横山信義 赤城シリーズ完結と新シリーズ開始! (original) (raw)

投稿するのが遅れてしまったので、今回は二冊同時投稿です。

横山信義 『高速戦艦「赤城」6-「赤城」永遠』

高速戦艦「赤城」6-「赤城」永遠 (C★NOVELS 55-132)

航空主兵主義を採用した連合艦隊による、大艦巨砲主義の米海軍撃退には限界が見えていた。米海軍の新鋭空母や新型戦闘機の登場は、連合艦隊航空優勢の維持を困難なものに変えつつある。
もはや日本に残された道はただひとつ。
かの日本海海戦に匹敵する大勝利をもって、米国を講和会議の場に引き出すのだ。
クェゼリンを奇襲し米本国からの増援を断ち切った上で、米太平洋艦隊の根拠地であるトラックへの攻撃を開始する連合艦隊は、航空基地に大打撃を与えて制空権を得たものの、かの「赤城」「長門」「陸奥」の三戦艦をたった一隻で圧倒してみせた世界最強戦艦「オレゴン」を中心とした米海軍主力艦隊は未だ健在である。
はたして、この最後の戦いに勝利を得て戦争終結への道筋をつけられるのか?

前巻でクェゼリンを奇襲し、米軍の増援を断つことに成功した四艦隊ですが、サイパンに帰還したところで太平洋艦隊から分派された機動部隊の襲撃を受けます。もちろん、サイパン駐留の戦闘機隊が迎撃に出ますが、そこで英国製エンジンを搭載した陸軍機「飛燕」が活躍します。
四艦隊は空母沈没こそなかったものの、爆撃の被害を受けてしまいます。その代わり、米機動部隊も反撃を受けて稼働空母が半減します。これが後々の決戦にどう響くか。

今度こそ米太平洋艦隊を撃滅し、日本海海戦に匹敵する大勝利をもって、米国を講和会議の場に引き出したい日本。すでに新鋭戦闘機と空母が配備されている以上、この機会を逃しては空戦の優位も失われてジリ貧になるとわかっているため、総力をもってトラック基地へと攻め込みます。
一方で稼働空母が減ったために対空的には不利になっても、巨大戦艦オレゴンを含む主力戦艦は健在で迎撃しようという米軍。
決戦が始まり、高い防空能力を持つ米軍の前に損害を出しながらも優位に進める日本軍ですが、主力を見誤ったためにオレゴンを残してしまいます。日本軍に残された戦艦は赤城の他、36cm主砲の金剛以下のみ。それでも水上砲戦を挑むオレゴンを迎え撃つしかないのでした。

真向勝負を挑んでも、スペック的には勝てない相手。ならば空海連携してなんとかしようというのがシリーズ最終決戦でも見られました。
大艦巨砲主義固執したまま太平洋戦争を継続するアメリカというのは面白い着眼点ですが、結局かの国は戦艦メイン、航空補助でも充分強いというのがわかったシリーズと言えましょうか。アメリカを弱くするには分裂させるくらいかないですよね。
そして終戦への流れは駆け足気味で、今までのシリーズと大差なく終わった感じです。他国を一切関わらせることなく日本とアメリカだけの戦いのため、世界的状況が大幅に変わっていてはずなんですがね。イギリスが強力な同盟相手ということ以外、あまり変わりなかったかな。まぁ、アメリカと比べるとヨーロッパの各国(ドイツ・ソ連以外)がどうなろうと世界的な趨勢に影響ないってことでしょうか。

横山信義 『機動部隊旗艦「大和」【鋼鉄の守護神】1』

機動部隊旗艦「大和」1 鋼鉄の守護神 (C★NOVELS)

昭和一七年五月、連合艦隊航空母艦を主力として米英の海軍を連破し、破竹の進撃を続けマレー、フィリピンの制圧に成功した。
次なる目標は、オーストラリア。
かの国を連合国から脱落させ、南太平洋における日本の覇権を確立する。そのためにはニューギニアの要衝ポート・モレスビーを奪取し、ここを拠点として豪州に圧力をかけるのである。
だが、米海軍も空母を前線に投入し、史上初となる空母対空母の対決――珊瑚海海戦が繰り広げられることに。
対決は日本側の敗退に終わり、戦略目標だったモレスビー攻略も頓挫してしまった。開戦以来無敵を誇ってきた機動部隊には、深刻な問題が隠されていたことが顕わになったのだ。しかし、航空母艦という艦種自体が抱える弱点を克服することは容易ではない。
事態を重く見た連合艦隊司令長官山本五十六は、誰もが驚愕する決断を下した――。

「『大和』は、帝国海軍の切り札です」
「だからこそ、機動部隊に配属するのだ」

今まで著者は日英同盟継続やアメリカが先制攻撃など、開戦までの世界観を変えて、史実とは展開の違う日米戦争を描いてきました。*1
本シリーズでは珍しく開戦序盤は史実に沿った展開で1942年5月の珊瑚海海戦まできます。
この海戦は史上初めて航空部隊同士が視認できない距離で、かつ航空機同士での戦いでした。それゆえに双方不手際があったわけですが、練度に勝る日本軍が戦術的な勝利を収めました。ポートモレスビー攻略を阻止したことで、アメリカ軍の戦略的勝利とも言えます。さらに日本軍は沈没確実とみなした空母ヨークタウンは帰還後に突貫修理を行い、ミッドウェー海戦に送りこめたことで米軍の勝利に貢献しました。

本作では途中までの経過は史実と同じものの、アメリカ軍はハルゼー率いる任務部隊を密かに投入。現地の日本軍は怪しげな無線を傍受したのですが、その報告は前線の部隊には届かず、翔鶴・瑞鶴を擁する第五航空艦隊は二隻の空母に損害を受けて敗退するという結果に終わり、そこから史実とは違う流れに持っていくようです。

この世界の連合艦隊としては初めて海戦で敗北。そのショックは大きく、GF首脳が集まった会議の場で今後どのようにすべきか話し合われます。敗因の一つとして情報伝達の不備や護衛の少なさがあげられました。
そこで山本五十六長官が出したのが大胆な改善策。すなわち双方を改善するには現GF旗艦たる戦艦大和を機動部隊に編入すること。
空母よりも戦艦の方がアンテナの位置が高くて受信に有利。かつ戦艦が加われば護衛問題も片付く。強い反対を押し切って、タイトル通りに大和が旗艦となるわけですね。

史実でも情報と護衛軽視が敗北を招いたのは確か。ミッドウェー海戦が起きる時期より先に改善されれば、この後の展開が変わるというもの。
さらにミッドウェー作戦自体は補給に難があることから中止。米豪遮断作戦を継続してソロモン諸島への進出が進められます。
それに対して米軍が先にガダルカナル島上陸と基地化を行うなど、地味ながらも史実とは流れが変わっていく形となります。
もっとも、大部分は変わっていないんですけどね。この先どういう展開が待っているのでしょうか。

*1:日米講和という結末はほぼ同じだけど。