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有名シャトー&熟成飲み頃入り ボルドーブラン5本セットを飲んでみた
みなさんはボルドー・ブランがお好きだろうか。私は大好きだ。ソーヴィニヨンとセミヨンのブレンドという個性が唯一無二だし、たいていがふくよかで果実感があっておいしい。わかりやすいワイン大好きな私にとって、**ボルドー・ブランはハズレが極めて少ない**という認識だ。
なので、「『有名シャトー&熟成飲み頃入り ボルドーブラン5本セット』を飲んでみませんか?」というお声がけを秒で承諾。すべてのワインを自宅で1本ずつテイスティングしてみた。最初に言っておこう、このセットはいいぞ。
有名シャトー&熟成飲み頃入り ボルドーブラン5本セットのスペック
まずは商品のスペックから紹介しよう。5本すべてフランス・ボルドー地方の白ワインで、価格は税込18,000円送料無料。1本あたりの単価は3,600円だ。
3,000円以下を安ワインだと定義するならば、その範疇をわずかに超えた“中流ワイン”とでも呼ぶべき価格帯。給料日とか3連休の初日とかにちょっと贅沢して開けちゃいたいワインたち、て感じでしょうか。
そのラインナップは以下。
【300年の歴史】シャトー・ラヴェイユ・ド・フューザル・ブラン2022
【偉大なる2015】ル・ドゥ・ラ・ルービエール・ブラン 2015
【甘口生産者の辛口】ジェ・ド・シャトー・ギロー 2023
【イケムのお隣さんが造る】リオン・ド・スデュイロー・ブラン セック2023
【11年熟成白】シャトー・マルジョス・ブラン2013
うーむ、それぞれ個性的。それぞれどんな味わいなのか、早速飲んでいこう。
1本目:【300年の歴史】シャトー・ラヴェイユ・ド・フューザル・ブラン2022
まずは300年の歴史を持つシャトー・ド・フューザルのセカンドワインにあたる、シャトー・ラヴェイユ・ド・フューザル・ブラン2022。2022はとても温かいヴィンテージだったはずで、それだけに溢れる果実味! みたいなのを期待していたのだがまさにその通りの味わい。
シャトー・ラヴェイユ・ド・フューザル・ブラン
公式サイトによれば、品種はセミヨンが60%でソーヴィニヨン・ブランが40%とセミヨン多めなのだが、印象としてはソーヴィニヨン・ブランを強めに感じる。そして、レモン、グレフル、ライムみたいなソーヴィニヨン・ブランっぽい味に、どこかビスケットみたいなほっこりした甘みと香ばしさがあるのがボルドーの妙味。
うまいうまいとごくごく飲み干して、ところでこれ定価いくらなんだろと調べてみると、単品では6600円するワインであることが判明。そりゃうまいはずだよ! 1本平均3600円のセットに6600円のワインが入っているとは…(誤算)!
2本目:【偉大なる2015】ル・ドゥ・ラ・ルービエール・ブラン 2015
1本目は300年の伝統だったが、2本目は700年の歴史を持つ(!)というシャトー・ラ・ルーヴィエールのセカンドワイン。ヴィンテージはグレートヴィンテージ・2015年で、これが個人的にはホームラン。
ル・ドゥ・ラ・ルービエール・ブラン
2015年と年齢を重ねていることもあってか非常にクリーミー。柑橘系の雰囲気は残しつつ、焼き栗のようなほっこり感が加わっており、飲むクレームブリュレ的ふくよかさがある。ちょっと熟成したシャンパンのブラン・ド・ブランみたいな感じがする。
ブラインドで飲んでソーヴィニヨン・ブランとセミヨンが半々くらいかな? と予想したのだが正解はソーヴィニヨン・ブラン100%。ソーヴィニヨン・ブラン100%なのこれ!
いかにもおいしそうな濃いイエロー
温度が上がっていくとクリーミー度合いが増していき、個人的には常温近い温度になってもバチバチにおいしいと感じた。定価は5500円で、まさに価格に相応しい味がする。寒い日にクリームシチューをハフハフしながら飲んだらとろけますよこれは。
3本目:【イケムのお隣さんが造る】リオン・ド・スデュイロー・ブラン セック2023
続いてのワインは世界最高峰の貴腐ワイン生産者、イケムの“お隣さん”であるシャトー・スデュイローが造る辛口ワイン。品種はセミヨン57%、ソーヴィニヨン・ブラン30%、ソーヴィニヨン・グリ13%で30%樽熟成しているそう。
リオン・ド・スデュイロー ブラン・セック
で、これがまたうまい。果実の厚みがしっかりあって、同時にぶどうの果実を磨きあげたかのようなクリアでピュアな、いわば**ボルドー・ブランの大吟醸**みたいな雰囲気がある。
セミヨンとソーヴィニヨン・ブランを混ぜないと出ない味だと思われる王道のボルドー・ブランで、タルト生地みたいな香ばしさも一定あるので試しにアップルパイと合わせてみたが、それもすごく合った。
あとこれはぜひ指摘しておきたいのだが、このワイン「LIONS」とかいて「リオン」と読むのだが、野球好きとして言わせてもらえば何度読んでも「ライオンズ」としか読めないんですよLIONSっつったら。でもってラベルの色も球団カラーっぽいんですよたまたまだろうけど。
というわけで、**埼玉西武ライオンズファンの方へのプレゼント、**という超ニッチな使い方ができるワインでもあると思います。ホントに。
4本目:【甘口生産者の辛口】ジェ・ド・シャトー・ギロー 2023
さらにこの4本目もバッチリ好みだった。こちらはヴィンテージが2023と新しいことがダイレクトに影響している印象の、元気はつらつトロピカル風味。
ジェ・ド・シャトー・ギロー
パイナップルのようなトロピカルフルーツの感じ、ライムのような爽やかさ、そこはかとない塩味も感じられてビーチサイドドリンクっぽさが全開。寒い時期に暖かい部屋で飲むのがまたいいんですよこの手の白は……!
ボルドーのワインはどこか陰のあるワインが多い印象だけど、これはYeah、めっちゃ陽なホリディテイスト。このワインと1本前のスデュイローの通常価格はどちらも3850円とこのセットの中では安めなのだがまったく侮れないし、おそらく「わかりやすさ」で言えば双璧だ。「甘口生産者が造る白はうまい」と言ってしまっていいかもしれない。
5本目:【11年熟成白】シャトー・マルジョス・ブラン2013
そして最後に鎮座するのが収穫から11年の時を経たシャトー・マルジョス・ブランで、これがセットの中で異彩を放つ熟成ボルドー・ブランだったのだった。
シャトー・マルジョス・ブラン
2013年という難しかったとされるヴィンテージ。定価は2750円とセット最安値。収穫から11年の時が経過。色んな意味で難しいワインか!? と警戒していたのだがさにあらず。
レモン、ライムみたいな緑〜黄色っぽい雰囲気はなく、あんずやカリンのような黄色〜オレンジっぽい雰囲気。味わいは果実に加えて旨み・出汁系で、そこはかとなく薬草感もある。当然多少の酸化も進んでいることから、どことなくオレンジワインぽさもある。
他のワインと比して明らかに色が濃い
それもあって、スパイスを効かせた料理や、キノコの出汁を生かしたスープなどと飲みたい玄妙な味。エスニック系の揚げ春巻きとかも合わせたい、とてもフードフレンドリーな味わい。セットの中の変化球として、いいアクセントになっていた。
有名シャトー&熟成飲み頃入り ボルドーブラン5本セットを飲んだまとめ
5本のボルドー・ブランを飲み終えて、個人的には2本目の「ル・ドゥ・ラ・ルービエール・ブラン 2015」が素晴らしいと感じた。
同時に、まるでロワールのソーヴィニヨン・ブランのような伸びやかな酸がある「シャトー・ラヴェイユ・ド・フューザル・ブラン2022」も素晴らしかったし、甘口シャトーが作る辛口2本も明らかに1000円2000円のワインとは異なる厚みがあった。5本目のシャトー・マルジョスの熟成がもたらす個性も私は好きだ。どんな料理と合わせるのかを想像するのが実に楽しい。
よくセットでありがちなのが、「5本中3本はおいしいけど、2本微妙だったなー」とか、「1本素晴らしいのがあったけど、残りは普通だったな」みたいな事態。こうなると、(なら単品で買ったほうが良かったかな…)みたいになり、QOLが低下する。
このセットがいいのは、5本すべてが高水準かつキャラクターが異なる点だ。戦隊ものでいえばレッド・イエロー・ピンクみたいに個性がはっきりとあるので飲み飽きないし、1本1本の戦闘力がきっちり高いので、セットとしての満足度が非常に高い。
ボルドーはおそらく世界で一番有名なワイン産地といっていいはずだ。その地に根付く白ワインの伝統はやっぱりすごい。だからこそ、ワイン人生のどこかでボルドー・ブランを集中的に飲むタイミングはあったほうがいい。そして、そのきっかけとして、『有名シャトー&熟成飲み頃入り ボルドーブラン5本セット』は最適解になるかもな、と思った次第。
光風リースリング2022 メディアお披露目会に参加
米国カリフォルニアはソノマコーストの生産者「フリーマン」の最新キュヴェ「光風 リースリング2022」のメディアお披露目会に参加してきた。
アキコさん。いつも笑顔で物腰は上品で穏やか……だが造るワインはめちゃすごいというとにかくすごい方
オーナーでワインメーカーのアキコ・フリーマンさんの解説を聞きつつ、神楽坂でミシュラン三つ星に輝く「虎白」の大将がこのイベントのために考案したペアリングフードを食べるという贅沢すぎるイベントだ。
私は8カ月ほど前に、まだリリース前だった「光風 リースリング2022」を飲ませていただいたことがある。まさしく木漏れ陽を切り裂いて森を駆け抜ける風のような鋭利で伸びのある酸に圧倒された記憶があるが、それから8カ月と少し、ワインがどう変化しているのかをすごく楽しみに会場に向かった。
「光風リースリング2022」はどんなウィンか?
このリースリングはフリーマンの自社畑で育てられたものではなく、買いぶどう。フリーマンの自社畑・グロリアヴィンヤードのお隣・アビゲイルズヴィンヤードで栽培されたぶどうを使用している。
光風リースリング2022。光風とは「晴れあがった春の日にさわやかに吹く風。また、雨あがりに、草木の間を吹き渡る風。」のこと。デジタル大辞泉(小学館)より
なんでも、アキコさんの出張中に夫のケンさんがアビゲイルズヴィンヤードのオーナーと飲みに行った際にアキコさんに無断でぶどうの購入を決定、かねてフリーマン夫妻の好きな品種であるリースリングがラインナップに加わることになったのだそうだ。
ちなみにケンさん、先日は趣味のサイクリング中にガレージセールに遭遇、主催者と会話をしたところ「当主が亡くなって家と10エーカーの畑を売却するため、まずは家財道具をガレージセールしているんだ」という事情を聞き、即座にその10エーカーの畑の購入を決めたのだそうだ。ガレージセールで10エーカーの畑買うのすごすぎるんですよ。(ちなみにそれもアキコさんには無断だったそうで、『お願いだから事前に相談して』とお願いしているそうだ。(そりゃそうだ))
「光風リースリング2022」のつくりかた
アビゲイルズヴィンヤードのリースリングは、元々はウエストソノマコーストの名手「コブ」で使われていたものというか今も使われているもので、それをフリーマンが分けてもらっているカタチ。
コブのワインメーカーであるロス・コブさんとアキコさんはマブダチ関係なので、アキコさんは光風リースリングのファーストヴィンテージである22年を造る際、ロス・コブさんに電話して「あなたどうやって造ってるの?」と聞いたのだそうだ。コブとフリーマン、スター生産者同士が電話で「どうやって造ってるの?」と聞ける関係なのすごくいい話だ。
光風をグラスに注いだ図。光そのものが注がれたような色合い。
さて、その電話の話の続きをすると、「どうやって造ってるの?」に対するロス・コブさんの答えは「リースリングの酸を活かすなら、マロラクティック発酵はしちゃダメだよ」というものだったそうだ。
ただ、実はフリーマンでは、それまですべてのワインでマロ発酵を行っていたそう。というのもフリーマンのワインはすべてノンフィルター。ノンフィルターで瓶詰めする上で、マロ発酵(『二次発酵』とアキコさんはおっしゃっていた)を行わないと最終的にボトリングした後の瓶内で予期せぬ発酵が起きてしまう可能性があるからなのだそうだ。
そんなわけで光風の2022ヴィンテージはロス・コブさんの助言に基づき、フリーマンとして初めてマロ発酵を行わず、フィルターをかけて瓶詰めしたワインになった。こういう醸造の裏話をあっけらかんと話してくれるオープンさもアキコさんの魅力だ。
ちなみに、セカンドヴィンテージの23年は強烈に酸が高かったので(アキコさん曰く『歯のエナメルが溶けるんじゃないかっていうくらい』酸が高かったそう)マロ発酵を実施しノンフィルターでボトリング。24ヴィンテージは今まさにマロ発酵するかしないか悩み中、とのことだった。
話が逸れるがなぜフリーマンのワインが原則すべてノンフィルターなのかを質問してみた。それは「旨みが残る感じがするから」なのだそう。フリーマンのワインにはたしかに「旨み」としか呼びようのないなにかがあるような気がしていて、それが他のアメリカの生産者とフリーマンを分かつ個性に思えているのだが、その秘密の一旦がノンフィルターへのこだわりにあるのかもな、と感じた。
ともあれ2022はマロなし・フィルターあり、2023はマロあり・ノンフィルター、2024は未定。こんなふうに毎年造り方を少しずつ変えながら、光風リースリングは造られている。
「光風リースリング2022」を飲んでみた
そして、飲んでみて私は結構しっかりビックリした。8か月前と間違いなく同じワイン、なのだが印象は小さく、しかし決定的に異なるように感じられたのだ。リリース前、鋭利な刃物のようだった光る風は、頬を撫でる穏やかなものになっている。同じ気温の日に吹く風でも、11月の終わりの風が4月の終わりの風に変化したような、それは変化だ。
酸の角がまろやかになり、グラスの奥から蜜の感じがじわっと広がっていて、液体の核に丸い球体を思わせる旨みがある。丸くなったとはいえ、あくまでも主体は酸。その魅力が保たれたまま他の要素も立ち上がってきている印象なのすごい。マロあり&ノンフィルターの23はどんな味わいなのか、そちらも俄然気になってくる。
手前が「あん肝、梅と紫蘇の香り」。今年のベストペアリングかも。
ちなみにこのワイン、ペアリングフードとして提案いただいた神楽坂・虎白のフィンガーフード2種のうち、とくに「あん肝、梅と紫蘇の香り」との相性が異次元だったことも追記しておきたい。
あん肝の旨みと甘みとリースリングの酸が完全に調和し、地面に描いた三角形がピラミッド状に立ち上がってくるような、三次元的な美味しさを獲得していた。アキコさんの言葉を借りれば「酸が脂を切る」ペアリング。酸を活かした造りが異様にうまいフリーマンの真骨頂感がある。
ちなみに、アキコさんはシンガポール滞在中にこのワインを松茸とノドグロの土瓶蒸しを合わせたそうで、それも素晴らしいペアリングだったそうだ。なにそれやりたすぎる。ちなみにソノマでも雨の降った後などに松茸が生えてくるそうな。(香りは日本産のほうがはるかに上とのこと)
フリーマンのワインたちについて
というわけで光風リースリングをテイスティングしたのだが、この日は他にも、
・2020 ユーキ・エステート ブラン・ド・ブラン ソノマ・コースト
・2022 涼風 シャルドネ グリーン・ヴァレー・オブ・ロシアン・リヴァー・ヴァレー
・2021 アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ウエスト・ソノマ・コースト
の3本もテイスティングできた。
この日テイスティングしたワインたち。どれも素晴らしい。
これらの3本は、先日の大統領選で惜しくも敗れたカマラ・ハリス副大統領が主催した、岸田文雄前首相を招いての昼食会でサーヴされたワインたち。
フリーマンのワイン、スケールがデカすぎて話の中にすぐ「大統領」とか「首相」とかが出てくる。普段の私は「町内会長」とか「PTA役員」とかそれくらいのレベルの会話しかしていないので脳がバグる。
上記3つのワインについても語り始めればキリがないのだが、やはりどれにも美しい酸があり、たっぷりとした果実があり、奥に核となる旨みがある。味の輪郭が強いのに、フードフレンドリーでもある。
「涼風」は個人的にNO.1クラスに好きなシャルドネだし、アキコズ・キュヴェは本当にエレガントで素晴らしいピノ・ノワールで、これらはいつも通り素晴らしいと感じたのだが、初めて飲んだブラン・ド・ブランがおいしくて驚いたことを付記しておきたい。なんかこう、これからさらに良くなりそう。
というわけでフリーマンのワイン、今回もどれも大変美味しかったのだった。そしてアキコさんにお会いするといつも元気を分けていただけるのが嬉しい。フリーマンのワイン、みなさんもぜひ一度試してみてください。
シャンパーニュの価格どんどん高くなってる問題
シャンパーニュの値段がどんどん高くなっている。ほんの5年前の2019年頃、シャンパーニュは今ほど高くなく、たとえば「ボトル1本1000円台のシャンパーニュ」という今となっては存在しないツチノコ的価格帯のものも存在した。
今回のテーマがこちら。
時は流れ、シャンパーニュ自体の価格も高騰し、同時に円安も進行。1000円台はおろか、2000円台で買うのも無理になった。
シャンパーニュ「ジャン・サンドラン」が安い!!
ましてや生産量の少ないRM(レコルタン・マニピュラン=ブドウの栽培・醸造を一貫して行う生産者)のシャンパーニュはなおさら気軽な値段では買えない……じっと手を見る、と思っていたら、業務用ワインの仕入れ専門店「WINE PRO」の担当者から「だったらこんなのありますよ」と1本のワインを教えてもらった。それが、ジャン・サンドラン トラディション ブリュットというシャンパーニュ。
ジャン・サンドラン トラディション ブリュット
シャンパーニュ地方、コート・デ・バール地区のセル・シュル・ウルス村に本拠地を置くRMが造るブラン・ド・ノワールで、「定価7150円の商品なんですが、今、年末特価でめちゃくちゃ安くなっているんです。推しです」(担当者)とのこと。
商品ページのリンク↓
WINE PROはプロ向けのサイトなので、価格は一般には非公開。ログインしないと表示されないのだが、「こっそり値段を教えてください」と直球で頼み込んだところ、特別に教えてもらうことができた。
一般人は本来見られない「プロ価格」をこっそり教えてもらった
その価格、定価7150円がなんと◯◯◯◯円。ヒントを申し上げれば2024年現在のシャンパーニュ価格としては最安級で、RMとしてはちょっと見たことがない金額。シャンパーニュが高いならRMシャンパーニュを飲めばいいじゃない状態になっている。どうなってんだ。
シャンパーニュ「ジャン・サンドラン」はおいしいのか
いやでも安いのはわかったが、美味しくなければ意味がないという意見もあろう。まったくもってその通りなのだが安心してください。おいしいのだ、このシャンパーニュ。
色はブラン・ド・ノワールらしく濃いめのイエローゴールド。繊細ながら豊かな泡立ちがあり、香りにも味わいにも熟したリンゴのニュアンスと熱々のタルト生地のような雰囲気があって、ドサージュは8g/lと平均的ながら飲むアップルパイみたいな親しみやすさがある。それでいてシャープな酸も兼ね備えているから、飲み飽きることもない。
どことなく熟成感もあって、アペリティフからメインディッシュまで通せてしまう骨太かつ味わいふくよかな**たぷたぷ系シャンパーニュ**なのだ。仲間内で飲んでもらったところ評判も上々。普段ワインをさほど飲まない人の評価も非常に高かったから、「飲みやすい」シャンパーニュだと言っていいと思う。
熟成期間は36カ月と長め。栽培に徹底的にこだわるRM。品種はピノ・ノワール100%で、その樹齢は最高でなんと100年(!)。複数ヴィンテージ、複数区画をアッサンブラージュすることで、品質を保ち、複雑味を出しているそうだ。つまり造りにはキチンと7150円感があり、◯◯◯◯円ながら大量生産シャンパーニュとは違うのだよの感がある。
つまり「シャンパーニュが安く買える!」ではなく「おいしいRMシャンパーニュが安く買える!」ところに価値がある。円安なんて怖くなかった……?
「ジャン・サンドラン」はグラスシャンパンにピッタリな気がする
飲食店を経営したことがないのでわからないが、◯◯◯◯円ならグラスシャンパンとして提供可能だと思われる。RMシャンパンがグラスで(低価格で)飲めたら客としてはかなり嬉しいはずだし、実際グラスシャンパーニュを頼んでこれが出てきたら思わずガッツポーズ出る。飲食店さんチャンスです。
WINE PROの運営会社は株式会社イズミセ。その関連会社である株式会社都光が輸入しているからこその値引き額だ
これは余談だが、WINE PROは業務用ワインの仕入れ専門店、つまりプロ向けショップでありながらポイントがつく。ダイヤモンド会員となるとポイントは5%。このポイントまでをも加味すると、あくまで税別ベースではあるものの、◯◯◯◯円のジャン・サンドラン トラディション・ブリュットはさらにお得になる。
ちなみにこのシャンパーニュ、以前ご紹介したシャンパン5本で16,999円のセットの1本にも含まれている。このセットも相当お得なので、我ら一般消費者はこちらのセットを買うのも良い選択肢だ。
こちらの記事で詳しく書いているのでぜひ↓
というわけでこの記事の結論は「業務店の方が羨ましい」ということになる。年末までの特別価格なので、クリスマス特別企画のグラスシャンパーニュキャンペーンなどやるのにピッタリな気がする。
そして、「◯◯◯◯円、◯◯◯◯円しつこいよ!」と思った方はぜひサイトで会員登録してみてください! しかも新規会員登録すると2000ポイントもらえちゃうし、6本単位で注文すれば送料無料なんですよ。なにそれ仕入れたい(自宅に)。
売上10億円超! 「バルデモンテ」をご存知か?
楽天市場でシリーズ累計10億円以上を売り上げる、圧倒的な売り上げNO.1のワインをご存知だろうか。
あれかなこれかなとみなさんが頭に思い浮かべたワインはもしかしたら不正解かもしれない。正解は3リットル入りの箱ワインだ。その名は「バルデモンテ レッド(以下、バルデモンテ)」。なんと15年の長きにわたって売れ続けているという、超ロングセラーのスペインワインが“売上NO.1”なのだ。
バルデモンテ
と、バルデモンテの話の前に、みなさん箱ワインって飲んだことありますか? いや、飲んだことはあると思うんすよ居酒屋とかで。グラスワインを頼んだら箱から注がれたのが出てきた、みたいなことは普通にある。でも、それが家にあったことは私の場合ない。いや、告白せねばなるまい。箱ワインを一段下に見る気持ちが正直私にはあった。
というわけで今回は「バルデモンテはどんなワインか?」という問いともに、「箱ワインってぶっちゃけどうなの?」という問いをも考えていきたい。
「バルデモンテ」が自宅にやってきた!
そんなこんなで家にバルデモンテが届いた。スリーサイズは縦22.1センチ、横17.2センチ、奥行き10.1センチ。重量は3キロ超。黒光りするボディはワインというより小型の家具、くらいの存在感(オーラ)を放っている。
3リットルなので、ワイン4本分だ
通常のボトルであればセラーなり冷蔵庫に突っ込み、飲むときにテーブルに出すわけだが、箱ワインの場合そうではなくて「設置」という作業が必要になる。
設置までの工程(左上から時計回りの順)。箱にやり方が書いてあるので、簡単に「蛇口化」できる
愛媛・松山空港の1階ロビーには「みかんジュースが出る蛇口」が存在するが、バルデモンテのボックスはいわば「赤ワインが出る蛇口」である。私は少年のころソフトボールをしており、夏の練習時には蛇口をひねってタンクから注がれる冷たい麦茶を飲むのが大好きだった。それから幾星霜、蛇口をひねると赤ワインが出る装置を私は設置しようとしている。
とはいえやることは箱の内部から注ぐ口を取り出して、留め具をミシン目に沿って取り外すだけのこと。めちゃくちゃ簡単だ。これで「蛇口をひねると赤ワインが出てくる」暮らしがスタートした。
バルデモンテがもたらす生活の変化とは?
数日後、私は気がついた。箱ワインとボトルワインの最大の違いは「グラスに注ぐまでの工数」だ。ボトルワインは、セラーから出し→テーブルに運び→キャップシールを剥がし→コルクを抜き→グラスに注ぐ、という工数がかかるのに対し、箱ワインはいきなり「グラスに注ぐ」なのだ。まさかの工数ゼロ。いきなりワイン。玄関開けたら、即ワイン。注ぐまでの工数削減によるワインへのアクセスの容易さ、そこに箱ワインの魅力の本質はある。
思い立ったら即、飲めちゃう
それを可能にしているのが、箱ワインの構造だ。箱ワインの中には真空状態の袋が入っており、ワインを注いだ分だけその袋がしぼみ、酸化を防ぐ構造となっている。最近多い「最後まで鮮度が保たれるタイプの醤油」と同じような構造と言っていいんだと思われ、私は2週間ほどほぼ毎日飲んだが、いい意味で変化をほぼ感じなかった。
商品の紹介文によれば、品質自体は開封後ひと月ほど保たれるのだそうだ。3リットル入りだから1日にグラスワイン1杯100mlを30日飲んで空になる計算。価格は2024年10月現在税込1848円だから、グラス1杯あたりの費用は61.6円だ。コンビニでコーヒーを買うより安い予算で毎日グラスワインが飲めるぞ……!
バルデモンテの内部構造。出した分だけ銀色の袋がしぼみ、常にフレッシュな状態をキープ
心理的にも「家につねに赤ワインがある」ことはデカい。いや、ワイン愛好家なのだから家にはつねに赤ワインはある。しかし、「飲みたいときに開けていい赤ワインがない」のはワイン愛好家あるある。夕食終盤、ちょっと赤ワイン1杯飲みたいな、というタイミングでセラーに眠る5000円のワインは開けられないんですよどう考えても。いやごめんちょっと見栄張った。2000円のワインだって開けられないんですよ。そんなときバルデモンテがあれば、1杯だけグラスにチューッと注げてしまうのだ。なにこれ最高。
箱ワインのメリットとは?
箱ワインってどうなの? と思う方もおられると思うが、以上に述べたように、箱ワインは我々の暮らしを変えるものであり、その点でウォーターサーバ、ロボット掃除機、全自動調理器などに使用感としてはおそらく近い。いずれも日常生活における作業工数を削減してくれるものだが、箱ワインはグラスにワイン注ぐまでの工数を圧倒的に削減してくれる装置として優れている。箱ワインがあると生活がちょっぴり便利で愉快になるのは間違いない。
「いつでも注げるワインの蛇口がある生活」が、バルデモンテの提供価値
いやでもちょっと待て、便利なのはわかったけれども味が良くなきゃ意味ないでしょ、と思う方もまた多くおられよう。そこで、ここからはバルデモンテがどんなワインなのかを掘り下げていきたい。
バルデモンテはどんなワインか?
バルデモンテの産地はスペイン最強の安ワイン産地カステーリャ・ラ・マンチャ。イタリア・プーリア、フランス・ラングドック、そしてスペイン・ラマンチャのワインは安くても大概うまいという事実は試験には出ないが覚えておいて損がない。
造り手は1850年創業でカスティーリャ・ラ・マンチャ最古の生産者だというフェルナンド・カストロ。2万平方メートルの広大な敷地に近代的な工場を備えた超巨大生産者だ。
「工場で造られたようなワインが飲みたいですか?」みたいな問いに、ワインを飲んでいると触れることがままあるが、私の答えはつねにYESだ。大規模な工場で造られたワインにはスケールメリットが生じ、安くておいしい可能性が高いからだ。職人が手仕事で造るワインは素晴らしい。同様に、工場で大量生産されるワインにも別の素晴らしさがある。
品種はテンプラニーリョ。アルコール度数は12%と軽め。そしてこのワイン「ティナハ」という素焼きの甕(かめ)で熟成させてるみたいなんですよどうやら。箱ワインを甕熟成……? てっきり巨大ステンレスタンクで造られているのかと思いきや、使用容器、まさかの甕。そこにこだわるんだ。
そんな甕熟成の箱ワインをグラスに注いでみると、外観はやや濃いめのルビーレッド。カスティーリャ・ラ・マンチャのテンプラニーリョらしい、やや赤系果実のニュアンスのあるベリー系の香りに加え、皮や土、煙のような香りも漂ってくる。
飲んでみると果実がしっかりと液体の中心に存在し、その左右を渋みと酸味が補佐するタイプの飲みやすい系。お肉はもちろんだが、マグロの刺身やカツオのタタキといった赤身の魚にも合いそうだし、野菜のアヒージョなんかにも合いそうな万能感がある。
清く正しいテーブルワインの味わいに、甕熟成由来なのか、少しの複雑みが加わって、普通においしい。毎日飲んで飽きのこない味といってもいいだろう。しっかり濃いので、たとえば居酒屋のグラスワインでこれが出てきたら満足度は高いと思う。
バルデモンテと過ごした2週間を振り返って
以前、イタリアのとあるワイナリーを訪問した際、巨大な容器から地元住民の方が自宅で飲む分だけを持参したポリタンクに量り売りしてもらい、持ち帰る姿がとても印象的だった。
バルデモンテからグラスにワインを注ぎながら、私はなぜかその光景を思い出したのだった。ワインは特別なものではなく、日常の食卓を彩るもの。そう考えた場合に、ワインを注ぐ工数を削減し、いつでもおいしい赤ワインが飲める箱ワインという選択肢はとてもいい。そして、3000ml入りであることで心に余裕が生まれるのかなんなのか、むしろ飲みすぎることが減ったのは意外なメリットだった。
というわけで、バルデモンテと2週間ともに暮らした私からのレポートは以上だ。少なくとも箱ワインを一段低く見ていたのは間違いだったと、今は己の不明を恥じたい。箱ワインとの暮らし、みなさんも一度体験してみてはいかがだろうか。
クラウディーベイ ソーヴィニヨン・ブラン2024のお披露目パーティに行ってきた
ニュージーランドを代表するソーヴィニヨン・ブランの造り手、クラウディーベイの新ヴィンテージローンチパーティに行ってきた。テクニカルディレクターのジム・ホワイトさんが来日し、できたての2024年ヴィンテージのソーヴィニヨン・ブラン(11月発売予定だそう)を、主にメディアにお披露目するイベント。
クラウディーベイ ソーヴィニヨン・ブラン2024
ジム・ホワイトさんとは直接会話をさせていただいたのだが、2024年ヴィンテージは悪くないヴィンテージだったようで、「2025年にワイナリーが40周年を迎えるので、グッドヴィンテージで迎えられてホッとしています」とのことだった。
いきなり余談だが、ジムさんによればクラウディーベイはというかニュージーランドは2015、2019、2021がいいヴィンテージだそうなので、気になる方は探してみてください。
クラウディーベイ ソーヴィニヨン・ブラン2024と気候変動
実際に飲んでみると、いわば“新酒”に近い状態のはずだが液体に旨みが乗っておりすでにしっかりおいしい。グレープフルーツやレモンといったソーヴィニヨン・ブランらしい黄色い柑橘のフレーバーに、グァバみたいなトロピカル感が乗っかっていておいしさ二階建て。ジムさんいわく「半年くらい置いてもらえると、もっとパワフルになりますよ」とのことだった。
なんでも、ニュージーランドは冷たい海に囲まれている影響で、地球温暖化の影響はさほど受けていないのだそう(これは南アフリカの生産者も同じことを言っていた)。収穫時期が早まったり、雨の降る量や時期は変わってきているようだが、少なくともそれが直接的に大きな影響を収穫に与えているといった感じではなさそう。
ニュージーランドとか南アのワインが安定しておいしいのは、気候変動の影響の少なさも一因なのかもしれない。日本の気候の変化が激甚すぎるので逆にイメージできないが、あまり気候に変化がない地域も地球上にはあることをワインは教えてくれる。
クラウディーベイ ソーヴィニヨン・ブラン2024の楽しみ方
さて、この日供されたワインは「クラウディーベイ ソーヴィニヨン・ブラン2024」のみだったのだが、それを使ったカクテルも2種類供されていた。それが「GRAPE&PEAR MARTINI」と「CLOUDYBAYSOUR」で、私は後者が気に入った。
これはクラウディーベイにピスコ、グラッパ、ウォッカ、ライムを加えてシェイクし、カクテルグラスでいただくというもので、スピリッツによって骨格が力強く、肩幅が広くなっているのと同時に、ライムジュースの爽やかさで飲みやすく、かつソーヴィニヨン・ブランらしさは失われていない秀逸な味わいだと感じた。
生産者であるジムさんもこの「クラウディーベイ・サワー」を楽しまれており、「こんなふうにカクテルにするのもいいし、氷を入れてもいい。好きに楽しんでもらいたいですね」と語っておられた。賛成。ワインは自由だ。
クラウディーベイ・サワー。これとてもおいしかったなあ
というわけで、ソーヴィニヨン・ブラン2024はそのまま飲んでもちろん良し、カクテルにして良し、そして半年寝かせればもっとよくなるというワインだったのだった。半年後にまた飲みたいし、過去のグッドヴィンテージも飲みたい。
たとえば2021↓
アルダリンはどんな生産者?
南アフリカの生産者「アルダリン」をご存じだろうか。南アフリカの「トップ10ワイン生産者」にも選出されたというプレミアムワインに特化した家族経営のワイナリーで、日本でも人気が高い。そのアルダリンのワインが網羅的に楽しめる「アルダリン6本セット」が楽天市場でめちゃくちゃ売れているらしく、そのセットを飲んでレポートしようという指令が届いた。
アルダリン6本セットの勇姿
これはみんなでワイワイ飲み比べたら楽しそうだと思い立ち、募集をかけたところ私を含む6人のワイン愛好家が都内のレンタルスペースに集まった。アルダリンセットの人気の秘密はどこにあるのか? 早速レポートしていきたい。
アルダリン6本セットの中身
まずはセットに含まれる6本のワインを眺めていこう。以下のような感じだ。
1:ピノタージュ
2:レディーM
4:シラーズ
5:ピノタージュ・ブラン
以上6本。1〜4の4本が赤ワイン、5〜6の2本が白ワインで、2の「レディーM」は樽を使っていないタイプのピノタージュ。5の「ピノタージュ・ブラン」は赤品種のピノタージュを白ワインのような色合いに仕上げたブラン・ド・ノワールタイプだ。このピノタージュ・ブランが珍しくて面白いので、まずは5の「ソーヴィニヨン・ブラン」も加えた白2本をブラインドで提供してみることにした。
「ソーヴィニヨン・ブラン」と「ピノタージュ・ブラン」を飲み比べ!
アルダリンの「ソーヴィニヨン・ブラン」はグレープフルーツを思わせる酸味とフレッシュさ、そこにハーブのニュアンスが加わって、教科書に載せていいレベルの王道ソーヴィニヨン・ブラン味で非常においしいワイン。それだけに、みなさんこれはあっさり「ソーヴィニヨン・ブランですよね?」と正解。うーむ、やりますな。
一瞬で正体を見破られたソーヴィニヨン・ブラン。王道の味
ただ、ピノタージュ・ブランはブラインドで正解に辿り着く難易度が一気に跳ね上がる。なにしろ赤品種を白に仕上げた変化球、さすがに正解までは辿り着けないだろうというのが私の予想。「ジャジャーン、正解はピノタージュのブラン・ド・ノワールでしたーっ!」とドヤ顔で正解発表しようというドス黒い意図とともにグラスに注いでみたのだが、これが思ったより薄ピンク色をしている。
大人気だった「白タージュ」ことピノタージュ・ブラン
「あれ、ちょっとピンクっぽくないですか? 赤品種…?」
と、1名が一瞬で正解の2メートル手前くらいまで肉薄。あれおかしいな。
その後も、
「グリ系のブドウなんじゃないですか?」(惜しい)
「ホワイト・ジンファンデルっぽいね、味わいも含めて」(ほぼ正解)
※ホワイトジンファンデル=赤品種のジンファンデルを使用したロゼ
「そういえば南アにはサンソーの突然変異の白品種、ホワイト・サンソーなんてのもあるよね」(鋭すぎる)
といった指摘が続出。最終的には「サンソーで造ったブラン・ド・ノワール」っていうもうそれ正解でいいですっていうところまで迫られてしまった。すごいなみんな。正解発表後は「白タージュ(白いピノタージュ)だったかー!」と新たなワイン用語まで誕生していた。
アルダリンの「ピノタージュ・ブラン」がすごい
そしてこの白タージュことピノタージュ・ブランだが、参加者6名のうち2名が「今日のベスト」に挙げたことからもわかる通り、ただの変化球ではなく素晴らしいワインだった。
赤ワインを造る際、果皮や種などを液体に(ほぼ)浸さずに透明に仕上げるのがブラン・ド・ノワールだが、本質的には白ワインではなく「非常に薄いロゼ」。だからこそ、このピノタージュ・ブランも白ワイン的な酸味とフレッシュさがありながら、ピノタージュならではの赤いフルーツの果実感、さらにはわずかな渋みや、そこから派生する旨みも感じられる。いわば白に擬態したロゼ。だからこそ、色味に対してギャップを感じるほど深い旨みがある。
もちろんソーヴィニヨン・ブランもおいしいのだが、このピノタージュ・ブランは「これを飲むためにセットを買う価値がある」レベルのワインだと感じた。
ピノタージュの「樽あり」「樽なし」を飲み比べ!
さて、続いては「ピノタージュ」と「レディーM」を飲み比べてもらった。どちらもピノタージュ100%のワインだが、「ピノタージュ」は新樽率40%のオーク樽で22カ月熟成させたリッチな造り。それに対して「レディーM」はステンレスタンクで発酵・熟成させたピノタージュだ。つまり同じ品種の樽あり・樽なしの比較テイスティングということになる。
樽を効かせたピノタージュ、「樽タージュ」こと「ピノタージュ」
この2本は品種を明かした上で、造りのどこが違うかを隠して飲み比べてもだったのだが、
「樽ですよね」
とみんな合唱するレベルで一瞬で正解に辿り着かれてしまった。あれ、これ企画倒れしてる?
私も味わってみたのだが、なるほど割と一目瞭然の違いがある。樽由来のバニラ感が豊かな果実味と調和し、挽きたてのコーヒーのような甘みを伴うスパイシーな香りも漂うのが樽ありの「ピノタージュ」。
「レディーM」は樽をかけていないフレッシュなタイプ
それに対して「レディーM」のほうは非常にフレッシュで、どこかボジョレー・ヌーボーを思わせるような甘やかな香りも漂う。「ブラインドだったらガメイって言うと思います」という方がおられたが、たしかに! となるような味わい。
品種は同じピノタージュ。造り手も同じ。なのに樽のあり・なしでこんなにも味の方向性が違うのか! と驚かされる、興味深い飲み比べとなった。
アルダリンの「ピノタージュ」もすごい
そして、樽の豊かな風味が魅力の「ピノタージュ(通称・樽タージュ)」はこの日の一番人気。参加6人中3人が「今日のベスト」に挙げていた。ちなみに「レディーM」のほうはほんの少しだけ余ったものを参加者のうちのおひとかたに持ち帰ってもらったが、次の日は熟成感と甘みが出てきて別人のような表情を見せたそうだ。なにそれ聞いてない(嫉妬)。
「カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー」と「シラーズ」を飲む!
さて、セットで残るのは「カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー」そして「シラーズ」だが、参加者のうち「南アのボルドー・ブレンドが大好き」というコアな嗜好を持つ方が前者を絶賛。
「カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー」。南アのおいしいボルドーブレンド
カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴香のひとつといえるピーマンやシシトウのような青野菜っぽい感じがあって、それがたまらないとのことだった。
「シラーズ」。迷ったが私はこれを一押しとさせていただきます
一方、なにを隠そう私がベストと感じたのが「シラーズ」。シラーズといえば黒胡椒のようなスパイシーなニュアンスが特徴の品種だが、これはスパイシーさはほどほどに、ボヨヨンとした果実味が前面に出ているタイプ。ピノタージュとどちらがNO.1かめちゃくちゃ迷ったのだが、ギリギリでこちらを1位に推した。ローストビーフとめっちゃくちゃ合ったんだよなあ。
人気投票結果発表。アルダリンセットはピノタージュがうまい!
各人にベストを投票してもらった結果をまとめると以下のようになる。
1位:樽タージュ(ピノタージュ) 3票
2位:白タージュ(ピノタージュ・ブラン)2票
3位:シラーズ 1票
アルダリン6本セットを飲んだ印象として特筆すべきは、やはりピノタージュというぶどう品種を扱う手腕のたしかさだろう。ピノ・ノワールと、この地でエルミタージュと呼ばれていたサンソーを交配して生まれたから「ピノタージュ」。だが、意外なほど「ピノ・ノワールっぽさ」がないのがこの品種の特徴な気がしている。どっちかっていうとサンソー似かな?(お母さん似? みたいな意味で)
色が濃いのに味わいはチャーミングで酸味と渋みはおだやか。かと思えば香りはときにワイルド。ピノタージュにはそんな印象を個人的に持っているが、その特徴を際立たせつつ飲みやすくキレイにまとめあげている印象。それは、「ピノタージュ・ブラン」においてもそうだし、樽をかけていない「レディーM」にも同じことを感じた。なんというか、ピノタージュという品種を熟知していないと造れない味という印象だ。
アルダリンセットはお買い得か?
これだけで大満足なのだが、タイミングが良ければこのセットには“おまけ”が2本ついてくる。それが「フローレンス レッド バイ アルダリン ケープブレンド」と「フローレンス ホワイト バイ アルダリン」の2本。前者はピノタージュ、カベルネ・ソーヴィニヨン。メルロー、シラーズブレンド。後者はシャルドネとソーヴィニヨン・ブランのブレンドで、どちらも飲みやすくておいしい単品価格3190円のワインだ。
おまけでついてくる「フローレンス」がまたうまいんだこれが
アルダリンセットは以上計8本で19800円(税込、送料無料)。おまけを含めれば1本あたりの価格は2475円と2500円を切るが、メインの6本は単品価格が1本5000円前後のワインたちであり、本来2500円を切る価格で買えるクオリティではない。というわけで、「こりゃ売れるわけだわ」というのが今回の結論となる。こりゃ売れるよ、だって飲んだばっかりなのにもう欲しいもの。蛇足ながら、仮におまけがついてこないとしてもこのセットはお得だと思う。
アルダリン8本を飲んだワイン会、とても有意義だった
そして、ワイン愛好家目線でこの日のワイン会を振り返ると、「白の品種」や「ピノタージュの造りの違い」をみんなでワイワイ議論する過程がもっとも盛り上がり、同時にピノタージュという南アフリカで生まれた品種への解像度を高めることにもつながって非常に有意義だった。
南アフリカワインについての理解を深めたい方、そしてなによりちょっと贅沢なおいしいワインが欲しい方にオススメできるセットだと思う。
楽天市場でもっとも売れてる泡「プロヴェット ブリュット」
楽天市場でもっとも売れているスパークリングワインをご存知だろうか? 「プロヴェット ブリュット」だ。知らないんだけどという人も多いかもしれないが、日本のインターネット市場でもっとも売れているスパークリングワインのひとつが「プロヴェット ブリュット(以下、プロヴェット)」なのだ。
「プロヴェット」を飲んでみました
今回はこのプロヴェットを飲んでみよという指令が下された。というわけでさっそくプロヴェットって一体どんなワインなのか調査していこう。
item.rakuten.co.jp
プロヴェット ブリュットの産地・生産者・品種は?
まずはプロヴェットのボトルを眺めていこう。表ラベルには「スプマンテ ビアンコ」の文字。「スプマンテ」ということはイタリアのワインかな? と思いきやさにあらずで、実はこのワインはスペインワイン。
イタリアワインっぽい見た目だけど、中身はスペインワイン
そしてその造り手は……出た! スペイン最強の安うまワインメーカー、フェリックス・ソリス!! 「誰ですかそれ」という方がさすがに多いと思うので説明すると、フェリックス・ソリスはスペインの巨大ワイナリー。スーパーなどで「これうまいな!」と思ったワインがフェリックス・ソリス製だったという経験が複数回あったことで、私の中でリスペクトすべきワイナリーのうちのひとつ認定をされている生産者だ。
さらに調べてみると、ブドウのソースはカスティーリャ・ラ・マンチャ地方。北海道はカニがうまい、みたいなレベルで安ワインがうまいのがラ・マンチャ。勝ち確ですねこれは。
品種はヴィウラとアイレン。「知らないんだけど」という人もいるかもしれないので解説すると、ヴィウラはマカベオとも呼ばれるスペインの爽やか系白品種。そしてアイレンは世界3位の作付面積を誇る白ブドウ品種でありながら、ほぼスペイン国内で栽培されており、さらにそのうち95%がカスティーリャ・ラ・マンチャで栽培されているという品種だ。
ラ・マンチャという土地の圧倒的な生産力×フェリックス・ソリスの巨大設備。その結果が、スペインで造ったものを船で運んで日本で売って1000円で楽勝でお釣りがくるという価格の秘密となっているんだろう。
ちなみにプロヴェットという言葉はイタリア語で「熟練した、経験豊かな」という意味だそう。スペインのブドウをイタリアのワインスタイルで仕上げているからこんな名前になっているのだそうだ。
以上のようなところで大体調査は完了。あとは飲むだけである。
プロヴェット ブリュットを飲んでみた
というわけで休日の午後にグラスに注いでみると、薄めのゴールドの外観に、グラスの底からふつふつと立ち上がる泡が実にいい感じ。
ハツラツとした泡がいい感じ
香りはレモンやグレープフルーツが中心で、ほのかにフレッシュなミントのような爽やかでハーブを思わせる香りが彩りを添えている。
飲んでみると、まるで地中海を見下ろすリストランテでアペリティフしてるみたいな気分。香りの印象そのままのシチリアレモンみたいなキュッとした酸味、白い桃のような果実味、そして貝殻のようなミネラルも感じられる。これは……海のワインだ(注:ラ・マンチャは内陸です)。
プロヴェットが海のワイン(仮)であるのならば、合わせるつまみもシーフードがいいに違いない。ということで私は一計を案じた。今夜のおかずにするつもりで買った牡蠣、これとプロヴェットを合わせたら最高なのではないか。家族には怒られるかもしれないがこの際仕方ない。
プロヴェット ブリュットと料理のマリアージュ
そんなこんなで牡蠣を耐熱の器に並べ、軽く塩をして、そこに大さじ1のプロヴェットを振り、軽くラップをかけてレンジでチン。総作業時間5分で「牡蠣のプロヴェット蒸し」が完成した。
牡蠣にプロヴェットを振りかけるの図。心なし牡蠣が喜んでる気がする
これとプロヴェットを合わせたとき私は思った。ここはミシュランの星付きの自宅か? と。簡単なのにとてもおいしいし、調理にプロヴェットを用いているためプロヴェット自体との相性は限界突破レベルで高い。カップラーメンを作るレベルの工数でこんなマリアージュを楽しめてしまっていいのだろうか。いいのだ!
レモン絞っても黒胡椒ガリガリしてもオリーブオイル回しかけてもおいしい
牡蠣→プロヴェット→牡蠣→プロヴェットと無限に繰り返しているうちに牡蠣は消滅した(このあとめちゃくちゃ家族に怒られた)。プロヴェット、アルコール度数10.5度と軽いので、味わいに芯があるのにスイスイ飲めるのがまたいい。
いいかも!プロヴェット ブリュットのある暮らし
1杯のグラスととことん向き合う高級シャンパーニュも魅力的だが、休日の昼間に軽率に抜栓して、冷蔵庫の残り食材をつまみに1杯、2杯サクッと飲む、そんなふうな楽しみ方ができるプロヴェットもまた素晴らしい。値段が安いことで料理にちょっと振りかけても惜しくないし、それで即席マリアージュも完成する。
スペインの安うま泡・プロヴェット。これは自宅にストックしておくと便利な常備菜スパークリングの有力候補になりそうだ!