「地学」と「地理」はどこが違うか 日本列島の激変を追いつつ考えた (original) (raw)

ブルーバックスの記念すべき通巻2000番を飾った名著『日本列島100万年史』の共著者・久保純子氏はかつて文系だった。では、いま久保氏が専門とする「地理学」は文系理系どちらなのか?

ブルーバックスと地理学に関係あり?

学生の頃、ブルーバックスといえば理科系の人の読み物で、かなりマニアックな科学の最先端の話が紹介されるものと(文科系の)筆者は思っていた。

というわけで、筆者自身あまり読んでいなくて、せいぜい「○○入門」とか「○○小事典」などを読んだ程度であった(講談社の皆様、すみません)。

筆者の専門は、と聞かれたときは「自然地理学・地形学」と言うことにしている。この「自然地理学」は地理学の一分野で、地理学は中学校では「社会科」に含まれ、高校では「地理歴史科」に含まれる。つまり、大化の改新やフランス革命ともいっしょの教科なのである。

いっぽう「地学」というと、高校では理科の一分野である地球科学を意味することが多い。

ただし、明治時代には地球科学と地理学はあまり厳然と区別されてはいなかった。現在も、大学では地理学専攻は理学部にあったり文学部にあったりする。

最近は改組でだいぶ変わったものの、地理学教室はながらく東北大や東大では理学部に、京大や広島大では文学部にあった。

私立大ではたぶん受験科目の関係から、地理学専攻は文系学部に多くみられる。とはいえ、多くの大学の地理学専攻では、「自然地理学」と「人文地理学」の両方が教えられているし、高校の「地理歴史科」の教員免許には、大学の自然地理学も必要な科目とされている。

つまり、地理学は自然科学と人文科学の両方にまたがる分野といえる。

「文学士」が「博士(理学)」になるまで

筆者の場合は私大文系の早稲田大学で地理学を専攻したのだが、自然地理学の大矢雅彦先生のゼミで平野の地形や災害について学んだ。

地理学はおもしろいと思ったものの、当時は早稲田大学に地理の大学院がなかったので、東京都立大学(現・首都大学東京)の大学院に進学した。「地理学専攻」ではあったが、そこは理学部であった。

私大文系出身者には、理系の大学院はカルチャーショックの連続で、教員も院生も白衣を着て歩き回っているし、院生室では各人一つずつ机がもらえて、炊事もできれば泊まり込みもできた。

大学院のゼミの教授は貝塚爽平先生と町田洋先生で、ここで平野の地形を「第四紀」という地球の歴史の最新の時代のなかで学ぶことができた。

共著者の首都大学東京の山崎晴雄先生も東京都立大学出身で、ブルーバックス執筆のおさそいをいただいたのは、もう7年以上も前だったと思う。そのときは、ははあ、○○学会編の「○○入門」みたいなものかなと思った記憶がある。

それなら専門の方々をそろえて分担を考えて……と、構想だけはどんどんふくらんでいった。