シリーズ「世界の知性」に聞く第4回「日本よ、習近平に気をつけなさい」『ジャパンアズナンバーワン』著者エズラ・ヴォーゲル(ハーバード大名誉教授) (original) (raw)

取材/徳川家広

中国は覇権国家になりえるのか? アメリカのアジアでの外交戦略は? 激動する世界のなかで、日本はどう生き残るべきなのか? 政治、外交、そして経済。東アジア研究の世界的権威が語り尽くす。

中国は日本に学ぶべき

—習近平の中国を、どう見ていますか?

ヴォーゲル 私は、習近平のことを心配しています。政策面では、鄧小平が敷いた改革開放路線を踏襲する一方で、「七不講」(七つを論じてはならない)などと言い出した。人権とか特権資産階級など、使ってはいけない言葉を七つ決めるという、とんでもない言論統制です。これは危険な政策で、おかしい。

—習近平の中国が、民主化することは、あるのでしょうか?

ヴォーゲル ある程度までは、一生懸命にやろうとするでしょうが、難しい。国内で反対する人も多いです。

ただ、中国政府は最近までは言論統制が出来ていました。しかし、いまはインターネット時代で、通信技術が進歩したので、言論統制はどんどん難しくなっています。

—いまの習近平政権は親日的でないように見えます。

ヴォーゲル たしかに昔の鄧小平の時代は、日本と良い関係を作りたがっていたと思います。日本と文化交流もいろいろやって、日本の映画も随分と中国国内で公開を許しています。それから、日本の技術も、日本的経営も、当時の中国人はよく勉強しました。高速道路も日本を真似たし、何より新幹線まで真似しました。

でも、それは鄧小平が日本好きだったというのとは違うと思います。まず、当時の中国にはソ連の脅威があった。いっぽう、経済を良くして国民の生活を向上させるのには、軍事にあまりお金を使ってもいられない。それに、貿易もしたい。こういう計算が、間違いなくありました。

それで、対アメリカと同様、日本とも関係を良くしようと頑張った。鄧小平は外交では毛沢東と違って現実主義者でした。「海外に対しては、われわれは将来決して、他国を威嚇するような覇権主義的な態度で振る舞ってはいけない。そのような行為に出れば、他の国々が敵対して、中国で革命を起こそうとする」と警告しています。