【🌹10分で聴く源氏物語 22帖 玉鬘4】帰京したものの心細いの姫君一行‥豊後介は姫君に長谷詣を進める。歩いての参詣🚶‍♀️その長谷寺で今 源氏に仕えている右近に出会う✨まさに神仏のご加護 by😽 (original) (raw)

源氏物語711 第22帖 玉鬘11 】

「神仏のお力にすがれば

きっと望みの所へ導いてくださるでしょうから、

お詣《まい》りをなさるがいいと思います。

ここから近い八幡《やわた》の宮は九州の松浦、

箱崎《はこざき》と同じ神様なのですから、

あちらをお立ちになる時、お立てになった願もありますから、

神の庇護で無事に帰京しましたというお礼参りをなさいませ」

と豊後介は言って、姫君に八幡詣《やわたまい》りをさせた。

八幡のことにくわしい人に聞いておいて、

御師《おし》という者の中に、

昔親の少弐が知っていた僧の残っているのを呼び寄せて、

案内をさせたのである。

「このつぎには、

仏様の中で長谷《はせ》の観音様は霊験のいちじるしいものがあると

支那《しな》にまで聞こえているそうですから、

お参りになれば、

遠国にいて長く苦労をなすった姫君を

きっとお憐《あわれ》みになってよいことがあるでしょう」

また豊後介は姫君に長谷詣《はせもう》でを勧めて実行させた。

船や車を用いずに徒歩で行くことにさせたのである。

かつて経験しない長い路《みち》を歩くことは姫君に苦しかったが、

人が勧めるとおりにして、

つらさを忍んで夢中で歩いて行った。

自分は前生に

どんな重い罪障があってこの苦しみに堪えねばならないのであろう、

母君はもう死んでおいでになるにしても、

自分を愛してくださるならその国へ自分をつれて行ってほしい。

しかしまだ生きておいでになるのなら

お顔の見られるようにしていただきたいと姫君は観音を念じていた。

🪷🎼#黄昏と水平線 written by #天野七祈

源氏物語712 第22帖 玉鬘12〈たまかずら〉】

姫君は母の顔を覚えていなかった。

ただ漠然《ばくぜん》と親というものの面影を

今日《きょう》まで心に作って来ているだけであったが、

こうした苦難に身を置いては、

いっそう親というものの恋しさが切実に感ぜられるのであった。

ようやく椿市《つばいち》という所へ、

京を出て四日めの昼前に、生きている気もしないで着いた。

姫君は歩行らしい歩行もできずに、

しかもいろいろな方法で足を運ばせて来たが、

もう足の裏が腫《は》れて動かせない状態になって

椿市で休息をしたのである。

頼みにされている豊後介と、弓矢を持った郎党が二人、

そのほかは僕《しもべ》と子供侍が三、四人、

姫君の付き添いの女房は全部で三人、

これは髪の上から上着を着た壺装束《つぼしょうぞく》をしていた。

それから下女が二人、これが一行で、

派手《はで》な長谷詣りの一行ではなかった。

寺へ燈明料を納めたりすることを

ここで頼んだりしているうちに日暮れ時になった。

この家の主人《あるじ》である僧が向こうで言っている。

「私には今夜泊めようと思っているお客があったのだのに、

だれを勝手に泊めてしまったのだ、物知らずの女どもめ、

相談なしに何をしたのだ」

怒《おこ》っているのである。

九州の一行は残念な気持ちでこれを聞いていたが、

僧の言ったとおりに参詣者の一団が町へはいって来た。

🪷🎼#花散ル風 written by #蒲鉾さちこ

源氏物語713 第22帖 玉鬘13〈たまかずら〉】

僧の言ったとおりに参詣者の一団が町へはいって来た。

これも徒歩で来たものらしい。

主人らしいのは二人の女で召使の男女の数は多かった。

馬も四、五匹引かせている。

目だたぬようにしているが、

きれいな顔をした侍などもついていた。

主人の僧は先客があっても

その上にどうかしてこの連中を泊めようとして、

道に出て頭を掻《か》きながら、

ひょこひょこと追従《ついしょう》をしていた。

かわいそうな気はしたが、

また宿を変えるのも見苦しいことであるし、

面倒《めんどう》でもあったから、

ある人々は奥のほうへはいり、

残りの人々はまた見えない部屋のほうへやったりなどして、

姫君と女房たちとだけはもとの部屋の片すみのほうへ寄って、

幕のようなもので座敷の仕切りをして済ませていた。

あとの客も無作法な人たちではなかった。

遠慮深く静かで、双方ともつつましい相い客になっていた。

このあとから来た女というのは、

姫君を片時も忘れずに恋しがっている右近であった。

年月がたつにしたがって、

いつまでも続けている女房勤めも気がさすように思われて、

煩悶《はんもん》のある心の慰めに、

この寺へたびたび詣《まい》っているのである。

長い間の経験で

徒歩の旅を大儀とも何とも思っているのではなかったが、

さすがに足はくたびれて横になっていた。

🌸🎼#ある春の日に…(One spring day...) written by #蒲鉾さちこ

源氏物語714 第22帖 玉鬘14】

こちらの豊後介は幕の所へ来て、食事なのであろう、

自身で折敷《おしき》を持って言っていた。

「これを姫君に差し上げてください。

膳《ぜん》や食器なども寄せ集めのもので、まったく失礼なのです」

右近はこれを聞いていて、

隣にいる人は自分らの階級の人ではないらしいと思った。

幕の所へ寄ってのぞいて見たが、

その男の顔に見覚えのある気がした。

だれであるかはまだわからない。

豊後介のごく若い時を知っている右近は、

肥えて、そうして色も黒くなっている人を今見て、

直ぐには思い出せないのである。

「三条、お召しですよ」

と呼ばれて出て来る女を見ると、

それも昔見た人であった。

昔の夕顔夫人に、下の女房ではあったが、長く使われていて、

あの五条の隠れ家にまでも来ていた女であることがわかった右近は、

夢のような気がした。

主人である人の顔を見たく思っても、

それはのぞいて見られるようなふうにはしていなかった。

思案の末に右近は三条に聞いてみよう、

兵藤太《ひょうとうだ》と昔言われた人もこの男であろう、

姫君がここにおいでになるのであろうかと思うと、

気が急いで、そしてまた不安でならないのであった。

幕の所から三条を呼ばせたが、

熱心に食事をしている女は

すぐに出て来ないのを右近は憎くさえ思ったが、

それは勝手すぎた話である。やっと出て来た。

🌷🎼#春の兆し(Signs of spring)by#蒲鉾さちこ

源氏物語715 第22帖 玉鬘15〈たまかずら〉】

「どうもわかりません。

九州に二十年も行っておりました卑しい私どもを

知っておいでになるとおっしゃる京のお方様、

お人違いではありませんか」

と言う。

田舎風に真赤《まっか》な掻練《かいねり》を下に着て、

これも身体《からだ》は太くなっていた。

それを見ても自身の年が思われて、右近は恥ずかしかった。

「もっと近くへ寄って私を見てごらん。

私の顔に見覚えがありますか」

と言って、右近は顔をそのほうへ向けた。

三条は手を打って言った。

「まああなたでいらっしゃいましたね。

うれしいって、うれしいって、こんなこと。

まああなたはどちらからお参りになりました。

奥様はいらっしゃいますか」

三条は大声をあげて泣き出した。

昔は若い三条であったことを思い出すと、

このなりふりにかまわぬ女になっていることが右近の心を物哀れにした。

おとどさんはいらっしゃいますか。

姫君はどうおなりになりました。あてきと言った人は」

と、右近はたたみかけて聞いた。

夫人のことは失望をさせるのがつらくてまだ口に出せないのである。

「皆、いらっしゃいます。

姫君も大人《おとな》になっておいでになります。

何よりおとどさんにこの話を」

と、言って三条は向こうへ行った。

九州から来た人たちの驚いたことは言うまでもない。

「夢のような気がします。

どれほど恨んだかしれない方にお目にかかることになりました」

おとど はこう言って幕の所へ来た。

もうあちらからも、

こちらからも隔てにしてあった屏風《びょうぶ》などは

取り払ってしまった。

右近もおとど も最初はものが言えずに泣き合った。

🌷🎼#繰り返す、穏やかな日々の中で written by #蒲鉾さちこ

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