市街化調整区域でも建築可能な【自己用住宅・既存宅地・農家住宅】 (original) (raw)
市街化調整区域でも建築可能な【自己用住宅・既存宅地・農家住宅】
2020年11月28日 2021年2月15日
市街化調整区域に建物を建築する場合に、厳格な要件が定められています。
都市計画法では、第34条に市街化調整区域に建物を建てられる場合の、立地基準を定めています。
建物建築の代表的な許可基準は、分家住宅です。
「農家の二・三男が分家する場合の住宅等」については、別のページで解説していますので、詳細については、こちらをご覧ください。
分家住宅の他に、市街化調整区域で建築が可能となる事例を御紹介します。
既存集落内のやむを得ない自己用住宅
開発審査会基準第7号
「既存集落内のやむを得ない自己用住宅」
この基準は、前回ご説明しました、都市計画法第34条第1号の「農家の二・三男が分家する場合の住宅等」と近いのですが、要件が異なります。
第7号の許可基準には、本家が必要ありません。
つまり「分家住宅」に必要な、本家がなくても、要件を満たせば、市街化調整区域内に住宅の建築ができます。
「分家住宅」に「一般分家」と「大規模分家」といった2つの基準があったように、「やむを得ない自己用住宅」にも次の2つがあります。
- 一般やむを得ない自己用住宅
- 大規模やむを得ない自己用住宅
どちらの基準も、敷地面積が500㎡以下である必要があります。
1の「一般やむを得ない自己用住宅」は、線引き前の市街化調整区域になる前から、申請者本人が所有している土地であることが必要です。
また、以下の場合も「一般やむを得ない自己用住宅」の要件に当てはまります。
- 線引き前の所有者から、線引き後に相続で取得した土地
- 線引き前所有者から、相続人の立場で線引き後に贈与で取得した土地
建物を建築しようとする土地は、50戸以上の建物が55m以内の間隔で、連たんしている必要があります。
2の「大規模やむを得ない自己用住宅」は、申請者が市街化調整区域内の大規模既存集落に、線引き前から継続して居住しており、その同一集落内の土地を取得して、住宅を建築する方法です。
大規模既存集落の要件は、その土地の集落内に、200戸以上の建物が55m以内の間隔で、連たんしている必要があります。
1の場合も2の場合も、原則として持ち家あると許可は下りません。
持ち家があった場合でも、以下の場合には、許可が下りる可能性があります。
- 持ち家を売りに出している
- 持ち家が過密や狭小等で住みにくい
- その他、持ち家に住めない合理的な理由がある
但し、「分家住宅」と同様に、市街化区域に土地を所有している場合等は、そこに建物が建てられない理由がない限り、そちらへの建築が優先され、許可は下りません。
既存宅地
開発審査会基準第17号
「既存の宅地における開発行為又は建築行為等」
いわゆる「既存宅地」です。
建築したい土地が、線引き前され、市街化調整区域になる前から、宅地であった土地で、現在も宅地である必要があります。
また、周辺が50戸以上の建築物が連たんしていなければなりません。
以前は、「既存宅地確認制度」というものがありました。
その土地が「線引き前から既に宅地となっていた」などの条件を満たした場合に、建築行為許可を免除する制度でした。
平成13年に廃止され、新しく既存宅地に住居を建築する場合には、許可を取得しなければなりません。
「分家住宅」や「やむを得ない自己用住宅の建築」は、人の許可基準ですが、「既存宅地」は、土地の許可基準です。
そのため、「既存宅地」であれば、誰が購入しても自由に住宅を建てることができます。
しかし、その土地が既存宅であるかどうか、証明が難しい場合があります。
以下の場合には、既存宅地であると言えます。
- 土地登記事項証明書で、線引き前から宅地であることの確認ができる場合。
但し、宅地への地目変更登記が、は昭和50年3月31日までにされている必要があります。 - 建物登記事項証明書で、線引き前から建っていたことが確認できる場合。
上記で線引き前から宅地であったことが読み取れない場合には、家屋の課税証明書、過去の航空写真、過去の住宅地図など、の資料を付き合わせて、線引き前から宅地であったことを証明しなければなりません。
また、平成13年5月18日以降に分筆された土地は原則160㎡以上である必要もあります。
市街化調整区域でも、人を選ばずに建物を建築できるので、一般的に他の周辺土地に比べて、売買価格は高く扱われています。
農家住宅・立て替え(適用除外)
都市計画法第29条に、建物を建てるのに、開発許可を要しないものが定められています。
その中でも、住宅建築に関して関係するものに「農家住宅」と「立て替え」があります。
農家住宅
「農家住宅」と聞くと、農業用設備を整えた建物かと思いがちですが、普通の住宅と変わりのない建物の建築が可能です。
必要になるのは、農機具の収納ができる10㎡程度の農業倉庫を、別途作らなくてはいけないくらいです。
農家住宅を建てられる要件は、各農業委員会によって差がありますが、年間農業所得が15万円以上あり、1,000㎡以上の耕作面積があるといったことが「農家住宅」の建築に求められます。
適用除外ということは、許可が不要になるということですが、この要件に適合している証明書を取得しなければなりません。
この証明書のことを、「都市計画法施行規則第60条証明書(60条適合証明)」と言いますが、建築確認申請に添付しなければなりません。
適用除外なので、許可が不要で建築できるのですが、「農家住宅」の要件に当てはまらないと証明書を発行してもらえないので、許可と同等の審査を受けることにはなります。
立て替え
そして、もう1つ建物を建てるのに、開発許可を要しないものとして「立て替え」があります。
線引き前から建っている住宅の建て替え、線引き後に正規に許可を取って建てた住宅の建て替えです。
この建て替えは都市計画法の許可不要で、そのまま建物の建築確認申請が可能です。
同程度の規模である必要はあります。
まとめ
今回は、「分家住宅」に続いて、市街化調整区域に住宅の建築が可能な場合をご説明しました。
「やむを得ない自己用住宅」「既存宅地」「適用除外」
他にも許可の基準がありますが、これらが建築できるケースの大部分を占めています。
市街化調整区域は、土地の価格も税金も安くて、閑静な環境であることが多い立地です。
もちろん、規制が多く、よい面ばかりではありませんが、市街化調整区域に住宅を建てるメリットは多いのです。
自分の条件に合った場合、検討されてみて下さい。
住宅ではありませんが、市街化調整区域でも店舗なら建築できる場合があります。
また、反対に市街化区域でも農業をし続けなければならない生産緑地もあります。
店舗の建築や生産緑地の解除方法についての詳細は、こちらをご覧ください。