「ザ・デストラップ」シナリオログ (original) (raw)


ザ・デストラップ
発売元:スクウェア
発売時期:1984年10月
定価:9800円
対応機種:PC-8801
メディア:ディスク3枚組

徳島県の電気工事会社「電友社」。
そこのソフト開発部門としてスクウェアは生まれた。
電友社は、創業者である宮本雅史さんの父親が経営する会社だった。
人材確保のために行ったのは、パソコンを開放した会員制サロンであった。
サロンに集まった学生達をアルバイトで雇いゲーム開発を始め、
世に送り出された第一弾タイトルが「デス・トラップ」だった。
(第一弾に用意していたタイトルがボツになり、こちらが第一弾となったらしい)


Producer :
H.Sakaguchi"Goblin"

Programer :
H.Kato"Hacker"
H.Tanaka "elppa"

午前3時、A国の首都TALK CITYの郊外。街は全て眠っている。
雨の降りしきる中、1台の車がDr.GITANES(ジタン)の屋敷の前に音もなく止まった。
---ガラスの割れる音、女の悲鳴…。


Graphic design ;
Hiromi Nakata
Miki Yukinoira
Miho Imaizumi

それから8日後…。A国の情報部員BENSCN(ベンソン)のアパートメント ------
目が覚めると、部屋には既に午後の光が満ちていた。
3日続きの雨が嘘のように晴れている。
ドアの隙間から1通の手紙が差し込まれた。


Scenario design ;
Hiro Hanahisa
Yuki M.Yoshioka
Suzy K.Yoshioka
Tomoko Saito
Yasuyo Ide
A.Hayashi

NO.36830[読後破棄せよ]
8日前、我がA国Dr.GITANES(ジタン)がB国のゲリラに拉致された。
ゲリラからの要求は出ておらず、博士自身が何か事件のカギを握っていると思われる。
そこでBENSCN(ベンソン)、君に博士救出を命ずる。
なお、B国政府側のスパイJOKER(ジョーカー)がゲリラ側に潜入している。
彼が君に情報を提供してくれる。空港で待つ。


本作はコマンド入力型アドベンチャーゲームで、
英語と日本語の両方に対応している。


街の混雑に足止めを食らい、基地までの道のりがやけに長く感じた。
「チッ、だいぶ遅れたな…」
若い軍人は訪ねた。
「アナタのコードNo.は?」
コードを教えて中へ通してもらう。


部屋に入ると地図、コンパス、ピストル、ナイフ、そして無線機を手渡された。
昨日の夜、一緒に飲みに行ったチェリー・ミヤモトが
二日酔い気味の浮かない顔をしている。
「他に必要な物資は無いか?」
「このリストの中からA、B、Cのうち1つを選んでくれ。」
「どうせなら全部くれよ。」
「それじゃ重くて動きがとれないぞ。1つだけ選んでくれ。」
A:カード、水筒、マッチ、ロープ、ライト、爆薬。
B:カード、パラシュート、水筒、マッチ、ロープ、ライト。
C:パラシュート、水筒、マッチ、ロープ、ライト、爆薬。
(Bを選ぶと)「OK!」と言って渡してくれた。


秘書のJASMINE(ジャスミン)が真剣な面持ちで見つめている。
「ダメよ行かないで!行ったら殺されてしまうわ…」
俺が何を言おうと彼女は首を横に振るばかりだ。
>キスする
彼女のペンダントを俺の首にかけ、指輪をはめてくれた。
「これを持っていって。お守りよ。必ず戻ってきて!!」
いつもは爆音の轟く空港が、今日はなぜか静寂に包まれている。


空港は緊迫した空気が張り詰めている。
「カードを渡してもらえますか?」
>カードわたす
「この飛行機です。早く乗って下さい。」
「Thank you」
「Good Luck!」


TAKE OFF !


目的地が見えてくる。俺は汗ばんだ手を握りしめた。


若い軍人が言った。
「物資は箱に詰めておきました。
無線機、コンパス、ピストル、ナイフは携帯して下さい。」
パイロットの声が響く。
「目的地です。降下して下さい。」
俺は箱を取ると外に放り投げた。
パラシュートが広がり、箱はゆっくりと落ちていった。
>パラシュート着る
O.K.


パラシュートを外して降り立つと、
そこは空の断片が切れ切れに見えるジャングルだった。
俺は地図とコンパスを広げた。
無線機が突然鳴り出した。
「聞こえるか?JOKER(ジョーカー)だ。今、俺は川の側のアジトにいる。
Dr.GITANES(ジタン)はまだ無事だ。早く来てくれ。
これから度々ゲリラの目を盗んで情報を送るから聞き逃さないでくれ。
なお。安全のため君の無線機は送信できないようになっている。」


ジャングルの中は混沌としていて、あたりは薄暗くジメジメしている。
鬱蒼としたジャングルが、どこまでも続く…。


広い草原には人の気配は無い。俺の存在すらも草のさざめきが消してしまう。


白い泡を残し、砂浜が軌跡を描く。


「こんなところに落ちたのか。」
波打際に輸送機から落とした物資が見える。
箱から物資を取り出し携帯した。


何かが動いた。
「---なんだシマウマか…。」


風の音に混じってかすかに打楽器の音が聞こえてくる。
遠くに小さな村がある。


村に入ると、若い男が珍しそうに俺のあとをついてきた。
「ヒクカーザ、ノヴァ アダカン キト チグカ カサ オ ブ」
>ピストルあげる
彼は自分で作った吹き矢を差し出した。交換するつもりらしい。
吹き矢を貰うと、俺は村を出た。


険しい岩山に出た。まるで人を拒むように切り立っている。


かなり急な崖だ。
見下ろすと足元の岩がバラバラと崩れ、吸い込まれるように落ちていった。
>ロープむすぶ


岩に結びつけてから俺はロープを下に落とした。
>おりる
地面に足がついた途端、ロープが落ちてきた。俺はロープを手繰り寄せた。


無線機が突然鳴り出した。
「アジトを移動する事になった。どこへ行くかまだわからない。また後で連絡する。」
崖を降りると流れの緩やかな川が流れていた。
川べりに原住民のカヌーが浮かんでいる。


カヌーは川の流れにのって川を下ってゆく。
水は澄んでいる。光が乱反射して眩しい。
川の流れが少し緩やかになったようだ。


ジャングルの少し開けたところに小屋が立っている。


一人の年取った男が虚ろな目で俺を見つめた。
「ワシはCARLTON(カールトン)というものじゃが…
お前さん、次の問題が解けるかね?」
男は頭がおかしいのだろうか…いきなりしゃべり出した。


「宮殿で火の周りを8人の神様が踊っておられるのじゃが、
その中に一人だけ女神様がおられるのじゃ。
その方のお名前はなんと申すかご存知かな?」
>ビーナス
「その通り!では良い呪文を教えてやろう。“HORUS(ホルス)”じゃよ!」


カヌーは川の流れにのって川を下ってゆく。
無線機が突然鳴り出した。
「ザザー…ザ‥ドウ…ザ…ザーザザ‥ガ‥ザ…」
「コ‥コチラ ユソウキ‥ ベンソ‥‥ イマ ブッシ ヲ サバクニ オト…」
どうやら味方の輸送機らしい、砂漠に物資を落としたようだが…。


川の流れが二手に分かれている。
俺は左の渦に気づいた。
>ホルス
信じられないことだが、渦は一瞬にして消えた。


無線機が突然鳴り出した。
「位置はよくからないが、ジャングルの中のアジトへ移動した。
ゲリラがDr.GITANES(ジタン)を取り調べてマイクロフィルムを発見した。
だが、フィルムはゲリラの上層部が押さえていて俺には手出しできない。
また後で連絡する…」
俺はカヌーを岸に寄せ、ジャングルに足を踏み入れた。


情報通り、川の側にゲリラのアジトが立っている。
アタリに人影は無く、ただ川が静かに流れているだけだ。


慌てて移動したと見えて、アジトの中はかなり乱れている。


突然、白い巨大な象が現れた。
俺の事など気にも止めていないようだ。


川岸に木が茂っている。俺は上を見上げた。


オレハ切り倒した木を川岸に並べた。
>結ぶ ロープ
俺はイカダを漕ぎ出し、川を下ってゆく。


しまった、オノを落としてしまった…。
激流に揉まれてイカダのロープが解けた。
俺は川に投げ出され、やっとの思いで川岸に辿り着いた。
しかしやすんでいる暇は無かった。
俺はジャングルへ足を踏み入れた。


ジャングルが少し開けたところに1軒の小屋が立っている。


「まあ、お客様なんて珍しいこと。あなた、どうも旅行者では無さそうね。」
「…?」
俺は一瞬目を疑った。
「わたしはEVE(イヴ)。都会の生活に嫌気が指してここで自由に生きてるの…!」
>わたす 花
「まあ、キレイ。どうもありがとう」


俺はEVE(イヴ)に物資の落とされた砂漠へ行きたいと話した。
彼女は「この辺りのジャングルは迷いやすいから近道を教えてあげる」と言って、
洞窟の入口へ案内してくれた。
「わたしは今の生活が似合っているの…」
そう言うと、イヴはジャングルへ向かって走っていった。
イヴの姿が消えると、俺は洞穴に入った。


……なかなか出口が見えてこない。そう思った途端、外から光が見えてきた。

※ここでドライブ2のディスクをCディスクに入れ替える。


無線機が突然鳴り出した。
「2つのグループに分かれて行動する事になった。
俺はフィルムを持った連中と移動を開始する。
Dr.GITANES(ジタン)は数人のゲリラとともにアジトに残っている。
博士の救出は君に任せるぞ。気をつけてくれ!」

砂丘は刻一刻と姿を変え、自分がどこから来たのかさえも分からなくなる。
どこまでも続く砂丘。太陽が照り付け、汗が滝のように流れる。
「暑い…喉が渇く…。」
足がもつれ、目眩がする…。
「これ以上歩けない…。」


情報通り物資が落ちていた。
俺はもつれる足を引きずって物価に向かって駆寄った。
俺は物資を箱から取り出した。

細かい砂に足をとられ、一歩あるくごとに汗が吹き出す。
太陽は容赦なく照りつける。
砂も暑い、風も暑い、ものを考えるのが馬鹿らしくなるほど暑い…


陽が沈もうとしている。暗くならないうちに行けるところまで行かなければ。


あたりはすっかり闇に包まれてしまった。遠くでケモノ達の声がする。
いま移動するのは危険だ。
枝を拾って焚き木にした。
ライターで火をつけた。これでここにいる限りケモノは襲って来ないだろう。


朝、何かが襲ってくるような気配に飛び起きた。
「夢か…」
狂ったような鳥のさえずりにふと我にかえる。

果てしなく続くジャングル。
俺は絡みつく植物を払い除ける。


「チッ、見張りだ…」
>開ける ペンダント
オルゴールの音が鳴り出して見張りが振り向いた。
>投げる ペンダント
ゲリラがペンダントの音に気を取られている隙に俺は走った。
上手くごまかせたようだ。


遠くにゲリラのアジトが見える。
しかし、建物の向こうでゲリラが数人たむろしている。
「下手に動くと命取りだな…」


俺は息を潜めアジトに近寄った。
ゲリラはまだ俺に気づいていない。
窓に人影が写っている。
>切る ガラス
>指輪
俺は注意深く窓を切った。ガラスは音も無く外れた。


GITANES(ジタン)博士はロープで椅子に縛り付けられていた。
俺は音をたてないようにロープを解いた。
「助かった…。」
「シッ!静かに。外にはまだゲリラがいる。」


「そこに連中が使う抜け穴の入り口があるぞ。」
机を動かすと床に小さなドアが見つかった。
>開ける カギ
>針金
軽い音を立てて、カギが外れた。


抜け道は洞穴に続いていた。
出口に差し掛かったとき、Dr.GITANES(ジタン)は青ざめた顔で言った。
「ちょっと待ってくれ。ゲリラに重要機密を奪われてしまった。
あのフィルムが無ければ私は本国に帰る意味が無い。
悪用されたら取り返しのつかない事になってしまう…。」


俺はDr.GITANES(ジタン)とともにジャングルの中をさまよった。


道が分かれてしまっている。一体どっちに行ったらいいんだ。


島が見える。それほど遠くはないようだが、潮の流れが速そうだ。


するどい銃声とともに博士の体が崩れ落ちた。
「頼む…マイクロフィルムを…」
振り向くと追ってきたゲリラが俺に狙いを定めている…
>殺す ゲリラ


博士とゲリラは波打際に倒れている。
何事も無かったように静かに波は打ち寄せる…


俺は小高い丘に登った。島がよく見渡せる。
俺はハングライダーを組み立てた。
ハングライダーで飛び立とうとすると、無線機が鳴り出した。
「博士が殺されたらしいが、お前は大丈夫か?
俺はいま、島の中の基地にいる。マイクロフィルムは俺が手に入れた。
渡すから合言葉HITONE(ハイトーン)を言ってくれ。それから‥ザ‥ザザ…‥」
それ以上無線は聞き取れない。俺はハングライダーで飛び立った。


島に渡ると俺はまずハングライダーをジャングルに隠し、
ゲリラの基地を探す事にした。
ジャングルはまるで島全体を覆い尽くすかのように続いている。


崖沿いに細い道が続いている。崖の下には青い海が広がっている。
波が岩壁に打ち寄せては砕け、白い波しぶきが散った。


見たことも無い植物の間を俺はケモノのようにさまよう。


ここは島の反対側のようだ。
海岸沿いに続く細い道にトラックが止められている。
「どうやらゲリラのものらしいな」


荷台に乗り込むと服が脱ぎ捨てられていた。
遠くでかすかに人の声がしたような気がした
「ゲリラか…?」
>着る 服
「これで怪しまれずに済むな…」
どうやらゲリラがトラックに戻ってきたらしい。
鈍いエンジン音とともにトラックが動き出した。

トラックが停止した。幌の隙間からゲートが見える。
トラックはゲートを通ってゲリラの基地の中に入ったようだ。
俺は気づかないようにトラックから飛び降りた。


ゲリラの基地は静まりかえっている。
その不気味なほどの静けさは、下手に動けば命に関わる事を感じさせる。


奴らはまだ俺に気づいていないようだ。
部屋から男が出てきてこちらに向かって歩いてくる。


薄暗い廊下にドアの隙間から光が漏れている。


部屋に入るとゲリラが振り向いた。
「なんだお前。何か用か?」
>HITONE
「お前がベンソンか?」
ジョーカーは、俺にフィルムを手渡した。
「早く本国に持ち帰るんだな…GOOD LICK !」
>はなす
「おっと、忘れていた…」
ジョーカーはカギを手渡した。
「ゲリラの船のカギだ。気をつけて行け。」


アジトはフェンスで囲まれている。


>掘る 地面
>置く フィルム


ゲートに向かうと見張りがオレを静止した。
「ちょっと待て。見慣れない顔だな。一応所持品を調べるぞ。
---よし、通っていいぞ。」


フェンスの向こうにゲリラのアジトが立っている。
俺はあたりを見回した。
「まだ見つかっていないようだな…」
俺はさっき穴に置いたフィルムをフェンスに注意しながら取り出した。


入江にゲリラの船が見える。
人影は無いようだ…
ジョーンーから貰ったカギでエンジンをかけた。
「このままダッシュだ!」


ひどい嵐だった…
俺は、高波にもまれ難破した船から命からがら脱出した。
俺は漂流するゴムボートから声の限り叫ぶのだった。
「タ・ス・ケ・テ・ク・レェーッ!」
---それから3日後、俺は貨物船に助けられた…
ジャスミンが心配しているだろうな…」

プレイヤーは諜報員で、ミッションを遂行するお話だが、
ゲーム内容はほぼほぼジャングルの探索である。
(ゲームプレイ中、ジャングルのどこにいるのか常に画面右に記されている)
一流の諜報員なのに、最後は遭難して終わるのが情けない。(^^;
当時のゲームにしてはボリュームが大きく、
シナリオ分岐やマルチエンディングも用意されている。
(今回ログに書いた結末は、そのうちの一つである)
また、現地人の言葉や古代文字など、
マニュアルを見なければ理解できない仕掛けもある。
これはマニュアルプロテクトを意識してのものだろうか?
かなり時代を先取りしている。
だが、本作は商業的には失敗だったらしい。