなどありえないのだけれど、

私の友人にいるのよね。

「読む前にネットで調べる」派。

私にとってはありえないことがありえるらしいので、一応の前書き。

因みに私は「読み終わったあとに検索する」派。

※2022/06/05現在Kindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)の対象本なので、会員の方はKindle版がおすすめ※

不快感の総評

読了後の私の全体的な感想としては、

面白かったか面白くなかったかで言えば「面白かった」。

好きか嫌いかで言えば「好き」な物語だった。

よって、以下にマイナスイメージな単語が出てきたとしても、

それは褒め言葉として受け止めてほしい。皮肉ではなく。

作者がどういうつもりでこの物語を描いたのかは知らないけれど、

「不快感」を刺激するのがとても上手い小説だと思った。

では、私は一体何に、不快感を感じたのだろう。

レイア姫の世界

この小説は、とても心地のいい書き出しで始まる。

まるで童話を読んでいるような、お伽話を読んでいるような、そんな心地。

意地悪な魔女、優しい父、死んでしまった母、大好きなぬいぐるみと、唯一の友人である犬。

それから目の見えないレイア姫

「今日は目の醒めるような 薔薇色のドレスだよ」と父が言う。父の話し方は優しく、甘く、丁寧だ。

「明るい薔薇の花びらのようなピンクだ。襟はレースの縁取りのある白」と私の手を襟に触らせる。「前に赤いリボンが付いている」と、手をリボンに持っていく。「ボタンは白い貝殻だ。まだおまえ一人で嵌めるのは難しいだろうね。薔薇の花の形をした素敵なボタンだよ」

先の展開は、誰もがなんとなく想像がつくように思う。

私自身もなんとなく想像した。

だから多分、物語の展開に意外性は無いんだ。

それでも実際に読むと、なんとも言い難い気色悪さを感じた。

レイアは「ラプンツェル」が好きだと言い、自身をそれに例える。

自分は塔の上のお姫様で、

ダフネは魔女で、

髪を伸ばして王子様である父親を逃がすのだと。

けれど私には、ラプンツェルというより「不思議の国のアリス」に見えて仕方なかった。

もうね、世界がおかしいんだよ。

レイアだけがまともで、レイアの存在する世界は、全てが狂っている。

教育と洗脳

「教育と洗脳の恐ろしさ」は現代でも度々話題にのぼるけれど、

作中ではそれがより顕著に表現されていると感じた。

レイア姫の世界を閉ざしたもの。

それが視覚情報だ。

盲目のレイア姫

私が日頃当然のように享受している五感という感覚。

その中の一つである視覚。

それを失う穴は想像以上に大きく、

それは世界を象るのに大きすぎる役割を担っている。

レイア姫が視ている世界の外側は、

あまりにも残酷な狂気で満たされている。

その狂気を垣間見たとき、

私の心は内側から何かザラリとしたもので撫でられたような感覚を感じた。

思い出したのは、紫式部の「源氏物語」だった。

最後の結末

レイア姫はおとうさまが大好き。

お姫様は、王子様と幸せに暮らす。

私はこの小説の結末に不満があるわけではないし、

「もっといい結末があるはず」とも思わない。

けれど、とても「ファンシー」な結末だなとは思う。

「幻想」よりももっとチープな意味で引用している。

人によって解釈は異なるだろうが、

私にとってこの小説はハッピーエンドだ。

これまで様々な記事に書いてきたけれど、私は個人的にハッピーエンドが好きではない。

「もっといい結末があるはず」とは思っていないけれど、

「もっといい結末があってほしい」とは思っている。

「いい結末」とは、「私にとっていい=私が愉しめる」という意味だ。

世界はもっと残酷で、不条理で、汚い。

せっかく視力を取り戻したはずなのに、レイア姫は再び視界を閉ざそうとしている。

それが羨ましくもあり、妬ましくもあり、残念でもある。

世界は本当は美しいのに。

レイア姫はきっと、その美しさに辿り着けない。

創作ではない本当の美しさに気づけないまま、

創られた分厚いヴェールに包まれたまま人生を終えるのだ。

そんな想像が、私を更に不快にさせる。

不快感は痕が残る

鬱小説に片足突っ込んだ作品だなぁと思う。

読みやすくて面白いのに、

要所要所で不快感を刺激され、

読後感もあまり良くなく、

それでいて余韻が長引く。

角川さんが紹介文に「謎解き」って入れてるのはミスチョイスかなと。

Amazonレビューが賛否割れていて面白いのだけど、

出版社の広告ミスも多分にあるよねこれはw

※2022/06/05現在Kindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)の対象本なので、会員の方はKindle版がおすすめ※

そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。

お疲れ様でした!(2408文字)

最後に、

私がこの小説の何にモヤついたのか、

頭を整理したくて書き出したメモを置いておきますw

(ネタバレの塊です)

*おまけメモ*