海岸寺院 (original) (raw)

Shore Temple

海岸寺院はマハ―バリブラムの中心部から500m東側に離れたところ、ベンガル湾に面した海岸のすぐそばにあります。寺院周辺は公園として整備され、丘陵地区や5つのラタとの共通チケットで入場できます。私が海岸寺院に訪れた日も、たくさんのインド人観光客でにぎわっていて、人を入れずに写真を撮るのは難しいくらいでした。

海岸寺院はパッラヴァ朝のラージャシンハ王の時代、8世紀初頭に創建されました。マハ―バリブラムの遺跡の中で、「アルジュナの苦行」のある丘陵地区に点在するのは最も古い時代に造られた石窟寺院です。そして5つのラタはその後の時代に造られた石彫寺院なのに対して、海岸寺院は切り石を積み上げた石造寺院となっています。つまり、マハ―バリブラムの遺跡の中では一番新しい時代に建造されたもので、その後のインドのヒンドゥー教寺院の源流となる遺跡だと思います。

祠堂の形状は5つのラタのダルマラージャ・ラタにやや似ていますが、それをさらに上下方向に引き伸ばし、階層間に中間層を付け加えたような形状をしています。大祠堂と小祠堂が連なる様子は、遠くから見るととても優美な印象を受けます。このシルエットはインドの他のどのヒンドゥー教寺院にも似ていなくて、この寺院独自なものになっています。

海岸寺院平面図

平面図を見るとわかるように、大祠堂と小祠堂は微妙にオフセットされて配置されています。このアシンメトリーな平面構成が、見る方向によって2つの祠堂の連なりが呼応し合い、さまざまな表情をみせる一因になっています。

寺院自体は1000年以上にわたって潮風にさらされたため、各部の浸食がはげしくなっています。現在では寺院の東側に防風林が設けられて、潮風が直接当たらないようになっていますが、この優美な寺院を今後もずっと後世に伝えていって欲しいものです。

祠堂を囲む周壁にはナンディー像が多数配置されていて、まるで寺院を守っているかのようです。よく見ると周壁の基礎部分は石の感じが新しく、どうやら後年になって修復されたもののようです。