ふしぎな法律用語 その2 果実 (original) (raw)

みなさんこんにちは、ひでえぬです。

行政書士の勉強をしていると、いろいろな用語が出てきます。

ここでは、試験の頻出度とかを一切無視して、単に私が「おもしろい」と思った言葉について取り上げます。

今回は、民法の用語の中から、「果実」についてお伝えします。

「果実」を辞書で引いてみると・・・。

果実(かじつ、英: fruit)とは、雌しべの子房およびそれに付随する構造が成熟したものであり、内部には種子が含まれる。果実は基本的に内部の種子を保護し、またしばしば効率的な種子散布のための構造・機構をもつ。果実において、子房壁に由来する部分は果皮とよばれる。
ウィキペディアより引用)

ja.wikipedia.org

文章だとわかりづらいですが、要するにこんな感じのやつですね。

ところが、民法でいう「果実」は、ちょっと違ってきます。

第八十八条 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。

2 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

ちなみに、「物」は、「もの」ではなく「ぶつ」と読みます。

ブツといっても、あの白い粉のことではありません。

民法の表現がちょっと硬いので、言い換えると、「物から生じる利益」(武川、2022)のことです。

で、利益を生み出すものを「元物(げんぶつ)」といい、生じた利益を「果実」というわけです。

先ほどのリンゴの木の例ですと、こうなります。

リンゴの木から自然にリンゴがなった場合、このリンゴのことを「天然果実」といいます。これはわかりやすいですね。

「物」というのは、樹木に限らず、「有体物」一般をさします(民法85条)ので、動物も果実を生み出します。

たとえば、「牛」が元物で、「牛乳」が果実ということになります。

牛乳なのに果実になっちゃうんですね。(実はこれが言いたかった)

ニワトリの卵も果実です。

牛乳や卵は動産(動物は民法上「動産」となります。)の果実、リンゴやお米などは土地からとれるから土地の果実といいます。

土地や建物などの不動産に関しては、人に貸して得られる「賃料」も立派な果実です。

このように、物の使用の対価として得られるものを「法定果実」といいます。不動産(土地・建物)が元物で、賃料が果実というわけですね。

ちなみに、「果実」の所有者は誰になるのでしょうか。

天然果実の場合、「リンゴの木(元物)からなるんだから元物の所有者に決まってんじゃん」と考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。

もしそうだとすると、土地を借りて耕作している人は、作物を全く得られないことになります。

民法89条によると、

(果実の帰属)

第八十九条 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。

法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

元物から分離」というと大げさですが、ようするに収穫するときですね。

問題は、「収取する権利を有する者」というのが誰なんだということになりますが、

「収取する権利を有する者」(収取権者)は物権法その他の規定によって定まる[4]。善意の占有者(189条1項)、所有者(206条)、地上権者(265条)、永小作権者(270条)、不動産質権者(356条)などである。

ウィキペディアより引用)

ja.wikipedia.org

つまり法律によって決まるということですね。

まあ民法で決まってるんだから、当たり前っちゃ当たり前ですね。

法定果実は、もともと法律によって決まっている果実なので、誰のものかということについても、法律によって決まります。

今回は、法律用語の中から、「果実」についてお伝えしました。

実は、「善意と悪意」を書いた時点で「果実」も書くつもりだったのですが、これ以降のアイデアが全くありません。

よって、次回があるかどうか微妙です。

では、また。

(参考文献 武川幸嗣「民法放送大学教育振興会、2022年)