市街化調整区域で日常生活に必要な店舗の建築と生産緑地の解除方法 (original) (raw)
市街化調整区域で日常生活に必要な店舗の建築と生産緑地の解除方法
2020年12月1日 2020年12月22日
前回まで、市街化調整区域に建物を建てられる場合の、立地基準の一部をご説明してきました。
他にもいくつか基準がありますが、今回は住宅ではなく、店舗で使われている基準をご説明致します。
また、反対に建物建築の規制がない、市街化区域内でも建物を建てることができない「生産緑地」の解除に関してもご説明致します。
日常生活のために必要な店舗
都市計画法第34条第1号(第1項)
「市街化調整区域に居住して居住している者の日常生活のために必要な店舗」
第34条第1号なので、よく「34の1」と言われます。
近隣に住んでいる方達が、日常生活を送る上で必要な、欠かすことのできない業種の店舗を建てることができる基準です。
以前は、店舗併用住宅の建築も許可されていたのですが、市街化調整区域に居住したいがために、分家要件等のない人が、店舗併用住宅を建築した後に、店舗を廃止して、住宅のみとして利用するケースが頻発していました。
規制の抜け道として使われていたので、それを防ぐために、今では専用店舗の建築しかできなくなっています。
また、住民の日常生活に必要な店舗という基準があるので、その事業内容は、限られています。
郊外でよく見かけると思いますが、コンビニ、接骨院、調剤薬局、学習塾等もこの許可基準で建築されています。
正式な表現は、「市街化調整区域に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗等」といいます。
これらの店舗業種は、下記表第分類に掲げられたものでないといけません。
この許可を得ようとした場合、近隣区域内に、上記の表に記載してある、おおよその対象顧客戸数が必要です。
その場合、必要な対象顧客戸数の半分以上が、市街化調整区域内にないといけません。
区域内に学校、病院、工場等がある場合には、戸数が少なくても認められる場合があります。
この基準は、自己の業務用ではないと許可が下りないため、店舗を建築した後に賃貸することができません。
ただし、住宅の場合と異なり、所有者は個人でも法人でも、建てることができます。
敷地面積は他の要件である分家等と同じく、500㎡を超えることはできませんが、敷地を賃貸して建てることもできます。
他にも下記のような、細かな要件が設けられています。
- 道路幅員4m以上の主要道路に敷地外周の1/7以上が接していること。
- 建築物の延べ面積は概ね200㎡以下とすること。
- 敷地面積は概ね150㎡以上かつ400㎡以下とすること。
- 建築物は2階建以下かつ高さ10m以下とすること。
日常生活のために必要な店舗なので、住むことはできませんが、建物を建築するとった点だけ見ると、他の要件よりもハードルが低いと言えます。
生産緑地
「生産緑地」という場所をご存じでしょうか?
もしかしたら、割とよく耳にする用語かもしれません。
市街地の中でも、まとまった田があるような場所を気にしてみると、「生産緑地」という標識の看板が立っていることがあります。
そこが生産緑地に指定された農地です。
生産緑地とは、他の用途地域と同様に、都市計画法の計画に基づいて、指定された地域地区の一つです。
地域地区とは?
地域地区とは、都市計画において、土地利用に関して一定の規制等を適用する区域として指定された、地域、地区または街区のことです。
指定する地域地区の種類に応じて、その区域内における建築物の用途、容積率、高さなどについて一定の制限が課せられています。
地域地区の種類は、以下の様にいくつもあります。
例えは、古い町並みなどを保存している地域などは、これに指定されている場合も多いです。
- 用途地域
- 特別用途地区
- 特定用途制限地域
- 特例容積率適用地区
- 高層住居誘導地区
- 高度地区または高度利用地区
- 特定街区
- 都市再生特別措置法による都市再生特別地区、居住調整地域または特定用途誘導地区
- 防火地域または準防火地域
- 密集市街地整備法による特定防災街区整備地区
- 景観法による景観地区
- 風致地区
- 駐車場法による駐車場整備地区
- 臨港地区
- 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法による歴史的風土特別保存地区
- 明日香村における歴史的風土の保存および生活環境の整備等に関する特別措置法による第一種歴史的風土保存地区または第二種歴史的風土保存地区
- 都市緑地法による緑地保全地域、特別緑地保全地区または緑化地域
- 流通業務市街地の整備に関する法律による流通業務地区
- 生産緑地法による生産緑地地区
- 文化財保護法による伝統的建造物群保存地区
- 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法による航空機騒音障害防止地区または航空機騒音障害防止特別地区
生産緑地の要件は、「生産緑地法」によって定められています。
「生産緑地」とは、都市化が進む大都市圏において、緑地が本来持つ地盤保持や保水の働きによる災害の防止、及び農林漁業と調和した都市環境の保全のため、将来にわたって、農地として残すべき土地を各自治体が指定したものです。
その趣旨から生産緑地は、都市計画法上の市街化区域内において指定されます。
生産緑地に指定されると、所有者はその場所を農地として管理し、継続して営農していかなければなりません。
その反面、固定資産税や都市計画税が軽減されたり、相続税の納税猶予の制度等を利用することができます。
生産緑地は、面積が500㎡以上の農地にでないと指定されることはありません。
生産緑地に指定された場合、将来にわたり農地として残すべき土地として指定されたものなので、農地の転用が基本的にできなくなります。
しかし、下記の場合に、その指定を解除することができます。
生産緑地を解除できる場合
- 生産緑地指定後30年を経過した場合
生産緑地の指定を受けてから30年が経過した場合には、生産緑地を継続するという選択をしなければ、生産緑地の指定は解除されます。 - 農業の主たる従事者(中心となって農作業に従事する人のこと)が死亡した場合
生産緑地の主たる従事者が死亡した場合には、生産緑地のまま相続するという選択をしなければ、生産緑地の指定は解除されます。 - 農業の主たる従事者が農業に従事することを不可能にさせる重大な故障を有する場合
生産緑地の主たる従事者が怪我や病気などで、農業ができなくなった場合に解除することができます。
上記のいずれかに該当すれば、生産緑地の指定解除が可能です。
ただし、生産緑地の指定を解除すると、宅地並みの固定資産税が課税されるになります。
そのため、相続財産としての評価も宅地並みに高くなりますので、固定資産税や相続税への対策も想定しておいた方が、無難かと思われます。
3つめの生産緑地の主たる従事者の故障を解除要件とする場合、生産緑地の指定を解除するには、解除要件を満たすことを証明したうえで、各市町村へ生産緑地の「買取申出」をしなくてはなりません。
その解除要件とは、脳梗塞で寝たきりになっているなど、明らかに農業ができない場合は、要件に当てはまりますが、腰痛や糖尿病のおそれがあるという程度では、難しい場合もあります。
役所の判断になりますが、主治医から診断書をもらって、農業ができないことが認められないと、指定解除は難しいと言えます。
「買取申出」の要件が認められると、市町村に対して当該農地の買取申出をします。
おおよそ、1ヶ月程で市の買取の有無が決定されますが、実際に市町村が買い取ることは、まずありません。
その後、買取の希望者への斡旋の手続きがあり、公告がされます。
2ヶ月が過ぎても希望者が現れない場合に、生産緑地の制限がなくなり、生産緑地の指定が解除されます。
買取申出から合計3ヶ月程で、農地転用の届出が可能となりますので、時間的な余裕を見ておく必要があります。
まとめ
市街化調整区域では、農地の転用や建物の建築が規制されています。
いくつかある建築ができる方法の1つとして、「日常生活に必要な店舗の建築」についてご説明しました。
反対に建物建築が可能な市街化区域でも、建築ができない場所もあります。
建築する為の「生産緑地の指定解除」についてご説明しました。
場所によって、規制されている根拠も、規制解除の方法もかなり異なるので、その根拠となっている法律を把握することが大切です。
かなり専門的な内容になるので、今回の様な必要が生じた場合には、詳しい建築会社か行政書士等の専門家に御相談下さい。