第313位『スーパーマン』(リチャード・ドナー) (original) (raw)

Superman/1978/US

『三銃士』シリーズを手がけたヨーロッパの大物プロデューサー、イリヤ・サルキンドは同じくプロデューサーである父のアレクサンダーにコミックスのスーパーヒーローの映画化を提案する。父は息子の直感を信じ、映画化権を取得。『ゴッドファーザー』の原作・脚本家マリオ・プーゾに原案・脚本を依頼し、すでにオスカーを得るほどのスターだったマーロン・ブランドジーン・ハックマンの出演をブッキングした。監督には『オーメン』ですでに地位を固めていたリチャード・ドナーを招き、全てにおいて超一流が志向された。

それでも、もしスーパーマンクラーク・ケント役のクリストファー・リーブが見つからなければ、本作はこれほどの名声を得ることができただろうか、とおもう。ブランドン・ラウスも、ヘンリー・カヴィルも、素晴らしい役者だと思う。デヴィッド・コレンスウェットが演じる新しいスーパーマンも楽しみだ。しかし、上品なほほえみに前髪をたらし、力強く、りんとしたリーブの立ち姿を見ると、「あぁ、彼こそがスーパーマンだ」と思わずにいられない。いや、もっと言えば彼こそがりっぱなアメリカ人だ、と思わせる何かがある。泥棒をつかまえ、猫も助ける。混乱と不信、分断を通過した21世紀のアメリカからは永遠に失われてしまった理想像なのかもしれない。

ジョン・ウィリアムズによる偉大なメインテーマも忘れるわけにはいかない。この旋律がもたらす高揚感をいったい何と表現したらいいだろうか。もちろん、その後も数えきれないほどのスコアを手がけているが、やはりスーパーマンには人の心を解放し、励まし、そっと背中を押してくれるような不思議なやさしさと力強さがある。

マーゴット・キダーとの甘く、とろけるような空のデートシーンも、永遠に映画史に刻まれる。ロイスが、バルコニーから飛び立つスーパーマン(実際はスクリーンプロセスによる投影映像)を見送ると、ドアベルが鳴り、クラークが訪問してくる。いまだ夢心地で出かける準備を始めるロイスを遠くから見守りながら、クラークがめがねを外し、自らの正体をそっと一人で打ち明ける。このワンカットがすきだ。