nama 『いいご身分だな、俺にくれよ~転生幼少期編~』 (original) (raw)

いいご身分だな、俺にくれよ~転生幼少期編~【電子版限定書き下ろしSS付】 (マッグガーデン・ノベルズ)

一目惚れしたあの娘を手に入れるため、俺は異世界で成り上がる! 交通事故で死亡したかに思った高橋修だったが、目を覚ますとウェルロッド侯爵家の子どもであるアイザックとして転生していた。いじめてくる異母兄弟のネイサンがいるものの、両親や祖父母らから愛情を注がれ、アイザックはすくすくと成長していく。そんななか、祖父の仕事についていった折に出会ったパメラ・ウィンザーに一目惚れをする。しかし彼女は、すでに王子と婚約を結んでいた。失意の底にいたアイザックだが、「王族が邪魔なのであれば、自分が王になればいい!」と転生した世界での成り上がりを決意する。手始めに、ウェルロッド家の次期当主になるべく跡目争いの相手であるネイサンを蹴落とそうと、アイザックは動き出すのだった――。

小説家になろう』で長期に渡って連載中*1作品の書籍化となります。
『転生貴族は大志をいだく! 「いいご身分だな、俺にくれよ」』(web版)
実は2018年に書籍化しているんですよね。初期の頃から読み始めてファンになった私なので、もちろん購入して感想を書きました。
『転生貴族は大志をいだく! 「いいご身分だな、俺にくれよ」』
残念ながら書籍の続刊はなかったのですが、web版は幼少期から少年期、青年期へと順調に進んで人気を博しています。この作品の素晴らしいところは連載ペースもクオリティを下げることなく読者を楽しませてくれているんですよね。
6年の時を経て再び書籍化されたこと、同時にコミック化もされたことが喜ばしく、その人気ぶりが伺えます。
物語の設定やおおまかな展開は上述の記事に書いた通りなので簡潔に書きます。

ブラック企業で働いていた青年が事故死してしまい、ゲーム世界の登場人物に生まれ変わるという転生もの。
生前に妹が夢中になっていた女性向け恋愛シミュレーションゲームですが、使っていたのは主人公のPCなので、つい気になって攻略サイトを見ていたから知識があるという前提です。

生まれ変わったのは国内有数の貴族であるウェルロッド侯爵家の次男アイザック*2という恵まれた立場ではあるものの、母ルシアは第一夫人ながらも子爵家出身。兄ネイサンの母メリンダは第二夫人だが侯爵家出身という立場の違いが貴族社会ではかなり強い影響を及ぼしています。
父が優しい(悪くいえば優柔不断な)性格だったので、アイザックの将来は微妙です。跡継ぎを狙うネイサンとメリンダにとって歳の近いアイザックは邪魔者でしかない。最悪な場合、幼いうちに排除されるかもしれないと精神が大人のアイザックは危惧します。実際に成長すると、メリンダは歳の近い男の子を息子のそばにはべらしたので、アイザックの友人は女の子しかいない状況。母の影響でネイサンは露骨にアイザックを敵視しています。

また、王都で祖父に連れられてウインザー侯爵家を訪れた際に同い年の令嬢パメラを目にした途端、アイザックは一目惚れ。*3
しかし、パメラは生まれた時から王子と婚約しているという立場。祖父から直々に今後一切近づくなと厳命されてしまうのでした。
失意の底にあったアイザックですが諦めません。まずは自分の身の安全を図り、侯爵家当主の座を手に入れるために動き出すという展開です。

この作品の特徴は一つ一つのイベントや会話を省略することなく、過程が丁寧に書かれていることですね。それだけに主人公アイザックのみならず、家族や周りの人物の感情が伝わってきます。勘違いとか、クスっと笑える場面もあります。
転生前の知識があるとはいえ、アイザックは時に失敗をし、貴族の知識の無さや子供という立場の壁にぶつかるも、逆にそれを利用して乗り越えていくさまが丹念に描かれていて、応援したくなります。
そのあたりが書籍化に際して自然になるように追記されたかなと思います。
内容的にはアイザックが自分の力で資金を稼ぐのと父を騙した悪徳商人への仕返しのため、オークションを行うところ、その過程でエルフとの出会い*4があります。
1巻で充分まとまっており、Web版を知らなくても充分楽しめる内容ですね。
書籍版書きおろしとして、パメラとニコラ(ゲームのヒロイン)の立場から書かれています。最初の書籍とは違ったいますが、今回の方が原作の内容に沿っていたので個人的には良かったと思います。