【10分で聴く源氏物語 第13帖 明石8 】源氏は明石の君を訪ねる。月夜の景色が美しい。紫の上が恋しい。この馬に乗って京まで行ってしまいたい源氏‥紫の上を思いつつ それはそれ これはこれby🐈⬛ (original) (raw)
🪻【源氏物語382 第13帖 明石44】秋になり源氏も寂しさを感じる。明石入道に娘をこちらに寄越すようにいうが 娘はそうしたことができぬ自尊心があった。
〜明石ではまた 秋の浦風の烈しく吹く季節になって、
源氏もしみじみ独棲みの寂しさを感じるようであった。
入道へ娘のことをおりおり言い出す源氏であった。
「目だたぬようにしてこちらの邸《やしき》へ
よこさせてはどうですか」
こんなふうに言っていて、
自分から娘の住居《すまい》へ通って行くことなどは
あるまじいことのように思っていた。
女にはまたそうしたことのできない自尊心があった。
田舎の並み並みの家の娘は、
仮に来て住んでいる京の人が誘惑すれば、
そのまま軽率に情人にもなってしまうのであるが、
自身の人格が尊重されてかかったことではないのであるから、
そのあとで一生物思いをする女になるようなことはいやである。
🪻【源氏物語 383 第13帖 明石45】不釣り合いの結婚により 親達も辛い思いをするだろう‥手紙を交わすことを許されるということが幸福である。思慮深い明石の君。
〜不つりあいの結婚をありがたいことのように思って、
成り立たせようと心配している親たちも、
自分が娘でいる間はいろいろな空想も作れていいわけなのであるが、
そうなった時から親たちは別なつらい苦しみをするに違いない。
源氏が明石に滞留している間だけ、
自分は手紙を書きかわす女として許されるということが
ほんとうの幸福である。
🪻【源氏物語384 第13帖 明石46】明石の君は、手紙のやり取りをし 有名な琴の音も聞く事も叶い これ以上は望みたくない。源氏との結婚の夢など見ていないのである。
〜長い間 噂《うわさ》だけを聞いていて、
いつの日にそうした方を
隙見《すきみ》することができるだろうと、
はるかなことに思っていた方が
思いがけなくこの土地へおいでになって、
隙見ではあったがお顔を見ることができたし、
有名な琴の音を聞くこともかない、
日常の御様子も詳しく聞くことができている、
その上自分へお心をお語りになるような手紙も来る。
もうこれ以上を自分は望みたくない。
こんな田舎に生まれた娘にこれだけの幸いのあったのは
確かに果報のあった自分と思わなければならないと
思っているのであって、
源氏の情人になる夢などは見ていないのである。
🪻【源氏物語385 第13帖 明石47】親達は長い間祈っていたことが現実になろうとする今、源氏の心も娘の運命も考えに入れずにいたと 二の足を踏み 煩悶する。
〜親たちは長い間祈ったことの
事実になろうとする時になったことを知りながら、
結婚をさせて源氏の愛の得られなかった時はどうだろうと、
悲惨な結果も想像されて、
どんなりっぱな方であっても、
その時は恨めしいことであろうし、
悲しいことでもあろう、
目に見ることもない仏とか神とかいうものにばかり信頼していたが、
それは源氏の心持ちも娘の運命も
考えに入れずにしていたことであったなどと、
今になって二の足が踏まれ、
それについてする煩悶《はんもん》もはなはだしかった。
🪻【源氏物語386 第13帖 明石48】明石入道は妻にも弟子にも告げずに結婚の支度をした。13日の月の夜、源氏の館に「あたら夜の」と書いた迎えの手紙を源氏に送った。
〜源氏は、
「この秋の季節のうちにお嬢さんの音楽を
聞かせてほしいものです。
前から期待していたのですから」
などとよく入道に言っていた。
入道はそっと婚姻の吉日を暦で調べさせて、
まだ心の決まらないように言っている妻を無視して、
弟子にも言わずに自身でいろいろと
仕度《したく》をしていた。
そうして娘のいる家の設備を美しく整えた。
十三日の月がはなやかに上ったころに、
ただ「あたら夜の」
(月と花とを同じくば心知られん人に見せばや)
とだけ書いた迎えの手紙を浜の館《やかた》の
源氏の所へ持たせてやった。
✴︎明けるのがもったいないようなこの春の夜の月と花とを、
同じ見せるのなら 情趣を解する人に見せたいものだ
🪻【源氏物語387 第13帖 明石49】源氏は明石の君のもとを訪ねに行く。月夜の景色が美しい。紫の上が恋しい。この馬に乗って京まで行ってしまいたい源氏であった。
〜風流がりな男であると思いながら源氏は
直衣《のうし》をきれいに着かえて、
夜がふけてから出かけた。
よい車も用意されてあったが、
目だたせぬために馬で行くのである。
惟光などばかりの一人二人の供をつれただけである。
山手の家はやや遠く離れていた。
途中の入り江の月夜の景色が美しい。
紫の女王《にょおう》が源氏の心に恋しかった。
この馬に乗ったままで京へ行ってしまいたい気がした。
秋の夜の 月毛の駒《こま》よ 我が恋ふる
雲井に駈《か》けれ 時の間も見ん
と独言《ひとりごと》が出た。
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