40代からの博士課程留学 (original) (raw)

最近仕事が忙しくなってしまい、なかなかブログを書く時間が取れない。前回は9月に8月のことをアップした。10月になってしまったので9月のことを少しだけ。

9月には3連休が2回あったので、その間にリジェクトされた論文の書き直しと和文の論文(というかとりあえず理論的な整理)に取り組みたいと思っていた。ところが3連休は見事に予定がびっしりになり、研究的な事はほとんど何もできなかった。

3連休1回目

土曜日は次男の小学校の学校公開日。前日の金曜日に行けなかったので、這ってでも行かなければならない。今どきの小学校(普通の日本の公立)は昔と違ってディスカッションして自分の意見を表明する機会が多いようだ。次男はオーストラリア仕込みのせいなのか、クラスの誰よりもよく発言するし、次男の意見が他の子供たちの考えに影響を与えている様子を見られて興味深かった。オーストラリアの小学校では年長クラスからディベートがあったけど(題材は寿司とピザ、どちらが良いか、などかわいいもの)、日本の学校ディベートよりもディスカッションという感じ。そしてこの日の午後は翌日に着る洋服の買い物に。夜は家族で久しぶりの焼肉(食べ放題)。

日曜日は日帰りで大阪に。数日前に突然、20年前に勤めていた会社の先輩から連絡があり、大阪で還暦パーティをするから参加できないか聞かれた。ちょうど20年前、アデレードでの留学から帰ってきて、初めて働いた会社が大阪だった。当時給料があり得ないほど安く、給料から家賃や生活費を払ったら赤字だったので、1か月で会社を辞めようと思ったところ、色々な人から助けられ、光熱費込みで月1万円で居候させてもらったり、留学から戻ったばかりで服がなかったので、この先輩からはお古の洋服を沢山もらって1年は何とか続けた。大阪は私にとって思い入れが深い場所。朝早く家を出て、夜遅くに帰ってくる。移動時間が1日で7~8時間となり流石に疲れたが行ってよかった。

日帰りで大阪に!

新幹線の車窓から東寺がよく見えた

祝日の月曜日は半分仕事で、渋谷にある清掃工場の見学に。前日夫に子守をしてもらったので、この日は私が子供当番。次男を連れ出した。大阪の会社を辞めて次に仕事したのが渋谷。なんだか自分の歴史をたどっているよう。渋谷も当時と比べると再開発が進み、昔は庭のようだったのに、もうよくわからなくなってしまった。人も多すぎる。東急に支配された街で次男と串揚げランチ。

清掃工場でゴミ収集体験

3連休2回目

誰に言われたわけでもないのに、シカゴの学会で受けた刺激をアウトプットしたくて、8月下旬から週末の細切れ時間を使って、日本語で最新の研究論文の動向をまとめ始めた。あわよくば日本の学会誌に投稿したいなあと思いながら。土曜日にやっと時間ができたので、午前中に集中して取り組んでみた。

全体がなんとなく完成したので読み直してみたら、とても論文と言えるクオリティではなかった。自分なりに一生懸命やったのにガッカリしてしまった。やっぱりサラリーマンしながら週末の細切れ時間に論文書くなんて無理なのかなあ…いくら日本のジャーナル掲載の敷居が低いとしてもこれじゃあ無理だろうと思い、でもどこかにこういったものを発表できる場所はないだろうかと考えたりしていた。

日曜日、長男のメルボルン時代の友達が東京に来た。メルボルンはスクホリ中。4月に来た友達とはまた別の友達だけど、彼もベストフレンドのうちの一人。家に泊まることを強く勧めたけど、日本に滞在中予定がぎっしりのようで1日みっちり遊ぶという話になった。都心の待ち合わせ場所まで電車で行き、電車でまたうちの近くまで戻る。商業施設の本屋で文房具を物色したり、日本食屋でランチを食べたりカフェに行ったりした。日本の長男の友達とはこんな風に時間を過ごすことはないから、メルボルンにいたときの人間関係の濃さに改めて思いをはせる。オーストラリアでよく食べていた懐かしいお菓子などお土産もたくさんもらった。

月曜日の祝日。朝から美容院に行った。なんだかずっと忙しいな。美容院の近くにFlat whiteを出す店を発見。レベルが高くて、メルボルンの有名カフェと同じ、もしくはそれ以上だと思った。この味を日本で楽しめるなんて!また行こう。午後は次男とまた渋谷に。若いころにたまに行っていたJazz clubのBody & Soulが午後のセッションをやるということで、めちゃくちゃ久しぶりに行った。以前は青山にあったけど、数年前に渋谷に移転していた。

メルボルンのカフェを超えてきたFlat white in 国分寺

20年近く前に渋谷で働いていたころ、Body & Soulで初めて聴いて好きになったGrace Mahyaというシンガー。私が好きなSadeの曲はやらなかったけど、その代わりにRadioheadのHigh and Dryをやってくれて大満足(同世代だから好きな音楽が似ているのかも?)。この日ベースを担当していたKenKenという人がめちゃくちゃうまくて、よくわからないけど人間的な魅力もあって、ベースだけではなくドラムもビックリするくらいカッコよかった。家に帰って調べたら、ロック界?では色々なバンドに参加している有名な人みたい。

2ステージ聴いていたかったけど、次男が宿題が終わっていないと言い出し、1stステージで退散。名残惜しかったけど、まあ私も次の日から仕事だから結果的に早く帰って良かった。この日は朝美容院に行き、最高のFlat whiteを楽しみ、午後は渋谷まで遠出してJazz Clubでワインを飲みながら音楽に浸るというなかなか贅沢な1日だった。こういう時間を過ごすために、生活以外のところに使えるお金を持っておきたいなあ(しばらく会社員やめられないかなあ)という気もする。

渋谷に移転した老舗ジャズクラブ Body & Soul

先週末は土曜日に仕事のイベントがあり、国内のとある領域で第一人者と呼ばれる有名なお医者さんや研究者の先生たちと交流する機会があった。グループの中には超ベテランの先生たち(東大の名誉教授とか研究所の所長さんとか)もいたが、同世代~少し上の現役バリバリのお医者さんや研究者の人たちもいて、その人たちと食事を一緒に取りながら、わいわいとお話できたのがとても楽しかった。

若い時に研究費の獲得にめちゃくちゃ苦労した話なども聞いて、なんでこんなに情熱的で優秀な先生たちが、プリンタ1台買うのに奔走しなきゃいけないんだ、と日本の現状が情けなくもなった。研究に集中させてあげて欲しい。日本で研究するためには、科研費というものを使うらしいが、これがバカげた仕組みで、例えば研究室に必要なプリンタを買おうとすると、そのプリンタはその科研費のプロジェクトのための印刷にしか使えないとか。机がないから机を買おうとすると、そのプロジェクトにしか使えない机とか。おかしすぎる。そうすると科研費ではプリンタや机が買えないから、もう少しフレキシブルに使える別の資金を獲得する必要がある(例えば企業の助成金)。聞いていると日本の科研費は、国内の優れた研究者に優れた研究をしてもらうためではなく、研究のアウトプット(だけ)を求めるという浅ましい考え方、かつ研究者にズルさせないようにという性悪説のもとにあるのでは?とまで感じた。人を育てるという点については、企業の方がよっぽどしっかりしている。

分野は全く違うけど、アカデミアの世界を垣間見ることもできて、自分の将来を考える上で参考になった。でも研究者の先生たちって、色々な苦労はあるものの基本的に自分が好きなことしているから年齢よりずいぶん若く見えるし、何より楽しそうだし、話も面白い。ハイレベルで最先端な知識以上に、ポジティブなエネルギーをもらえてありがたかった。

Chicagoへの一人旅の後編。

fourty.hatenablog.com

Day 5 発表の日。朝は元指導教官のセッションに参加。何気に先生のプレゼンを聞くのは2回目くらい?先生だけあって話すのが上手。いいなあ。私も英語であんな風にプレゼン出来たらなあと思った。頼まれていなかったけど、プレゼンの様子を写真にとって後から送ったらとても喜んでくれた。「私の研究者生活のVery lastのプレゼンを写真に収めてくれてありがとう」と。

この日は、先生のセッションと自分のセッションの間にリジェクトされた投稿論文の書き直しについて打ち合わせ。前日にたくさん吸収した内容からひらめいたので、こういう軸で書き直ししてみたい、と提案したら、良いんじゃない、とのこと。ぽろっと、来年から東京の私大で非常勤講師をやることになりそう、という話をしたら、自分の授業スライドを私にシェアしてくれるという。そんなことあるんだ!と嬉しくなった。

自分のセッションの話は3つ前の記事にも書いたので割愛。他と比べて結構多くの人が入っていたし、質問もしてもらえて良かった。Great presentationとモデレーターの人からも言ってもらえてほっとした。ここで自分の博士課程の研究を発表し、それを聞いてくれる人がいて、フィードバックをもらえて、本当に良かった。大満足。

この日の夜は、先生と私が所属する分科会のビジネスミーティングとパーティにも参加。ビジネスミーティングはまあまあ面白かった。パーティは飲み物がチケット制だったけどチケットが余って、結局飲み放題同然だった。指導教官と一緒にワインを3杯飲んだ。指導教官と学生という立場を超えて、先輩後輩みたいな関係になれた気がする。先生も自分と私は似ているところがあると言っていた。私もそう思う。他にも同じセッションの発表者の人たちとも話ができて良かった。学会って楽しい!とこの時思えた。

Day 6 朝ゆっくり目に起きて、少しだけスーパーで買い物して、パッキング。電車はもう嫌なので、ホテルの前からタクシーに。タクシーの運転手が英語ではない言葉で電話をしていたので、「アメリカ出身ですか?」と聞いてみたら「エリトリアだよ」と教えてくれた。「ごめんなさい、エリトリアはどこですか?」と聞いたら東アフリカとのこと。「ケニアの近く?」と聞いたら「まあそうだね」という返事。アメリカに住んでもう20年くらいになるけど、毎年数か月は祖国に帰っているという話もしてくれた。

「往きは電車に乗ったんだけど」と言ったら「きみ、電車なんて乗るもんじゃないよ!次からちゃんとタクシーに乗りなさい」と言われてしまった笑。日本から来たと言ったら、お世辞かもしれないけど「次は日本に旅行に行きたいんだ」と言ってくれた。アメリカのタクシーについてはよくわからないけど、海外では騙されることも結構ある。運転手と個人的な会話をして少し距離を縮めておくことで、騙されたりするリスクも減ると勝手に思っていて、私は海外ではあえてタクシー運転手に話しかけるようにしている。相手もずっと無言の得体が知れない外国人を乗せるというよりは気分が良いと思うので。

タクシーはスムーズに空港に着いた。料金は50ドルくらい。一人で乗るには高いけど、安全と時間を買ったと思うしかない。空港では気になっていたGarrett popcornを購入。出張でシカゴ空港を利用するときは素通りしていたけど、もうシカゴに来ることもないかなと思い。まあ日本でも買えるけどね。このポップコーンは期待を裏切る美味しさで、シカゴ帰りに寄った実家では、両親も含めみんなですぐに食べてしまった。

ギャレット ポップコーン ショップス(Garrett Popcorn Shops)

こういう装飾がとっても田舎っぽいアメリカという国@シカゴオヘア空港

帰りもJALのプレエコなので、アメリカン航空のラウンジに。5年前に当時の上司と出張した時に連れて行ってもらったラウンジは、普通のラウンジよりも1ランク上のラウンジだったみたいで、今回行ったラウンジは正直あまりぱっとしなかった。

ちなみにその時のブログはこちら…。

fourty.hatenablog.com

今回のアメリカン航空ラウンジの軽食、どことなくぱっとしない。ドリンクはカクテルを頼んでみたけど口に合わなかった

PC開いて、前日に話をした人たちにメールしたり、資料の参考リンクを送ったりしながら時間をつぶした。そうこうするうちにフライトの時間に。

あっという間の1週間だったけど、めちゃくちゃ濃かったし、本当に行って良かった。お金以上の価値があったと思う。2年前、ハイブリッド開催だったシアトルのAoMに、コロナにならずに参加できていたら、今回のシカゴには来ていないかもしれない。そう考えると、人生って分からないもの。この一人旅を通じて、研究をここでやめるのはもったいないかもしれない、もっとこういう場に身を置いてみたい、という気持ちが生まれた。

羽田には午後3時ごろに到着。品川のホテルに1泊し、翌日朝、名古屋に移動。法事に出席し、久しぶりに親戚に再会した。その後、次男と2人で東京に帰りがてら長野に旅行。時間があればこのことも記事に書いてみたいけど、ひとまずシカゴ旅行記はこれにて終わり。

Chicagoへの一人旅の続き。

fourty.hatenablog.com

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Day2 シカゴ到着2日目は、学会の初日。まだメラトニンを手に入れていない時だったので、あまり良い睡眠は得られず、朝はぼーっとして過ごした。前日にスーパーで買ったバナナをかじる。午前中はとにかく身体を休めて過ごし、夕方外出。元指導教官とシカゴ観光。ボートに乗ってシカゴ川を下り、ミシガン湖まで出る1時間半のツアーに参加。ボートは観光客でいっぱい。言葉を聞いていると9割方、アメリカ人だろう。シカゴは外国人観光客より、国内の観光客が多いイメージ。

ボートから街を見る

早口でまくし立てるMCのアメリカ人女性。時々、元指導教官が「何言っているか分かる?」と聞いてくる笑。正直半分くらいしか聞き取れない、と言ったら、「私もあまりよく分からない」と言われた。早口すぎることと、アメリカンイングリッシュなことと、固有名詞がたくさん出てくることが要因?ぼーっと景色を見ながら、指導教官とおしゃべりして過ごした。

ミシガン湖はまるで海のようだった。大きすぎて潮の満ち引きのようなものもあるらしい。この日は少し曇っていたせいもあり、湖に出たころには寒かった。アメリカ人もジャケットを羽織るくらい。水に囲まれた街がシドニーを思い出させる。シカゴに来てオーストラリアが懐かしくなる私。

ボートツアーが終わったのが17時くらい。外はまだ十分明るい。指導教官は分科会のOpening partyに行くと言っていたけど、私は全体のOpening partyに顔出してみることに。昔、AoMのOpeningと言えば、フロリダのディズニーを貸し切ったり、ボストンの博物館を貸し切ったり、と随分楽しそうなイベントだったことを指導教官から聞いたが、今回はホテルのレセプションホール。指導教官は「Boring」と一言。

私は誰も知り合いがいないけど、ふらっとレセプションホールに。飲み物は1杯だけチケットをもらっていた。あとはビュッフェ方式。何百人も人がいたので、ちょっと疲れた。ワインを1杯飲んで、少しだけ食事をもらって、たまたま側にいたスウェーデン出身でイタリアの大学で博士号をしていて、半年前に3か月間、メルボルン大学に訪問していたという学生と雑談。「メルボルンに住むのはとても楽しかった」と言ったら、「メルボルンも良かったけど、ぼくは東京の方が好き」と言われた。日本もなかなかの人気。Opening partyは楽しいまではいかなかったが、シカゴに行ったら聴きたいと思っていたジャズの生演奏が聴けたので満足。

シカゴの有名なDeep dish pizza

Jazzを聴いている人はあまりいなかったけど、私は前の方で聴き入った

夜はKids向けのメラトニンを2粒(2㎎)飲んで(グミなので正確には食べて)就寝。

Day 3 おかげで5時間くらいは続けて眠れた気がする。朝3時くらいに一度起き、2時間くらい覚醒したままだったけど、その後、二度寝できた。まだまだ頭がぼーっとしていたけど、力を振り絞って、無料で配布されるスタバコーヒーと軽食のために、ロビーエリアまで下りた。

無料の軽食はスコーンやマフィンやフルーツなど+コーヒー

ロビーではベトナム人で、フランスの大学で博士号をしている女性が話しかけてくれた。ベトナムでは化学系の会社を経営していて、取引先の一つは私の前職の会社とのことで、日本人のことをよく知っている。世界は狭い。それにしても遠隔操作でベトナムの会社を経営し、フランスで子供3人を育てながら、博士課程で研究しているって…すごい人はたくさんいる。この日の朝は確か日本人研究者の方からも声をかけられた。東京の私大に勤めている方で、私の日本語の論文を読んだことがあるとのことで、認識してくれていた。嬉しいサプライズ。

勢いで外出した。観光名所のミレニアルパークまで徒歩で20分くらい。天気がめちゃくちゃよくて、でも暑くなくて最高だった。

シカゴトリビューンのビル

ミレニアルパークのオブジェ

面白い歩道橋から街を眺める

学会はシカゴのダウンタウンの5つか6つのホテルで行われているが、帰り道にそういえば聞きたいセッションがあったなあと、ふらっと自分が宿泊しているところとは別のホテルに。スピーカーの1人である、ペンシルベニア大学の若手の有名な研究者(同い年くらいかな?)に勇気を振り絞って話しかけてみた。こっちは失うものないからね。学会はどんどん自分からアクションを起こす場だなあとも。

このセッションでは、途中退席予定なので後ろの方に1人で座っていたら、「こっちに一緒に座らない?」と声をかけてくれた人がいた。話してみるとオージーだった笑。「私、一人でいる人を見ると気になっちゃうの」と言っていたので「あなたはとても親切で、とてもオージーですね」と返したら笑っていた。ほっこり。話しかけてくれた人はクイーンズランド大学だったけど、一緒にいた人はメルボルン大学。ここでもオーストラリアとのつながりができてうれしい。

ほぼ昼ご飯を食べずに午後は自分が泊っているホテルのセッションに参加。今の仕事とつながりがあるテーマなので、そのための情報収集。そうこうするうちに夕方に。稼働は半分くらいだったけど、まあまあいい感じの1日だった。夕食は2日前のチキンを部屋で食べて終了。メラトニングミ3粒食べて就寝。

Day 4 朝起きたらスッキリ!時差ボケがなおった。この日はセッションをいくつもはしごしながら、合間に翌日に控える自分の発表の流れを少し変えて練習したりした。これでもか、とたくさんのセッションに参加して、たくさんインプットできたので満足。私の論文をリジェクトしたエディターに話しかけたのもこの日だった。

学会会場のホテルがChicago Riverの両岸に点在しているので、1日に何度も川を渡った

シカゴのダウンタウンはまあまあ安全で、夜7時~8時ごろまでは一人で歩いていても危険を感じない。夕方、CVSという大手ドラッグストアで子供たちのお土産を購入。お土産屋よりもセンスが良く、また値段も半額くらい、しっかりしたTシャツをゲットできて大満足。1枚9ドルだったかな。私は1ドル90円台の時に両替したドルの現金を今回使い切るつもりで持ってきているので、1,000円以下で買えたことになる!

お土産に買ったシカゴのTシャツ。シカゴは西海岸LAまで続くRoute 66の出発点でもある

夕食はホテルの近くのPanda Expressでテイクアウト。これも10ドルちょっとくらい?チャーハンとおかず1品だけど、量が日本の倍近くあるので高くはない。フォーチューンクッキーのおまけつき。

欧米で食べる中華も結構好き

おかげさまで日々私の世界は拡がっている

長くなったので3部作にすることにした。

学会発表のことは前回書いたので、この記事では旅の側面をメインに。Chicagoに行ったのは2024年8月中旬。日本がめちゃくちゃ暑い時だったけど、Chicagoの気候は快適そのもの。昼間は半袖が気持ちよく、朝夕はカーディガンを羽織るような気候。滞在中、雨は一度も降らず、ずっと天気が良かった。

今回はJALのプレエコを予約。羽田を午前11時ころに出る便。ちょうど良いと思いきや、9時に羽田着ってなると、朝の通勤ラッシュにぶち当たることに気が付いてげんなり。会社に行く日と同じ朝7時に家を出て、いつもと同じ電車に。スーツケースを持ちながらラッシュ時に乗り換えをするのは厳しいので、新宿で降りてバスタからリムジンバスに乗った。この作戦は大成功。スムーズに空港まで行けた。

空港に着いたら外国人観光客向けの店で、オーストラリアからくる元指導教官のためにお土産を買った。買い物はそれだけ。プレエコの権利を最大限に使うために、サクララウンジに。朝10時前なのにJALのラウンジと言えばカレーでしょ、ラウンジと言えばワインでしょ、と変な組み合わせ。まあいいや。1人でラウンジで過ごす時間は最高。前日まで仕事をしていて、この日から私の夏休みが始まったという開放感!

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まだ学会の発表資料のノートができていなかったので、少しだけ作業。そうするうちに、ラウンジ内にプリンターがあることに気が付いた。PPT資料にノートをつけて、プリンターで印刷できた。ラッキー。もちろん無料。プリンターはレーザーではなく、インクジェット。そこは文句言えない。

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あっという間に搭乗時間。エコノミーよりも多少広い座席。良かったのは、椅子を後ろに倒しても前後の人のスペースに影響がない構造になっていること。椅子のフレームは固定なので。あとスリッパがもらえるのも長時間フライトにはありがたい。私はいつも機内食は食べないので、今回も3回出てきた機内食は全部断り、「うどんですかい」という小さなカップうどんだけ食べた。JALがどんなに機内食を頑張ってくれても、カップうどんや、以前食べた「Air吉野家」を超えることはない。プレートにごちゃごちゃ乗せてこなくていいから、うどんやおにぎりなど、シンプルなものだけくれたらいいのに、といつも思う。

Chicagoの空港は、前の会社の時に乗り継ぎで何度も行ったことがあるので少し懐かしい。おきまりの入国審査の長蛇の列も懐かしいし、巨大な空港内のターミナルをシャトル電車で移動するのも慣れている。今回、ダウンタウンまでの移動手段は電車をチョイス。汚くて臭いだろうと思ったら意外とそうでもなく、拍子抜け。

一回乗るチケットと一日乗車券がどちらも5ドルという謎の料金体系。物価高と言われるアメリカにおいて、電車は日本より安い。でもブログを書いているちょうど今日、シカゴの電車で銃撃があって4人殺害されたというニュースが目に入り、今更ながら怖くなった。私が乗っていた時にはファミリーもいたりして危ない感じは特にしなかったけど、アジア人が珍しいのか何なのか、白人のティーンエイジャーにめっちゃジロジロ見られたり、途中でホームレスの人がお金を貰いにきたりした。

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ちなみに駅は臭いし汚い。あと全くバリアフリーではない。世界一、ニの経済を誇る超大国アメリカなのに、こういうところには途上国以下の出来栄え。アメリカの残念ポイント。スーツケース持ちながら乗り換えは大変だった。もちろん日本の鉄道とは比べ物にならないが、メルボルンの電車や駅の方がきれいだし便利。

シカゴの鉄道路線図、空港からダウンタウンまで45分くらい

時刻表には電車が来る大体の間隔しか書いていないのが斬新

ホテルには昼頃に着いたが、チェックイン時間前なのに部屋の準備ができていたのですぐに入れた。ありがたい。ホテルはダウンタウンのマリオット。場所はとてもよく、周りも安全な感じがした。疲れたのでシャワーを浴びて、日本から持参したかっぱえびせんを一袋たいらげた。24時間で、カレー少しと小さなカップうどんしか食べていなかったから。疲れているけどここで本気で寝てしまうと時差ボケになると思い、ベッドで休憩しながら、何とか起きていた。

夕方、ふらふらになりながらホテルのレストランに。元指導教官とディナー。5月にメルボルンで会ったばかりだけど、やっぱり知っている人に会えると嬉しい。いつもアメリカに着いたらステーキを食べるのだけど、この日はなんかそんな気分ではなく、チキンを頼んだ。マリオットのレストランなのにワインがあまりおいしくなくて残念。チキンはまあまあ美味しかったが量が多すぎたので、ケースをもらって持ち帰った。

指導教官とは最近の出来事を交換。指導教官側からは主にNSWに建築中の家やそれにかかるお金のやりくり、設計、許可を得ることの大変さなどなど。写真も見せてもらったけど、とても良い場所だった。今メルボルンで住んでいる家のローンは返済しているけど、モーゲージに入っているから家を担保にお金を借りられるらしく、結構かつかつでやっているっぽい。おそらく全体で1億円以上、ひょっとしたら2億円くらいかかっていそうな感じ。高い!!オーストラリアに来たら、うちに泊まりに来て、ゲストルームあるから、と言ってもらえた。

そんな会話を英語でしながらだんだん頭がもうろうとしてきた。翌日、一緒に観光しようと誘われた。私、学会発表に来ているけど、実はこれ、転職後の貴重な有給を使った夏休みだからね。堂々と遊んでよい。指導教官もお金はGrantから出ているけど(ディナーもおごってもらった)、もう大学はリタイヤしたのでたくさん遊ぶと言っていた笑。まだ色々なところからは声がかかるけど、これを最後の学会にするつもりだってさ。

私がアメリカに来るときにはいつも時差ボケに悩まされる、と言ったら、メラトニンを飲むと良いと言われた。メラトニンアメリカではサプリだけど、オーストラリアでは処方箋が必要らしく、指導教官はアメリカやカナダに来るたびに大量に買って帰るらしい。

翌日、だるい体に鞭打って、ホテルの近くのスーパーとドラッグストアに。スーパーはTrader Joe‘sというところで安くて美味しいものが売っている。オーストラリアと比べて高いものと安いものがある。バナナは日本より安い。

普通のバナナは1本40円くらいで安い

ドラッグストアCVSではメラトニンを物色。種類がありすぎて迷ったが、とりあえずKids用のグミタイプの1㎎のものを選んだ。身体が大きな白人向けに作られている薬は強すぎることがあるので。大人用は1㎎、3㎎、5㎎、10㎎、20㎎と様々な容量で売られていた。

私の身体はアメリカではキッズサイズだからキッズ用のメラトニンをチョイス

記事長くなったのでここでいったん終わり。

無事、世界最大の経営学会であるAoMに参加し、発表を終えることができた。シカゴへの一人旅について、色々と書きたいネタはあるけど、まずは学会のこと。国際学会に参加して得られたものをリストしてみたい。

シカゴの街にAoMのバナー

1.名前だけ知っていた一流研究者と会って話ができた

博論のフレームワークに使ったアメリカ人の教授、この領域で飛ぶ鳥を落とす勢いのアメリカ人若手研究者、似た研究をしているスペインの研究者などなど。いままで論文を通じて名前だけは知っていた研究者たちに直接会うことができたのは面白い経験だった。

大御所の研究者や有名な研究者はもちろん私のことは知らない。でも彼らのセッションが始まる少し前に部屋に行き、暇そうにしているときに自己紹介して話しかけたり、セッションで挙手して質問することで、実際に会話をすることができた。これからは彼らの名前を見るたびに、人となりを想像することができる。対面の学会ならではだと思った。

2.自分の研究を引用している研究者と会えた

正直、1よりもこちらの方が数倍嬉しかった。1人目はドイツの大学にいるPhD学生。Best student paper awardにノミネートされるような優秀な人。研究テーマが似ているので、現地についてから彼女の学会ペーパーを読んでみたら、私の研究が要所要所に引用されているのを発見!これは話しかけなければ、とBest student paper awardのセッションの後に声をかけた。

1で書いたことの逆のバージョン。彼女は私と会えてとても喜んでくれた。5分程度の立ち話では足りなかったみたいで、その後にメールが来て、もっと話したいから時間を作ってもらえませんか?と聞かれた。一緒に参加していた別のセッションが早く終わったので、30分ほど会場のロビーで話し込んだ。彼女は来年PhDを終える予定で、アカデミアでの就職を狙っている。私はどうしたいのか、考えるきっかけをくれた。

1で書いていたスペイン人の研究者チームは、私と同じセッションで発表することになっており、また彼らの最新の論文では私の2023年の論文を引用してくれていることも分かった。お互い引用し合う関係で、セッションも同じ。研究手法は異なるが、テーマが近い。このテーマで実証研究を発表しているのは、現状、世界を見渡しても(英語で発表されている論文に限れば)、私とそのスペインの研究チームとあと1組しかいない。ちょっとしたコミュニティ感があった。

もう1件、会場であり宿泊していたホテルの交流スペースで一人で朝ご飯を食べていたら、日本人の研究者から話しかけられた。AoMではほとんど日本人を見かけないので、嬉しかった。東京の私大に所属されている方で、研究テーマはドンピシャで一緒ではないが、私の日本語で書いた論文を読んでくれて、私のことを認識してくれていた。その方が受け持つ大学院の講義で、ゲスト講師ができるかどうかを聞いてくれた。アメリカで日本人研究者とつながれるのも面白いと思った。

3.ジャーナルのエディターに挨拶できた

前々回の記事に書いた投稿論文のリジェクト。最後に返事をくれたエディターが非常に丁寧で、リジェクト自体はショックだったけど、丁寧なメールには感謝していた。そのエディターがパネルを務めるセッションに参加。直接話す姿を見て、考え方が自分に近しい感じがした。この人はオランダの大学の教授。

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そのセッションが終わったら話しかけようと思っていたけど、パネルだったのでたくさんの人に囲まれていた。私は次のセッションに参加するためにその会場を出た。翌日、もう一度チャンスが巡ってきた。別のセッションでその教授が聴講者として参加しているのを発見。セッションが終わった後、ホールで話しかけた。私のペーパーに対してthoughtful feedbackをくれてありがとうございます、と直接伝えることができた。

自分がリジェクトしたペーパーの著者と話すのは、少し居心地が悪いのかもしれない。君が期待する結果にならなくてごめんね、と言ってくれた。3名のレビュアーのうち、2人目が相当辛辣なコメント。悩んだ末の結論だったんだろうと思う。メールに書いてくれていた、改善ポイントについて、再度口頭で伝えてもらえた。ということは、私のペーパーのことを記憶しているんだと少しうれしかった。

今回、AoMで自分の研究テーマに関するセッションに5つくらい参加し、その中で交わされている議論や切り口から、書き直すために使う理論をひらめいた。もう書きたい内容は決まっていて、あとは会社員しながらどのようにして時間を捻出するかなんだけど‥‥このジャーナルからは、実は自分がレビューしたペーパーの再レビュー依頼も来ている。自分がリジェクトされたのに、アクセプトされるペーパーの改善に貢献するのは複雑な気持ちだけど、そこはもちろんフェアに行動する。

懇親会の時に私の発表と同じセッションで発表していた北欧の研究チームと雑談していて、同じジャーナルの同じスペシャルイシューに投稿してリジェクトされた、という話を聞いた。私だけではなかった。というか、このテーマ、流行になってきて、おそらくスペシャルイシューへの投稿数がかなり多かったのではないかという気がする。研究者にとって、質の高いジャーナルに投稿チャレンジして、リジェクトされるのは日常茶飯事なんだなあと。同じことを経験している人と話したことで気持ちが軽くなった。

今回、自分が研究者としてAoMに参加し、他の研究者と交流して思ったのは、有名なペーパーを出している(=ジャーナルに採用されやすい)のは、アメリカの研究者が多いが、自分と課題意識やアプローチが似ているのは、ほぼ全員が欧州の研究者だった。経営学の世界では、おそらく社会文化的要素が色濃く反映されるが、日本と欧州は日本とアメリカよりも共通項が多いことを考えれば当たり前のことかもしれない。あと、欧州の研究者の方が日本やアジアに興味を持ってくれている雰囲気も感じた。

長くなったので、AoM参加の研究面での振り返りはこの辺にしておく。次はシカゴ旅行記について書くつもり。

毎朝のちょっとした軽食とスタバのコーヒー(無料なのでありがたい)

巨大な学会なので自分が所属するDivisionのリボンをつけて仲間を見つける

いよいよ来週からシカゴ。私にとって初めての国際学会への対面参加となる。

AoMは博士課程の3年目の2022年にアクセプトされていたが、道中でコロナに罹患し、東京で足止めされ、良いのか悪いのか、ハイブリッド開催だったこともあり、オンライン録画での発表に。その4か月後、ゴールドコーストで開催されたANZ学会は、当日の朝に家を出ようとしたら夫がぎっくり腰になり、ベッドから起き上がれないため、家事と育児をするために泣く泣くオンライン参加。

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もう何も起きないで、とにかく私を一度で良いから国際学会に参加させてくれ…ちなみに学会は8月9日(金)~13日(火)の5日間開催。私の発表は4日目の月曜日。時差ボケが回復する頃なので嬉しい!

先週末、学会が実はすぐだということに気が付き、慌てて土曜日にスライドを作成。日曜日に元指導教官に送付。今週末、時間があれば少し練習してみようと思う。ちょっと余裕があるのは、シカゴに行ってからでも練習できるから。ありがたい。

もともと学会はフルで参加するつもりだったが、自分の発表が4日目であることが分かってからは、帰りの飛行機を1日前倒しに変更して、発表翌日に帰国することにした。最終日にも面白そうなセッションはたくさんあったのだが。理由は、10何年振り?に実家の方で法事が行われるということで、親戚が30~40人?集合する。子供の頃、毎週のように遊んでいて、お互い子供が生まれてもしばらくはよく会っていた従妹たちや叔父さんや叔母さんにも久しぶりに会いたいと思った。

学会のプログラムが発表され、自分のセッションが最終日でないことを知ってから、飛行機のスケジュールを調べたら、ギリギリ参加できそう。こんなこともあろうかと、もともと帰り便だけ予定変更可能なチケットにしておいたので、電話して無料で変更してもらえた。シカゴから羽田の直行便だが、時差の関係で14日の午後に到着。その日は自宅に戻らずに品川のホテルに1泊し、15日の朝イチ、新幹線で名古屋まで移動すれば、15日の午前中に行われる法事に参加できる。夫と子供2人は別途、法事の前日に私の実家まで移動しておいてもらうよう、新幹線のチケットを購入した。

時差ボケで法事中眠くなりそうだけど、私にとっては、アメリカの学会に参加するだけでなく、ちゃんと実家の法事にも家族と一緒に出られるということで、ほっとした。母親と夫からは体調を心配されているが…アメリカ帰りに無理して法事に参加しなくて良い、と両親から言われたが、自分が参加したいから参加する。

5月のメルボルンと今回のシカゴで年休をほぼ使い切ってしまうので、会社のPCを名古屋に送って、法事の後は実家からテレワークする計画。夫と長男は飼い犬の世話のために法事の翌日に帰るけど、私と次男は少しゆっくり。そして気まぐれで、帰りは東海道新幹線ではなく、特急しなのと特急あずさを使って、ぐるっと長野経由で帰ることにした。途中、諏訪湖で下車して1泊。花火を見る予定。自宅→シカゴ→品川→名古屋→諏訪湖→自宅というトータル10日以上の旅。体力ないのに、気力だけあるから、ついこういう予定を組んでしまう。

話はそれたが、学会がらみで2件、個別メールでの連絡があった。2件とも出版社から。

1件目はAoMのEditorから。

Hopefully we'll have a chance to meet next month, either at the AOM Publications team's table near the registration desk at XXX or YYY. I'd be curious to hear about your areas of focus and the types of research that you're working on.

初めてのことなのでよくわからないが、AoMのアカウントからのメールで怪しそうではなかったので、とりあえず返信してみた。何が次につながるか分からないからね。痛いのは、今進行中の研究がないこと。アイデアはいくつかあるんだけど…

2件目は大手出版社のPublisherから、フォーカスグループへのお誘い。

I am reaching out today as your session (~~~) in the AOM program caught my eye. We are holding a small focus group on social impact in business education. .(中略).. We'd greatly appreciate your time and feedback as we learn more about this area of study and develop the framework for this collection. We are also keen to connect with potential authors and editors for this future collection.

こちらのフォーカスグループは、日時と場所(会場内)が設定されており申込制。謝礼として50ドルのバウチャーがもらえるとのこと。時間があれば行こうかな…なんでも経験だから。

AoMに提出したフルペーパーは、先日リジェクトされた投稿論文とほぼ同じ(AoMのルール上、出版前のペーパーであれば発表して良いことになっているため)。私の研究に興味を持ってくれた人には会ってみたいと思っている。

とりあえず、着いた日の夜は先生と合流して、ホテルでディナー(先生の研究費から出るとわざわざ教えてくれた笑)。リジェクトされた論文のリバイスの方向性とAoMでの発表資料のレビューをする予定だけど、どうなることか。雑談して終わりそうな気もしなくもない。AoMは全体で参加者が1万人という巨大な学会なので、自分の興味があるテーマに絞って参加し、少しでもネットワーキングができればと思っている。自分を覚えてもらうために、個人としての紙の名刺(LinkedinのQRコードを入れた)も作ってみた。

シカゴは東京よりも少し涼しいみたいでそれもありがたい。何事もなく行けますように…

7月に入ってバタバタと忙しくしている。そんな中、残念なニュースが。前回のブログで触れた査読中だった投稿論文、結局リジェクトになってしまいました。投稿したのは12月15日。最初の判断を下すのに7か月以上かかっている。長すぎる…

fourty.hatenablog.com

チャレンジングなジャーナルではあったけど、最終的にはフィットの問題だったのかなあ。レビュアーは3名。当初2名のレビュアーのうち1名から辛辣なコメントがあり、3人目のレビュアーに回ったようだ。Editorからはとても丁寧なメールが来た。ここで変に時間をかけて書き直しさせられるよりも、気を取り直して、もっとこのペーパーに合うジャーナルに投稿した方が良いのだろう。

コメントのいくつかは私の研究手法についてのものなので、そこを受け入れてもらえない場合は、永遠に掲載にたどり着かないということは分かった。そのことは博士論文の審査員2人のうち1人からも指摘された。具体的に、私の研究はGrounded theoryを使っているのだが、質的調査の難しさというか、theoryの受け止め方や捉え方が学者によって異なるので、合わない人とは全然合わない。辛辣な評価をしてきた2人目のレビュアーのコメントからは嫌悪感までにじみ出ていて、最後には「So what?」と書かれていた。

私が純粋培養された学者なら、So what?というコメントにきっと大きなショックを受けているだろう。こういう時、実務のバックグラウンドがあって良かったと思う。So what?と学者から言われたとしても、実務的に意味のある(少なくとも実務者である自分にとって意味のある)発見ができたので、So what?に対する回答はある。逆に言えば、自分自身が毎日現実問題と向き合う実務者であるが故、実際に起きている複雑な出来事を、象牙の塔に飾るレベルまで昇華させるスキルと視点が足りていないのだろうとも思う。ただ、机上で(もしくはPDF上で)いくら素晴らしいロジックを展開していても、実社会へのインパクトが無ければ、経営学領域の研究としては価値がないとも自分は思っている(もちろん基礎研究や哲学など、実社会へのリンクが遠い領域については当てはまらない)。

これは負け惜しみでもあるけど、でもこうやって書き出してみることで、次のステップに進める気がする。次に出そうと思っているジャーナルの目星はついている。もう少し実証研究を重視してくれるジャーナル。判断ももっと早い。でもどこをどう直すか、共著者である元指導教官の先生と相談しなくては。

今回改めて思ったのは、私のやりたいことは、トップジャーナルに学者コミュニティから評価される論文をたくさん掲載することではなく、実社会で日々起きていることに対して、なぜそれが起きているのか、どういう見方をすればよいのか、こういう見方をしてみたら実務上に行かせるヒントがあるかもしれない、という「示唆」を見つけること。その手法として「研究」があり、発表手段として「論文投稿」がある。そして発表された論文を実務者向けにかみ砕いて、講演をしたりコラムを書いたりする。

今日、初めて自分の論文を掲載してくれたジャーナルのサイトを見たら、Full text viewsが2,784件になっていた!オンラインでPublishされたのは2023年4月なので、1年と3か月でこんなに多くの人たちが私が書いた論文を読んでくれたのだと思うと嬉しい。

この論文も今回と同じように、当初、チャレンジングな(歴史のある)ジャーナルに投稿したら、4か月待った上に厳しい言葉でリジェクトされたんだった。

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同じ流れだなあ…アカデミアって不思議な世界だと思う。

先週の土曜日は、久しぶりにとある研究会で発表した。持ち時間は1時間~1時間半と言われていて(長い!)、もはや発表と言うよりは講義?講演?博士論文をベースに45分くらい発表をして、その後質疑。この研究会は私が博士課程に進もうと思うきっかけをくれた研究会。実務者と研究者が半々くらいで参加している。今回東京での開催だったが、私の発表を聞くために何名も関西から来てくれた人たちがいてびっくりした。

実は夏バテで全然ちゃんと下準備ができておらず、前日も会社を早退。土曜日ももうろうとする中、鞭打って登壇した。ベストなコンディションではなかったので、準備やらいろいろな面で反省はあったけど、多くの人からコメントや質問をもらえたのは本当にありがたかった。そしてびっくりしたのは、4~5名の方がフルタイムで働きながら博士課程をしていること!両方同時にやるのは本当にすごいことだと思う。その上、1週間みっちり仕事して、クタクタに疲れている土曜日の午後、酷暑の中で外出し、研究会に来て学ぼうとするなんて!

私自身は仕事を休んで博士課程に行っていて、それでも新しい世界に飛び込んで学ぶのが大変だった。私以上に自分の好きな事を追求するために頑張っている人たちと交流している間に少しずつ元気が出てきた。

研究会の様子(Zoomから参加している人も同じくらいいた)

そして、私は体調が良くなかったので、服装も何も考えずに普段着のよれよれのTシャツを着て行ってしまったことに写真を見て気が付いた。

研究会の発表の後、20年来の友人(主催者の1人で私が最初に働いた会社で知り合った同僚)が、彼女が准教授をしている関西の有名私大で12月にゲスト講師をしないか、と声をかけてくれた。研究も講義も今の私には本業ではなく「趣味」なので、会社から年休を取って参加することになるけど、若い学生さんたちに講義するのを楽しみにしている。老体に鞭打って酷暑の中、しゃべったかいがあった。こうやって一つ一つが次につながっていくのだと思う。

そして今日は、投稿論文を直すのではなく、2週間後に迫ったAoMの発表資料作り。2週間前に資料ができていないなんて。ありものを一通り見繕って形は出来たから、明日見直して元指導教官に送付する予定。大統領選で盛り上がっているアメリカ、民主党の党大会の前の週のシカゴを思いっきり楽しむために、できる準備はしていこう。