「やさしい日本語」と日本人の英語力 (original) (raw)

癸卯年十二月廿五日。立春。気温摂氏0.5/10.2度。王祇祭、黒川能の記録を整理。改めて思ひ返しても当屋に寄宿させていたゞき親族扱ひであそこまでもてなして頂けたことはまさに稀有。馬場先生と仕来りに通じた村上湛君に感謝。湛君曰く「本当に神の配剤としか言いようのない奇蹟」。

▼最近「やさしい日本語」といふのを時どき耳にする。

在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインほか | 文化庁

日本に住む外国人が増え、その国籍も多様化する中で、日本に住む外国人に情報を伝えたいときに多言語で翻訳・通訳するほか「やさしい日本語」を活用することが有効です。やさしい日本語を使うことで日本に住む外国人にもしっかりと国や地方公共団体が発信する情報が届くようになることを目指しています。(文化庁

この姿勢はそれはそれで大切だと思ふ。「危険です、避難してください」より「あぶないです、にげてください」の方が良い(漢字圏の人には漢語で良いが)。役所の、あの日本人でも難解なお役所日本語の書類はもつとやさしい、わかりやすい日本語で書かれることは私たち日本人にも助かるところ。だが気になるのは「外国人だからといって英語ができるとは限らない」「英語ができない外国人も実は多い」。そこで「実は日本に住む外国人のうち6割以上に日本語なら伝わります」といふ。

英語は必要ありません!「やさしい日本語」による外国人対応のコツを紹介! | NEWSCAST

さうすると「英語のできない外国人は多い」の認識が一人歩きして「英語はけして全てに通じない」といふ認識になつてしまはないか。実際に英語を生活言語として使ふ人口は17.5億人で世界の人口(70億人)の25%でしある。しかもその内、英語を母語とする人は4億人でしかない。この25%といふ数字が「外国人だからといって英語ができるとは限らない」「だから日本人が必ず英語で話さないといけないわけではない」そこで「もっと、やさしい日本語を普及することが実用的」の根拠になる。しかし誤解してはいけないが実際に平易な日常生活に必要なことを英語で話すことのできる人は25%よりももつと多い。だから英語がやはり便利なわけで、問題は日本人が英語を苦手とすることなのだ。

「外国人だからといって英語ができるとは限らない」なんてことを平然といふ余裕などない。英語を母語としない世界113カ国を対象にした調査で日本人の英語力は87位。アジア23カ国で15位。14位が中国で16位がアフガニスタン。「やさしい日本語」を「英語を話さなくてもよい」言ひ訳にしてはいけない。