マウス胚性幹細胞に由来する生殖系列キメラ個体の作出 (original) (raw)

抄録

我々は,マウス繊維芽細胞をフィーダー層として用いて胚性幹細胞株の樹立を試み129/SvJの胚盤胞から2株を樹立した(A3-1, A3-2).このES細胞は浮遊培養することにより胚様体を形成し,その後,胚体外胚葉,心筋様細胞を含む様々の組織や細胞に分化した.染色体分析の結果ES細胞は高率に正2倍体の染色体を有していた.A3-1のES細胞の1~10個を注入された11個のC57BL/6NXBDF1胚盤胞を偽妊娠2日目の受容雌に移植し,1匹の毛色キメラが得られた.このキメラ雄をアルビノ雌マウスと交配して得られた42匹の産仔のうち野生色が19匹,アルビノが23匹であった.この結果から,今回樹立されたES細胞は生殖細胞へ分化し得ること,およびそのアルビノ遺伝子座の遺伝子型はc/cであることが知られた.