「1日4分間、週2回」で最大の効果…「日本の研究者」が考案した「スゴすぎるトレーニング」 (original) (raw)

著者に聞く 「科学的なトレーニングをしたい!」

第7回――『1日4分 世界標準の科学的トレーニング』の著者 田畑 泉 さん

タバタトレーニングは、20秒間の疲労困憊に至るほどの運動を10秒間の休憩を挟みながら8回繰り返す「高強度・短時間・間欠的トレーニング」である。1日合計4分間、週2回行うことで最大の効果を得られるという。

そのため、海外から火がつき、日本でもスポーツ選手のトレーニングの他、最近は忙しい人が体力をつけるために取り入れやすい運動として耳にするようになった。しかし、非常にきつく、一般人は効果を得られるところまで追い込めないとも聞く。

スポーツ科学の研究者、田畑 泉さん(立命館大学スポーツ健康科学部教授)は、タバタトレーニングの名前の由来となった人物である。タバタトレーニングと自身の研究生活について話を聞いた。

【書影】1日4分 世界標準の科学的トレーニング

1日4分 世界標準の科学的トレーニング

世界中で通用する「TABATA・TRAINING」

――タバタトレーニングについて、簡単にご紹介いただけますか。

(田畑泉さん:以下、田畑):その人の最大酸素摂取量の170%の強度で20秒運動し10秒休む、それを8セット繰り返すというものです。もともとスピードスケートという非常にきつい競技のトレーニングとして考案されたものなので、非常にきついです。8回繰り返すといいましたが、6、7回でもう足が回らないようなトレーニングです。

これが本来のタバタトレーニングですが、一般の方たちが行う場合は、20秒間に行う動作の回数が、8セット繰り返すうちに減ってきてもいいといわれています。最近は60代の方でもやりたいという方がいますので、そういう方は運動の強度を低くしてやっていただければいいと思っています。

また、当初は自転車エルゴメーターなどを用いて、運動の強度を測定しながら行うものでしたが、機械を使わず自体重を用いた運動にすることで、コロナ禍において自宅でできる運動として広がりました。

20秒間に行う運動は大きな筋群を用いたダイナミックな運動が適していて、例えば腕立て伏せは適していません。腕の筋肉は脚の筋肉より小さいからです。できれば広いところを走り回るようなものがいいですが、他にもバービージャンプなどの様々な適した運動を本書に記載しました。

【写真】田畑さん『1日4分 世界標準の科学的トレーニング』には、様々な適した運動を記載しました」と語る田畑さん

「タバタトレーニング」の発祥

――「タバタトレーニング」は田畑先生が考案したものなのですか

田畑:このトレーニングは、今、高崎健康福祉大学の教授をされている入澤孝一先生がお考えになったものです。入澤先生がいくつか考えたトレーニングの中から、私たちは色々な実験をして、一番いいと分かったトレーニングが現在のタバタトレーニングです。なぜ田畑の名前がついたかというと、私が論文を書いて世界に発表したからです。

私は1983年から85年にノルウェーのオスロに留学していました。運動時の筋肉の代謝を調べるためには筋肉を採らなければいけないのですが、当時日本ではできなかった。そこで、スポーツ科学が発展していたノルウェーに留学しました。

入澤先生はもともと嬬恋高校のスピードスケートのコーチをしていて、オリンピック選手の指導もしていました。サラエボオリンピックが終わった1984年に、入澤先生はノルウェーにコーチ留学をされました。

ノルウェーで入澤先生と私は色々な話をして、入澤先生は私の筋肉を採る被験者にもなってくれました。一緒に日本のスピードスケートを強くしようということで、私は入澤先生が作ったチームに入ってお世話したんですね。

その時に、入澤先生から2つのトレーニング方法があるんだけれどもどっちがいいと思うと相談さたので、ちょうどノルウェーで習った手法を使ってトレーニングを分析して、どちらが効果的か明らかにしました。これがいわゆるタバタトレーニングになりました。

【写真】トレーニングを分析する中から、タバタトレーニングは生まれたノルウェーで得た方法でトレーニングを分析する中から、タバタトレーニングは生まれた photo by gettyimages

2つの顔を持つ「スポーツ健康科学」という分野

――現在田畑先生は、立命館大学スポーツ健康科学部の教授でいらっしゃいます。ここではどのようなことを研究されているのですか。

田畑:スポーツ健康科学部は、スポーツ、運動、身体活動を増やすことによって健康になる、そのやり方や機序、メカニズムといったことを研究する学部です。身体活動というのは、身体を動かすすべてのことです。例えば、家の掃除をすることも身体活動になりますし、スポーツも身体活動の1つです。

私は厚生労働省の機関である国立健康・栄養研究所に14年半いました。ここでは、国民自らが自分の体を動かして、お金をかけないで、健康になるには何がいいか、それはウォーキングだということをやってきました。

また、スポーツの分野でも長く研究してきました。鹿屋体育大学につごう9年半所属して、スポーツ選手の競技力向上のためにはどんなトレーニングがいいのかということを研究してきました。

スポーツ健康科学部は、健康のためにウォーキングを進める顔と、スポーツ選手の競技力向上のためにトレーニングの研究をする顔と、2面の顔を持つ私のためにあるような学部なのです。

【写真】2つの顔がある「スポーツ健康科学」「健康のため」と、「競技力向上のため」という2つの顔がある photo by gettyimages

研究の手法としては、体内の化学反応を調べる生物学的な研究、バイオメカニクスといって動作を分析する研究、それからスポーツ栄養があります。

これらの研究を行うために、大学には様々な設備が入っています。筋トレルーム、MRI、キッチン、トレッドミルや自転車エルゴメーターといった様々な負荷をかける機械、メタボリックチャンバーといってそこに入ると時々のエネルギー消費が分かる機械、実験動物の飼育室と実験室などがあります。