バイオリンの上達と退歩のメカニズム (original) (raw)
水槽が多重に設置されている。
多重の水槽は外側の大きなものほどフチが高くなっているものAと低くなっているものBがある。
水は常に蒸発している。蒸発の速度は湿度と温度による。
水は常にチリを受けて汚れ続ける。
練習は注水である。
注水する日々の水の純度は人により日により異なるため、結果は大きく異なる。
最も小さな水槽は基礎部分である。正しい音階の安定した左手、正しい弓遣い奏法。モーツアルト協奏曲をコンクールで優勝する程度に演奏できる。
二番目の水槽は中級であり、三番目は専門大学レベルだ。
中級は教則本ローデやメンデルスゾーン・ブルッフ協奏曲などでリサイタルができる。
三番目は専門職として演奏活動ができる。
周囲が適切に導く場合はBパターンであり、努力や気合で取り組む場合はAパターンである。
Aパターンは途中どこかで濁ると濁りが全体に及んでしまうので、混濁状態となって厄介なことになる。
Bパターンは途中どこかで濁っても最小の水槽さえ澄んだ水で回復させれば、そこから澄んだ水を二番目三番目に注入し続けることができるため、中期的に確実に回復して成長できる。
最小の水槽、基礎部分が濁ると、その次の水槽もその次の水槽にも濁りが派生する。
どこまで水を入れても濁っている。
最小の水槽を澄んだ水で埋めると、次の水槽も次の水槽も澄んだ水で、すべての水は澄んでいる。
悪い生活をして学習を怠ると濁りと共に蒸発が進むため、水槽の水位は下がっていく。
たとえ澄んでいても蒸発は進む。
最小の水槽をまず澄んだ水で埋めるためには、純度の高い水、純度の高い練習が必要だ。
難易度よりも基礎の澄んだ練習B1をベースに、中級までであれ広い多くのレパートリーだけで準職業的な能力を完成させることが賢明だ。
濁りとは音程重音の狂いや発音・リズム感・イントネーション・速度変化・強弱などの粗さである。
日々、澄んだ水を注入し、濁りを取り除き続け、水量(レパートリー)を確保し続ける作業をすることと、それらに反する行為によって上達と退歩が決定される。
チリが多くなりすぎたり、チリの濃度が高くなったり、Aパターンで理性ある正確な練習ができない汚濁注水を繰り返したり、困難さは世界中で発生している。
そしてそのメカニズムだと理解すれば、誰でも上達できる。
誰でも上達するのだから、そのメカニズムを教える先生はそれほど多くない。
全員が上達して先生が増えても、先生一人当たりの生徒が減るだけ、収入減だと考える先生が多いからだ。
地獄で仏のように、最近私は不幸中の幸いの経験をした。
ただ、もう少し純度の高い注水にするべきだと耳が拾っているので、先生に感謝する。
あとは日を重ねるだけで回復後プロフェッショナルレベルに到達するのだから。
たばこや酒や異性や享楽などの不純物は限りなくゼロに近づけるべきだ。
少しくらい、ちょっとだけよ、まあ一杯、いっとこかなんていう人は、不利な条件を持っていると思う。