馬の胸腰椎における脊椎症のX線およびシンチグラフィによる評価:回顧的調査(Meehanら2009) (original) (raw)

胸腰椎、腰仙椎および仙腸関節の病変はプアパフォーマンスの原因になることが明らかにされてきました。棘突起衝突や椎体間関節炎についてよくわかってきましたが、脊椎症についてはまだ情報が限られています。脊椎症は椎体間の関節癒合または変形性疾患で、椎間板を跨ぐような大きな骨棘が形成されます。

骨棘ができる原因はわかっていません。椎体間は繊維性の椎間板とそれに強固に付着する線維組織で結合していて、さらに背側と腹側の長軸靭帯で補強されています。骨棘の病態形成には、これらの付着部への機械的ストレスが関わっています。完全もしくは部分的な関節癒合が起きると、その隣の椎体間にも病変ができます。形成された骨棘が大きくなり、背側にも伸びることで神経が圧迫される可能性があります。

馬の脊椎症は一般的には真ん中から後ろの胸椎(T10-14 )もしくは腰椎に見られます。1980年の調査では、443頭の背部痛を示した馬のうち8頭で脊椎症が見られ、このうち2頭は他の異常所見と併発していました。より最近のケースレポートでは椎間板脊椎炎に関連した報告もあります。

脊椎症は特定の臨床症状はなく、病変と症状の重症度には相関がないことが記録されています。しかし、パフォーマンスレベルが低く、背部痛の所見や履歴もない馬において、偶発的に病変が見られることがあります。あるケースレポートでは頭側胸椎に脊椎症があり、運動後の背部痛、プアパフォーマンスおよび起源不明の運動失調が見られ、外傷性に脊椎症を発症したと考察されていました。

馬における脊椎症は症状が定義されておらず、症状やパフォーマンスへの影響についての情報も限られています。以下の調査では脊椎症のグレード分類、背部痛を示す馬における脊椎症の所見率、脊椎症と併発する異常所見を明らかにすること、およびX線とシンチグラフィの所見を比較することを目的に行われました。

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

調査を行った理由

馬の胸腰椎の脊椎症に関連した臨床、X線およびシンチグラフィの所見は詳しく記録されていない。

目的

脊椎症の病変を客観的にX線やシンチグラフィでグレード分類する体系を作ること、背部痛のある馬における脊椎症の所見率を算出すること、X線とシンチグラフィの画像を比較すること。

方法

背部痛のある670頭の症例馬のX線画像をグレード分類した。脊椎症の病変があった馬のシンチグラフィ画像を主観的および客観的に解析した。シンチグラフィによる脊椎症検出の特異度および感度をX線検査のものと比較し、カイ2乗検定により病変の部位と重症度の相関を調べた。

結果

670頭中23頭(3.4%)で脊椎症のX線病変が見られた。14頭は1つより多くの病変があり、病変の44%はT11-13 の椎体に見られた。X線で所見が見られた部位のうち33%のみがシンチグラフィで取り込み増加が見られた。

結論

背部痛のある馬において脊椎症の所見率は低い。病変は単独もしくは他の骨異常所見と同時に見られる。脊椎症の臨床的意義についてはさらなる調査が必要である。

潜在的関連性

馬において脊椎症は稀であるが、背部痛に関与している可能性がある。