ものかきの繰り言2024 (original) (raw)

仮面ライダーガヴ』感想・第6話

◆第6話「変身はビターチョコ」◆ (監督:諸田敏 脚本:香村純子)
グミの戦士と言葉をかわし、喜び勇んで塩谷ジャーナリスト事務所に出勤する絆斗だが、師匠は不在……
「……そうだ師匠張り込み行ってんだ……やっべ、徹夜させちゃったかな」
と気遣う台詞に続けて、電話が繋がらずに張り込み先に向かうと、「張り込むとしたら……」と即座にトレースして薫陶を示す事で師弟関係を鮮やかに見せていき、そこで絆斗が見つけたのは地面に散らばった師匠の荷物と、ぐるっとベロに撒かれた師匠のプレート…………わ・れ・て・る。
「し、師匠……?」
今回の話を動かす小道具に使うのかとばかり思っていたら、アバンタイトルの時点で既に割れている衝撃の展開で、絆斗は「割れるとその人死んじゃう」の言葉を思い出し……物語としては、“知りすぎた(近づきすぎた)男”の死体が上がるパターンなのですが、実際の死体が転がっているよりも、二重の意味で“物”と化したプレートが転がっているだけなのが、人の尊厳の剥奪としては、これはこれでよりえぐみを持って突き刺さります。
「…………信じねぇぞ。…………信じねぇぞぉ!!」
絆斗はプレートを手に駆け出し…………その気になると、この先ずっと、師匠プレートをポケットに入れたまま行動できるのが、凄くヤバい。
その頃、はぴぱれ事務所に定住の地を得たショウマは、さっそく朝からお菓子を頬張り、眷属を増産。
手持ちの若い衆を整列させると、街にパトロールに出て異変を察知したら報告するように指示を出し……これまでのスパイ活動を布石として、マスコットキャラでもある眷属軍団の日常での役割として、少年ライダー隊の位置づけにするというのは、成る程(初代は通して見ていないのでわかりませんが、少なくとも『V3』における少年ライダー隊は、立花藤兵衛を首魁としたFBI仕込みの全国的諜報組織)。
つまり……
「本日から貴様らはショウマの眷属である。兄弟の絆に結ばれる貴様らのくたばるその日まで、どこにいようと眷属ライダー隊は貴様らの兄弟だ。多くはストマック社の調査へ向かう。ある者は二度と戻らない。だが肝に銘じておけ。眷属は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが仮面ライダーは永遠である。つまり―――貴様らも永遠である!」
「「「ガンホーガンホーガンホー!」」」
であり、50年の時を超えてここが繋がってくるとは思いもよらず(笑)
出動の遅れた一部の眷属は、机の上で死んだふりしていたところを幸果に見つかると「ゴチゾー」と名付けられ、主であるヒーローより先に、配下である若い衆が命名を受ける予想外の展開。
一方、酸賀の研究所に駆け込んだ絆斗は、師匠の蘇生が絶望的と告げられるとがっくりと座り込み、その虚ろな失意の暗闇に、スルリと潜り込もうとする言葉。
「復讐……したい?」
囁く蛇は、こんなタイミングで丁度良く完成したばかりの対グラニュート用装備を手にするが、それを使う為にはグラニュートに匹敵する力を宿す必要があり、体内にグラニュート特有の体液を生成する器官を埋め込まなくてはならない。
復讐やめますか?
それとも
人間やめますか?
の二枚のプレートが絆斗の目前にぶら下げられると、明らかに人の規範も倫理も飛び越えた人外の果実を目前に突きつけられ、復讐の二段階ブーストからストレートな改造手術へと接続。
昭和ライダーにおいては、復讐心からの改造志願といえば『V3』と『ストロンガー』ですが、ここまでの流れを見れば、ここにもまた本歌取りの意識が窺えて、どこまでをレンジに入れているのかは見当つきませんが、今作はなんというか2024年の“仮面ライダー”…………いうなれば、『仮面ライダー(令和)』となりうるものを目指そうとしているような印象。
「そんなもん体に入れて平気なのかよ?!」
「――わからない。俺はまだ、ためしたことが~ないからね~」
「……あんた、俺を実験台にしたいんだ?」
感情の爆発から一旦足を止めて、その場で疑念を指摘させるのは実に香村脚本で、2010年代以降の作品でも割と、え、そこ流すの?? が気になる方としてはこの、キャラクターは「疑問を持つ」し「判断をする」し、それを「言葉にも出す」事からできる限り逃げない――「逃げない」のを前提として話を組む手間をかける――のは、香村脚本の光る長所にして個人的にしっくりと来て見やすいところです。
「……君は、グラニュートに復讐したい。俺はグラニュート退治の技術を開発したい。WIN-WINだと思うけど?」
「ふっざけんな!」
酸賀の元を飛び出した絆斗はベンチに座り込み、母が怪物にさらわれ、祖母が死に、荒れていた頃に塩谷に世話になり、今の道に進む事になった過去を思い出し、回想シーンの師匠が大変いい表情で、本当に惜しい人をベキィッされてしまいました。
……代わりに穴を埋めるのが酸賀というのが酷い、酷すぎる(笑)
「…………いや、やっぱ無理だ……」
雨に打たれながら絆斗が師匠プレートを握りしめていた頃、一日の業務を終えたショウマは、助けてくれたお礼として

ドラム缶に満たしたガソリン

お菓子を手にデンテの元を訪問。
今後、不確かな自身の力を使いこなしていく為にもとブレーンとしてデンテを自陣営に引き込み、ここまでストレートに協力を持ちかけるのは予想外でしたが、ショウマの行動原理はあくまでも、
〔人間(界)を守る > ストマック社への復讐〕
であり、その為に使える物は使う(既に“赤ガヴ”がそうであるといえますし)姿勢を明確にすると共に、グラニュートに対する「どうする?」の問いかけはショウマの本心であり、闇菓子との関わりを断つならば命まで取る気は無いと、実際の行動として示す形に。
また、前回におけるデンテの全裸(すなわち社会的立場から離脱している)発言も、説得力の補強として細かく効いています。
「……ま、ええか。お菓子の為じゃ」
……それはそれとしてショウマ、賄賂で裏切る奴は、賄賂で裏切るからな!
そしてその人に関しては、賄賂の多寡と関係なく、知的好奇心で裏切るからな!!
「おまえさん、案外したたかじゃな」
「強くならないとね」
ショウマが得ようとする“幸せを守る為の力”とは、戦いでの強さばかりではなく、周辺環境を整える立ち回りも含めてのものだと人間界で急速にレベルが上昇していく一方、絆斗は再び酸賀の元へ。
「おっかえりー。答は決まったかな~?」
「……好きにしろよ。この先なにがあろうが、師匠の仇だけは意地でもぶっ倒してやる!」
一旦、時間をとっての「…………いや、やっぱ無理だ……」は、“人間をやめるのが無理”ではなく、“師匠の復讐をしないのが無理”だと繋がり、タイムリミットを設定して崖っぷちで決断を促すパターンもありますが、自分自身に問いかける時間を作った上での決断の形で、絆斗の情念を強調。
「デンテの資料によると、改造は失敗だったらしいけど……生体実験てのはこれだから面白い。フフ」
ストマック社では、メガネ兄さん・ニエルブが赤ガヴ資料映像を目にしており、ヤクザ兄さんに怒られたくない双子から赤ガヴ対策を頼まれるが、それを拒絶。
「僕は、あいつに興味があるから。人間を圧縮する技術、人間に化ける技術の次は、何が開発できるかなぁ」
スパイス集めの妨害阻止よりも、技術的興味を優先するニエルブの手には……か、下半身持ってる……。
酸賀が、かるーい調子で絆斗の改造手術を始める一方、眷属ライダー隊が塩谷の仇でもある大道芸人ラニュートを発見し、手品に見せかけた人体消失カーボンフリーズから間一髪で女性を救ったショウマが、誤解を受けて女性の恋人に掴みかかられるのは、人助けの善意が伝わるとは限らない今作の方向性を手抜かり無く示して、細かく良かったところ。
思わぬ闖入者にパニック状態で逃げた大道芸人がキノコグラニュートの正体を現すと、ショウマもミートグミ。
「おまえ?! 噂の赤ガヴだな!」
「……どうする? 二度と闇菓子に関わらないか、それとも俺に倒されるか!」
「う、うるせぇ! おまえの命を手土産にしてやるぅぅ!」
三下属性高めのキノコに対し、優勢に戦いを進めるグミの戦士だが、頭部の粘液で必殺の踏みつけを無効化されると、ナメコ煙幕を受けて逃げられてしまう失態。
だが逃げたキノコは不意の銃撃を受け、そこに姿を見せたのは、改造手術明けで包帯姿も痛々しい辛木田絆斗。
「これは……おまえの仕業か」
「あ~~……そうだ。それがどうした?」
「……話は終わりだ。…………ぶっ倒す!」
絆斗が師匠プレートを突きつけると、2月2日、塩谷壮士という男を殺したのは貴様だな?! は一発で終了し、絆斗は酸賀が拉致っていたショウマの眷属を、銃型のデバイスへとセット。
「力を貸せぇ!」
一応前回、絆斗が別の眷属と接触しているので、意志あるらしいものとして言葉をかけているのは、好感度にも関係して巧いところ(とはいえ今作の世界観だと、消耗品ぽくはありますが……)。
「変身!!」
絆斗がデバイスを叩きつけると、地面に広がった漆黒の染みが絆斗の体を包み込んで仮面の戦士へと変貌させ……スーパーヒーロータイムの遠目の映像ではハイチュウ(ソフトキャンディ)のように見えていたのですが、ホワイトの部分で目を表現した2色の板チョコ装甲を纏う形となって、そのボディを染め上げる、復讐の色は赫――。
体力の消耗が激しい上に武器を使い慣れない板チョコの戦士は、射撃を行うも照準が全く定まらないが、先程から状況に狼狽し続けるキノコグラニュートが余裕を見せて足を止めると、だったら殴る!! と直接打撃。
その後も、当てられないなら当たる距離で撃つ!! と至近距離での発砲を繰り返し、射撃系ライダーとしてはかなり珍しいデビュー戦となりました。
「師匠の……仇だ!」
キノコの反撃を受けながらも、チョコの戦士は執念で体を動かし、そんな頭に、Chocolate、と書いてあるのが複雑な気分になります。
「ほほほほっ、頑張るねぇ」
そしてそれを撮影し続ける酸賀は、本当に最低な感じだった。
塩谷との回想によって、殴り合いの喧嘩ぐらいはした事があると補強した上で、万全では無い体調と慣れない武器と力を使いこなせないチョコの戦士が、ひたすら泥臭く戦い続けた末に、自ら足場を崩す事で懐へと転がってきたキノコに連続射撃を撃ち込むのは秀逸な殺陣で、足掻いて足掻いて足掻き抜いた復讐の戦士は、空中へと打ち上げたキノコめがけて、チャージしたチョコボールをシュートする事で、必殺コーティング。
ジーザーース!!」
「それが俺の名だ。地獄に堕ちても忘れるな」
……すみません、いつもの発作です。
「赤ガヴの他にも邪魔者が居るなんて、聞いてねぇぞ……ぉ」
「だろうな。生まれたてだ」
落下してきたキノコグラニュートはチョコ毒殺され(BC兵器の類に見えて仕方ない……)、大爆死。
この光景を目にして戸惑うグミの戦士だが、観戦していた酸賀が背後で眷属ライダー隊の数名をさらっていくと、それを追いかけるような追いかけないような素振りを見せ、チョコの戦士と酸賀いずれとも明確に接触させたくない都合により、曖昧な描写で誤魔化す形になってしまったのは、画竜点睛を欠く事になり勿体なかったところ。
「ごめん師匠……俺、もう後戻りできねぇわ。このまま行くから……見守ってて下さい」
復讐の為、人の世の理の外へはみ出す存在となる事を選んだチョコの戦士は師匠プレートを握りしめ、それを見下ろす、メガネ、が、結構多いな……!(ゆえに一人、減りました)
「フフフ、面白くなってきた……刺激って大事だよね」
ニエルブがリアル糸目をカッと開くのが効果的になって、つづく。
絆斗はいずれ、塩谷の始末を命じた赤いエージェントの主に辿り着くのでしょうが……それがニエルブであった場合、「君の持っているそのプレートと、僕の持っているこのプレートがァ、二つ合わせてほーらピッタリ! 瞬間接着剤で元に戻るかな? 実験してみるかい? フフフフフフ……!」とか、地獄のような展開しか思い浮かばなくて困ります。
かくして、復讐を背負った2号ライダー(設定名:ヴァレン)の投入と相成りましたが、研究成果の撮影にはしゃぐ酸賀さんは、嬉々としてヒーローネームの発表とかしてくれて良かったんですよ?!
仮面ライダーが二人に増えても一向に固有ヒーロー名を付ける気配がなくて困ってきましたが……逆に考えると、似たようなのの二人目が出てきた事で、今後『ガヴ』世界の住人に呼び分けの必要が生じる事を期待しても良さそうでしょうか。
片方、頭にChocolateって書いてあるしまだバイクにも乗っていないので、仮面チョコダーとか呼ばれてしまうかもですが!
……ここまでの絆斗、基本は自転車移動のようですが、バイクの免許は持っているのかどうなのか。
或いは酸賀が、グラニュート器官を内臓して脱炭素社会な電動自転車を提供してくれるのか。
昭和ライダー》を中心に、シリーズへの本歌取りが多く見受けられる今作ですが、二人の仮面ライダーの背後に二人のマッドサイエンティストがそれぞれ居るのは、《平成》以後を見渡しても、“新しい”構図を打ち出してきた気がします(笑)
それから、凄くどうでもいいこじつけに気付いたのですが、タイトルによると、「ガヴ」の英字表記は「GAVV」、つまり、腹に輝くVとV…………すなわちガヴとは、GODの! なんかAな! X! を意味する事となり、神啓太郎はゴッド機関の壊滅後、グラニュート界に流れ着いていたのかもしれません。
……という与太はさておき、最後の戦闘シーンの泥臭さも含め、今回に関しては復讐を動力とする2号ライダー誕生編として重苦しさが勝る内容だったので、次回以降はまた、たとえ背負っているものは残酷でも、幸せをもたらし守ろうとする者を中心とした、ヒーローアクションとしての前向きなカタルシスを期待したいところ。
今回、デンテへの対応をもって改めて、“ストマック一族への復讐”はショウマの最優先目標ではない事を示した一方、師匠の直接的な仇は取ったとはいえ、母親の件もあって絆斗にはグラニュート界への憎しみがあると思われるので(酸賀も適宜、油を注ぎそうですし)、その両者がどう交錯していくのかは、非常に楽しみです。
“復讐”をテーマに据えた作品では、『闇のイージス』と『星獣戦隊ギンガマン』が個人的な二大巨頭なのですが、その二文字に囚われようとしない主人公も合わせて“復讐”を真っ正面から主題の一つに据えてきた今作(とはいえ前回時点で、ショウマから父親への憤りの感情は示しているのがまた巧妙)、先達の作品に負けず劣らずのものを見せてほしいと期待。
次回からは新たな人間関係も構築されていきそうですが――ひとまず不可侵協定?

本日は『牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想を書きました。
室温が、寒くて暑くて寒くて寒い。

電子戦隊もそろそろ終盤戦

◆電子レンジマンさん
>ドラマパートは序盤を過ぎてからわりと低空飛行気味な本作の中でもキツいノリの回2本でした。
曽田さんはここまで、そこそこのアベレージを見せていましたが、急にガソリン切れたみたいな2本でしたね。
>機織り回はゲストの匙加減を完全にミスっている内容
次回の犬の扱いと同様、こちらも時代感覚の違いもあったのかもですが、今見ると完全にアウトでだいぶ厳しかったですよね……。目が、血走りすぎて。
>「子供は犬が好きだから犬を長めに出せば喜ぶに違いない」以上のことはなかった
犬の撮影は、うまく尺を稼げたのか、かえって手間だったのか、アイシーの意味はいったい……とか色々と考えてしまいましたが、内容に特に面白みが無い上で、現代的感覚とは正面衝突してしまうのは見方に難しさがありましたね。

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第17話

◆第17話「少年」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:雨宮慶太/江良至)
その日は、雷牙の誕生日――
「誕生日には必ずケーキを。雷牙様のお母様とかわした、約束でございます」
冴島邸にはあまり似合わない巨大なホールのショートケーキが出てきて何事かと思ったら、それはゴンザが守り続けている“約束”なのが冒頭から染みると共に、このエピソードを貫くキーワードになっているのが、さすがの巧みさ。
ソファに座り眠る雷牙は、少年時代、厳しい修行の日々の中で一人の魔戒法師に出会った過去を思い出し、クレジットによると「アカリ」との事で、エピソード内容と使われ方からするとシリーズ過去作のキャラクターかと思われますが(※特に過去作のキャラではないとの事!)、わからず。
法師から怪我の手当てを受けた雷牙は屋敷に戻ると、ゴンザが誕生日ケーキを思案中。
「ケーキはいいよ」
「いけません。お母様に叱られます」
「居ない人間がどうやって叱るんだよッ」
珍しく厳しい表情を見せるゴンザ(“約束”の重みを表現)に対し、さすがに少年期の雷牙はそれなりの屈折を抱えていたところを見せ、その日の真夜中、“約束”を果たす為に雷牙の前に現れたのは、顎髭の伸びた魔戒騎士――涼邑零。
魔導輪の折笠愛さんもオリジナルキャストで喋るちょっとした贅沢で、初代から懐かしのセクハラ王子(※卒業)が登場し、思えば10年前なら、クロウも腹黒セクハラ王子枠にされていたに違いありません。
まあ個人的に、雷牙には腹黒毒舌枠を感じているのですが、師匠の薫陶の賜物でありましょうか(笑)
屋敷を連れ出された少年雷牙は、「今からおまえの力を確かめる」と言われたので、先制のいきなりクリムゾンスマッシュを放ち、零がおもわずたじろぐと、即座に関節を攻めにいくのが凄く雷牙で、この時点では師匠は居なかったとの事ですが、戸隠流の通信教育でも受けていたのでしょうか。
「来い。俺を倒してみろ」
しばらく格闘戦が続いて零がペースを奪い返すと、雷牙は剣を引き抜いて斬りかかり、体格差の大きい戦いながら、ステゴロ→剣、と段階を踏んでバリエーションをしっかり描いてくるのは、実に《牙狼》。
零の二刀流に翻弄されながらも食らいついた雷牙は、相討ちの形で一本を取ってみせ、テストは合格。
「今からおまえをホラー狩りに連れて行く」
零と雷牙は夜の街に繰り出し、少年雷牙がショーウィンドウにかぶりつくのは、初代の第12話(鋼牙父の登場エピソード)のセルフオマージュでありましょうか。少年鋼牙の行動は覚えていないのですが、似たようなシチュエーションがあった覚え。
雷牙は零の出した課題に対し、優れた判断力で一発解答する非凡さを見せると、廃校舎(雷牙には“存在しない世界”のイメージでもありましょうか)でホラーと激突し、お父さんと同じ苦手を作らない為に、雷牙のデビュー戦の相手は、女性型ホラーだった!! という、衝撃の真相(笑)
騎士未満の少年ながらも奮闘する雷牙は、鉄パイプを拾って即興で二刀流を模倣する戦士の天稟も見せ、柔軟さや格闘センスの高さよりも何よりも、見た目は人間の女に鉄パイプを躊躇無く叩きつけられるのがだいぶキまっています。
雷牙が力任せに首を締め上げられたところで零が選手交代し、戦いの中で“ホラーとは何か”を徹底的に突きつける零に対して、少年雷牙が決してそこから目を逸らさない描写が、今回の白眉。
「これがホラーだ! そしてホラーを倒せるのは! ――魔戒騎士だけだ!」
魔戒騎士が行く道であり背負うものとして、ホラーを切り裂く血風も徹底して描写されると、鎧を召喚した零は、銀色の騎士となって圧倒的な力でホラーを滅殺。
そして、光と闇の狭間で決断を迫られた雷牙は、己の進みゆく道を選ぶ。
「俺は……俺は魔戒騎士になります!」
「……じゃあ今からおまえは俺の弟子だ」
キャラクターのポイントとして重視したのでしょうが零はニッコリと笑みを浮かべ、本格的な魔戒騎士としての道を歩み始める事になった雷牙は、冒頭の魔戒法師と再会。
「あなたは…………きっと誰よりも、優しい魔戒騎士になるわ」
雷牙は手当てのお礼として、身につけていた鈴を改めて贈り、こちらはキャラの背景を知らないので、やり取りの意味はわかりませんでしたが、零×雷牙だけだと、魔戒騎士標準みたいなところはあるにしても、血で血を洗うスパルタ冥府魔道、雷牙、あれがガロの星だ! の印象ばかりが強くなるので、後の雷牙を形成する“優しさ”をイメージさせるキャラとの縁が描かれたのは、車の両輪を示す形になって良かったです。
法師に笑顔を向けた雷牙が屋敷に戻ると、零は鋼牙に頼まれて「10歳になったら雷牙に修業をつける」と“約束”していた事を明かし、自身の経験を踏まえていたとは思われるも、うちの子は大体10歳ぐらいから修業を始めて大丈夫な気がする、のが凄く鋼牙ですが、デビュー戦の相手に女性型ホラーを選んだのは、零の素晴らしい判断だったとヒビキさんもサムズアップを送っています。
「ゴンザ。……こいつの修業が終わったら旅に出る」
「…………それでは……」
「ああ。しばらくお別れだ。……心配するな。必ずみんなで帰ってくるさ」
“みんな”の文言からすると、鋼牙の後を追い、零もまた超次元変態クエストに出るニュアンスでありましょうか。
かくして、少年雷牙、旅立ちの日の記憶が綴られて、10歳の誕生日と現在の誕生日が映像で重ねられ、現在時制の画面左端に腕組みしたクロウが立っているせいで、
僕は、今、推しの誕生パーティに出席している……!
が、個人的にちょっと面白くなってしまってすみません。
最後は、雷牙の笑顔から、カオルの絵(確か)のアップになって、つづく。
過去シリーズの登場キャラクターをスペシャルゲストに迎えて、魔戒騎士・冴島雷牙の出自が劇中で明らかにされ、さすがに今回は過去シリーズを見ていないとわかりにくい内容でしたが、それもあってか、恐らく今回を見なくても『-魔戒ノ花-』の物語は成立する特別編、といった雰囲気の作り。
いうなればボーナストラック、といった様子の一本でしたが、誕生日のケーキも、修業の前の力試しも、“約束”とは、たとえ今この場に居なくても、確かに存在する人と人の“繋がり”なのだと置く事により、《牙狼》シリーズの中心的主題と重ね合わせながらヒーロー誕生エピソード0を描き、メタ的な視点も含めて、“ヒーローとは何か”を背骨に据え続けるのは、このシリーズの響くところです。
EDパートは、マユリの冴島邸絵本巡りとなって、次回――そろそろ黒幕現る?