今時の若者は知らない…名脇役・加藤嘉「狂気の演技」をご存じですか (original) (raw)

病人のように痩せこけた顔、骨ばった身体、そしてギラリと光る黒目の大きな瞳――。昭和期、‟老け役”として様々な作品で強烈なアクセントの役割を果たしてきた俳優がいる。加藤嘉だ。

75歳でこの世を去るまで、出演映画総数は実に360本を超え、その大半が老人役だった。それも好々爺のような明るい人物ではなく、むしろ理不尽な物語を背負う者でこそ、その真価は発揮された。

映画『砂の器』

加藤を知る映画ファンなら誰もが代表作として挙げる、1974年公開の『砂の器』(松竹)もその1つ。天才音楽家、本浦秀夫の父・千代吉を演じると、親子が日本各地を放浪するシーンは映画屈指の名場面として語り継がれるように。千代吉の「そんな人しらねぇっ!」のセリフも有名だ。

「狂気」とも言える加藤の名演技。その裏側には何があったのか。『砂の器』で少年時代の本浦秀夫を演じた元子役、春田和秀さんが明かしてくれた。

今になって過去を語り始めた理由

僕は、少し前まで子役時代の思い出を封印しているところがありまして……。映画にまつわる記憶は消そうとしていた時期があったんです。しかし、「やりっぱなし」という状況が自分の心の中につっかえていて、映画ファンや関係者の方々に申し訳ない思いもありました。

そんな折、『「昭和」の子役:もうひとつの日本映画史』(樋口尚文著)という本でインタビューをしたいとお声掛けいただいて、子供だった僕が経験してきたことをすべてお話しようという気持ちになったんです。それが、映画業界への恩返しになればいいな、と。

今回は、『砂の器』と、僕の父親役を演じた加藤嘉さんとの思い出をお話します。