【機胡録(水滸伝+α)制作メモ 104】湯隆 (original) (raw)

湯隆

※補足1:生成画像は全てDALL-E(Ver.4o)を利用している。

※補足2:メモ情報は百度百科及び中国の関連文献等を整理したものである。

※補足3:主要な固有名詞は日本訓読みと中国拼音を各箇所に当てている。

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水滸伝水滸伝/shuǐ hǔ zhuàn)』の概要とあらすじ:中国の明王朝の時代に編纂された、宋王朝の時代を題材とした歴史エンターテイメント物語。政治腐敗によって疲弊した社会の中で、様々な才能・良識・美徳を有する英傑たちが数奇な運命に導かれながら続々と梁山泊(りょうざんぱく/liáng shān bó:山東省西部)に結集。この集団が各地の勢力と対峙しながら、やがて宋江(そうこう/sòng jiāng)を指導者とした108名の頭目を主軸とする数万人規模の勢力へと成長。宋王朝との衝突後に招安(しょうあん/zhāo ān:罪の帳消しと王朝軍への帰属)を受けた後、国内の反乱分子や国外の異民族の制圧に繰り出す。『水滸伝』は一種の悲劇性を帯びた物語として幕を閉じる。物語が爆発的な人気を博した事から、別の作者による様々な続編も製作された。例えば、『水滸後伝(すいここうでん/shuǐ hǔ hòu zhuàn)』は梁山泊軍の生存者に焦点を当てた快刀乱麻の活劇を、『蕩寇志(とうこうし/dàng kòu zhì)』は朝廷側に焦点を当てた梁山泊軍壊滅の悲劇を描いた。

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湯隆(とうりゅう/tāng lóng)

<三元論に基づく個性判定>

6番 **とても強い生存欲求**、**強い知的欲求**、**強い存在欲求** - **「革新的起業家」** - 新しいアイデアを取り入れ、実際に行動に移して社会に変革をもたらす人物。

<概要>

湯隆(とうりゅう/tāng lóng)、あだ名は「金銭豹」。父親は延安府の知寨官、祖父は軍器製作の腕利きの鍛冶職人。彼は祖父の道を継いで職人の道に進んで生計を立てていた。職人として天性の才能を有していたが、賭博熱を上手く制御する事ができずに徐々に身を滅ぼし始め、父親が逝去すると借金で首が回らなくなり江湖に逃走。武岡鎮に流れ着くと、そこで心を入れ替えて日々鍛冶をして生活。この地を通りかかった梁山泊勢力の李逵(りき/lǐ kuí)と知り合いになり、彼はその剛腕ぶりにすっかり感嘆。この縁から梁山泊勢力の一員になる事を決意し、鍛冶職人として武器製造を開始。その後の呼延灼(こえんじゃく/hū yán zhuó)との戦いでは、その攻略の要となる"武器オタク"の徐寧(じょねい/Xú Níng)を推薦。百八人の英傑たちが集結した大聚義(だいしゅうぎ/dà jù yì)の際には、序列第88位に定まり、「一切武器鉄製甲冑製作監督管理」に任命された。続けて軍器や鉄甲の監造を担当した後、招安によって南征北伐の戦いに臨んだ際には歩軍としても活躍。そして、最終戦となる方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦において、清渓県で戦死した。戦後、朝廷は彼を「義節郎」に追封した。

<大砲は凌振(りょうしん/líng zhèn)であった>

2つ前の記事、郭盛(かくせい/guō shèng)がもともと水銀の商売にしていた事に触れ、「その水銀を湯隆の製造する大砲の起爆剤に活かしても良さそう」という内容を記したように記憶している。これは誤りで、大砲を作った人物は湯隆(とうりゅう/tāng lóng)ではなく凌振(りょうしん/líng zhèn)であった。ここに修正をする。この凌振(りょうしん/líng zhèn)については後の記事で取り扱う。(鍛冶のイメージが連動して混合してしまったようだ。)

また彼の場合、槍術や棒術に通じていたので、職人としてだけではなく実地でも多くの戦功を立てている。高俅(こうきゅう/gāo qiú)が率いる朝廷軍との戦いにおいては水軍に加わり、李雲(りうん/lǐ yún)、杜興(とこう/dù xīng)と共に混戦の中で長史の王瑾や船匠の葉春を斬殺。招安後の南征北伐でも遼国(りょうこく/liáo guó)の征伐戦における魯智深と連携した太乙混天象陣の太陽陣の突破、田虎(でんこ/tián hǔ)の征伐戦における五龍山の偽総管・雷震の斬殺、王慶(おうけい/wáng qìng)の征伐戦における張清(ちょうせい/zhāng qīng)の宛州城攻略の後方支援、方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦における昱嶺関の守将の龐万春の生け捕りなど、多方面での活躍が見受けられる。

これらの武勇の他に、何と言っても彼の功績は"武器オタク"の徐寧(じょねい/Xú Níng)を引き込んだ事であろう。徐寧(じょねい/Xú Níng)がいなければ呼延灼(こえんじゃく/hū yán zhuó)が率いる朝廷軍に勝つ事はできず、その後の武器製造の幅や質も広がらなかった。徐寧(じょねい/Xú Níng)という武器製造の「知」、そして湯隆(とうりゅう/tāng lóng)という武器製造の「技」が見事に合致した事で、梁山泊勢力は飛躍的に武装の水準を高くしたと考えられる。彼らは梁山泊に「防御には重甲と強盾があり、攻撃には鋭利な矛がある」という頑強な状態をもたらしたのだ。

<安道全(あんどうぜん/ān dào quán)がいれば助かったかもしれない>

湯隆(とうりゅう/tāng lóng)は方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦においてほとんど最後まで生き抜いた英傑のひとりであるが、本拠地の睦州清渓県の戦いで遂に重傷を負ってしまった。もし"神医"の安道全(あんどうぜん/ān dào quán)が共同体に在籍したままであったら、彼を治療できたかもしれない。残念ながらこの方臘(ほうろう/fāng là)との戦いの直前、この天才医師は朝廷に呼ばれて共同体を離脱してしまった。

私は王定六(おうていろく/wáng dìng liù)をこの安道全(あんどうぜん/ān dào quán)の弟子と位置付ける改修を行ったが、"彼女"の専門は鍼灸や漢方といった慢性疾患に対する処置だ。急性的な症状については安道全(あんどうぜん/ān dào quán)の方が専門であり、また知見や対応力の幅も広かった。自分の医師としての力が及ばずに命が消えていく様子を目の当たりにして、彼女の想いはとても悲壮なものであったろう。

湯隆(とうりゅう/tāng lóng)は治療の甲斐なく絶命した。彼は方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦における最後の戦死者となった。

<原型とあだ名、そして評価>

湯隆という人物は宋元の史料には見当たらず、『大宋宣和遺事』や『宋江三十六人贊』、および元雑劇の水滸芝居などの初期の水滸物語や文学にも登場していない。また、これらの作品には梁山泊で鍛冶を専門にしている別の英傑も一切存在しない。よって、これは施耐庵(したいあん/shī nài ān)の小説『水滸伝』の創作キャラクターであると考えられる。

あだ名の「金銭豹」については、原作の次の容姿の描写から考察する事ができるという。原作には「李逵が見たその大男(湯隆)は、身長が七尺以上、顔は麻疹で覆われ、鼻の上には一本の大きな痕があった」とある。彼の顔には疫病治療の痕によって何かの紋様が入っていたようで、それが「豹」に似ていた可能性があるという。

一般的な見解としては、「北方では貉を貉子と呼び、豹を豹子と呼ぶ。豹の種類は一つではなく、その黄毛に黒い模様があり、中央に五つの輪があり、左右に四つの輪があるものを金銭豹と呼び、艾葉模様のものを艾葉豹と呼ぶ」という。また『本草』には「豹の文様が銭のようなものを金銭豹と呼ぶ」とある。豹の文様が銭のようであるため、その背に円斑があり、毛色が黄褐色であることから「金銭」と呼ばれていた。

私は疫病根治の跡が残る人物として、丁得孫(ていとくそん/dīng dé sūn)と龔旺(きょうおう/gōng wàng)にその人物造形を充てがった。この重複を避ける為に、湯隆(とうりゅう/tāng lóng)には同じ設定を適用するべきではないと考えている。多少強引ではあるが、彼は鋼鉄を自由自在に扱う事が出来る鍛冶職人なので、その鋼鉄のイメージから金剛=金銭が連想されたと考えれば良いかもしれない。また彼は狭く熱い鍛冶の仕事場で常に無駄なく動き続けているので、その屈強かつしなやかな様子から「豹」に喩えられたと考える事が出来そうだ。

ただし、彼の英傑としての評価については賛否両論のようだ。特に中華世界では「仲間を売る=面子を潰す」という行為が嫌われる傾向にあり、彼もまた徐寧(じょねい/Xú Níng)という知人を梁山泊に売り飛ばした人物であるとみなされる事がある。こう考えた読者の中には、彼が朝廷の奸臣よりも劣ると感じるケースもあるようだ。私は彼が職人気質ゆえに、単純に「このような問題(呼延灼軍の攻略)には、このような解決策(徐寧の武器)がありまっせ」と宋江たちに対して合理的に提案をしたに過ぎないと感じる。

<三元論に基づく特殊技能>

#### 日鍛月錬(具術)

**説明**: 湯隆は、類まれなる練度と精度を併せ持つ鍛冶技術によって、耐久性と攻撃性が研ぎ澄まされた武具を製造できる能力「日鍛月錬」を持っている。この具術は、彼の卓越した鍛冶技術と細部へのこだわりに基づき、極めて高品質な武具を作り上げる力を発揮する。

- **効果**:

- **道具性(とても濃い)**: この具術は、鍛冶の道具と素材に強く依存する。

- **思考性(中程度)**: 効果的に武具を製造するためには、高い技術と正確さが必要。

- **関係性(中程度)**: 湯隆の具術は、戦闘において信頼性の高い武具を提供し、仲間たちの戦闘力を高める。

#### 具体的な使用例:

  1. **武具の製造**: 湯隆は、高度な鍛冶技術を用いて、耐久性と攻撃性に優れた武具を製造し、戦場での勝利に貢献する。
  2. **鍛冶技術の伝承**: 湯隆の卓越した鍛冶技術が、次世代の鍛冶職人にも影響を与え、技術の継承と発展に寄与する。

※画像:DALL-E

作品紹介

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著作紹介("佑中字"名義作品)

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