給与収入を分解して眺めてみよう (original) (raw)
お金が貯まるか貯まらないか、漠然と悩んでいても始まらない。会社で経理を学んで何年か経過した後、ある出来事があってこのままの暮らしを続けていて大丈夫なんだろうかと不安になった経験がある。
その時の詳細は割愛するとして、当時EXCELでこんな表を作ってみた。実際の表はもう少しゴチャゴチャしていたが、本質的にはこれらの項目があれば足りると思う。
<我流のキャッシュフロー>
【註】金額は200x年当時の個人的なものをベースにしている。但し、分かりやすいように銀行振込をピッタリ500万円にして、その前後の数字も殆ど10万円単位に調整している。
名称は”我流キャッシュフロー”としてみた。4列あるが、普段意識しているのは緑色セルだけだろう。毎月の給与が振り込まれる25日くらいだろう。しかもそれは月額(2列目に1年分で表記)だ。給与所得者として自分の年収(1列目)を意識するのは、おそらく年末調整で源泉徴収票を見つけた時くらいだろう。
ここでは1,2列目ではなく、収入を3列目のように分解してみる。
会社が銀行振り込みしてくれた金額は概ね給与だ。稀に、定期券、健康保険給付金、立て替えていた交際費や交通費が混ざっているので注意しておこう。また、あまり意識する事がないのがグレイアウトした部分の金額だ。とにかく税金や社会保険として強制的に天引きされた金額はそれなりの比重を占めている。ここでは参考数値として年収660万円に対してザックリ160万円、24%に相当している。
次に、4列目で収入の行き先、使い道を細かく見てみよう。先ずは160万円にものぼる税金と社会保険料だ。この数字を見るだけで(相対的に)所得税が高いとは言えない。多くを天引きされているのは健康保険料と厚生年金保険料(+雇用保険料も僅かに)だ。尚、社会保険料は労使折半なので、これと同額を会社が負担している事も忘れてはいけない。
生活費は細かく家計簿を付けなくても総額で構わないだろう。毎月、現金の残高がどれくらい増減しているのか確認しておけば確かめる事もできる。例えば、
前月末:10万円
給与手取り:30万円
今月の貯蓄:3万円
今月末:11万円
今月の生活費:(10+30)―(3+11)=27万円
といった具合だ。
ここで、オレンジ色のセルを見てみよう。手取り金額(Netの世界)で眺めていると1年で40万円しか貯蓄できなかったように見える。でも総額(Grossの世界)で見ればDC(確定拠出年金)積立金は個人をスルーして拠出金に変わっている。ここはEETって表現がある通り、拠出時も運用時も非課税で60才(今後は65才)まで運用できる。また、持株会(人によっては財形貯蓄もあるだろう)で強制貯蓄しているものもある。なので、それなりに貯蓄できているとポジティブに考える事もできる。
もっと楽観的に、厚生年金保険料も貯蓄しているんだとみなしてしまえば気がラクだ。勿論、DCも厚生年金も遠い未来まで使うことは叶わないけど。ここまで行くと年金2000万円問題もだんだん影が薄くなってくる。
私の場合はたまたま俯瞰で見なくてはいられない事情があって、こうしたEXCEL表を作ってみた。もしかして会社を辞めなくてはいけないかも、と不安に駆られたのがこの年だった。でも簡単な試算をしてみることで、まあなんとかなるでしょう、と不安な気持ちは幾分でも解消した。
なんとなく分かっているつもりでもボンヤリした内容はこうして可視化してみる事をオススメする。
ちなみにいざこの表を作ってみるとタテ計が合わない。税金も社会保険料も年額で把握しないといけない。ただ、月によって増減があるので概算で把握する方が手っ取り早い。ここでは正確な表を作るのが目的ではなく、あくまで傾向を把握できれば十分なので、アンバランスであればどこかに調整行を1つ加えてバランスさせてしまえばそれで構わない。
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それと、岸田政権が軍事費や少子化対策を拡充しようとする2023年においては、それら予算増額の財資をどこに求めるかも気になる所だ。個人の年間キャッシュフローを眺めてみると、増税も困るけどあまり抵抗感がなさそうな社会保険料の料率アップもサラリーマンには十分に影響するものだと分かる。
その後、都合により一時期サラリーマンを辞める事になった。辞めた当初はかなり不安だったが、1年経過してこれと同等の表を作ってみると驚いた事もある。辞めた直後は前年度の住民税負荷と健康保険料の任意継続でそれなりの出費が嵩んで焦った。それが2年目以降になると収入は大きく減少したけど、同時に税金や社会保険料もストンと落ちた。確定申告などの制度で求められる知識も変わってくるし、1つのパラダイム・シフトだったのだと気付いた。それそれの立場で全く別の景色が見えるのだと分かったのだ。
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本日は総じて明るく書いてみた。どのように家計のキャッシュフローを把握しておくといいのか、改めて細かい部分を書いてみたい。
※2023.7初旬:追記――――――
たまにTVから五公五民ってワードが聞こえてくる。はて、一般サラリーマンにとってホントにそんな厳しい現実に陥っているのか。念のため、上図に掲げた200x年の個人的なグロス給与と手取り給与、そんな数字で確かめておこう。
分母になるのは非課税分の収入を除いた660万円。公的に徴収された分子に数えるものは所得税30+住民税40+社会保険90で計160万。他に消費税を加算する必要がある。この年の支出が465万円となっているが、家賃は非課税でその他にも消費税と関係ないものが混じっているので、ここではザックリ課税対象を400万と仮置きして当時の消費税率8%で逆算すると、消費税額は約29.6万円になる。ここでは簡略化のため30万円で話を進めたい。
よって、公に納める分子は160万+30万=190万円。それを660万で割るとお国に収入の28.7%を納めていた事になる。200x年当時、私のような庶民は三公七民でまだマシだったと判断してよさそうだ。もちろん現在では消費税も10%にアップしており、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)もジリジリと上昇してきているので油断はできないのだ。
※2023.7中旬:追記――――――
改めてネット記事を読むと、五公五民の議論にはミスリードもありそう。一旦この記事はこのままにしておき、改めて別の記事を作成するつもり。