イナズマンF 第23話「さらばイナズマン ガイゼル最期の日」を観た (original) (raw)
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今回はイナズマンF 第23話「さらばイナズマン ガイゼル最期の日」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映、東映エージェンシー)を紹介しましょう。ついにやってきた最終回。26本よりも3本少ないですが、打ち切られたわけではなく、第1話放映日は1974年4月9日で第23話放映日は1974年9月24日。おそらくプロ野球中継が入ったりして6月18日と7月9日の放映が飛ばされたのが関係しているのでしょう。まず放映された最終回を観ていきましょう。
冒頭は当然、白鳥ジュンが残した情報を解析する場面。これにより、デスパーシティーの入口が特定できました。その情報によれば
荒井誠「デスパーシティーの入口はA地区よりL地区までがRT方式の周期により一日十五分だけ開く。A地区東南東0531125。解けた。」
だそうです。そして渡五郎が上記の情報を基に地図で該当箇所を特定しようとすると通信が。その内容は
荒井誠「ガイゼルは近日中に最後の計画を実行する模様。それは人工太陽を利用した日本全土破壊作戦と思われる。これはなんとしても阻止せねば。」
渡五郎「今度こそ俺達にとって最後の決戦となるかもしれませんよ。」
そして夜。渡五郎と荒井誠が上記の情報と地図を基に該当箇所へ行ってみれば、そこは岩場のある海岸。洞窟が入口になっていました。中に入って歩いていくと、夜なのに明るいところに出ました。目の前に広がるのは新宿駅西口のビル街のような街。
渡五郎「デスパーシティー。」
荒井誠「東京の街とおんなじだ。」
渡五郎「ガイゼルがそっくりに作り上げたんですよ。」
荒井誠「またも人工太陽か。」
そして渡五郎と荒井誠が歩いていると夫婦の二人連れに出会いました。実はこの二人、加藤貢プロデューサー夫妻。渡五郎を演じる伴大介さんとは同世代だったそうです。
荒井誠「ああ、すいません。デスパーシティーの本部はどこですか?」
しかし二人とも質問には答えず立ち去りました。なおも五郎と荒井が歩いていると林に出ました。ロケ地は多分多摩湖でしょう。馬の蹄の音がしました。
男「カレン様だ。」
別の男「隠れろ。」
ボーっと立っている五郎と荒井は男に連れられ、隠れる羽目に陥りました。見ると若い女性(鳥居かおり)が馬に乗って走らせています。
男「ガイゼル総統の娘カレン様だ。」
カレンは馬を止めていたのですが男はカレンのところへ突進。直訴したいことがあるらしく、こう言いました。
男「カレン様、僕の話を聞いてください。僕達市民が如何に酷い仕打ちを受けているか。あなたにはわかるはずです。」
ところがマシンガンの銃声が。男は銃殺されてしまいました。カレンは立ち去りました。
別の男「カレン様と口をきいた者はみんなこうなるんだ。親衛隊がいつも見張っているんです。」
それを聞き
荒井誠「いくらガイゼルの娘とはいえ、酷すぎる。」
カレンがなおも馬を走らせていました。草を刈っている男達のところにやってきました。
男「来るな。帰ってくれ。」
別の男(水木一郎)「俺達に近づくな。俺達は殺されたくない。」
「殺されたくない」と叫んだ男は手に持った鎌を投げ、その鎌はカレンの右手の甲に命中。男達は逃げてしまいました。とそこへやってきたのは渡五郎。五郎はカレンを手当てしました。そこへ先ほど五郎に隠れるように言った人達が現れて「カレン様に関わりあうと酷い目に遭わされるぞ。」と警告しますが
渡五郎「心配いりません。皆さんはこの場を離れて。」
人々は立ち去り、五郎は手当を続行。なお荒井誠は少し離れて立っています。
カレン「私はガイゼルの娘。それを知ってて助けてくれたんですか?」
渡五郎「誰の娘だろうと関係ない。君は怪我をしていたから手当したまでだ。」
離れていた荒井誠が近づいてきました。
カレン「ありがとう。」
荒井誠「私は君を助けるのは反対だった。君は可愛い顔をした悪魔だ。」
カレン「悪魔? あたしが?」
荒井誠「そうじゃないか。君に近づいたり、話しかけたりするものはマシンガンの餌食になってしまう。」
渡五郎「荒井さん。」
五郎はカレンを立たせました。
カレン「私はお友達が欲しかっただけです。でも。」
荒井誠「ガイゼルは冷酷な独裁者。殺戮者だ。君はそれを知っているのか?」
カレン「私の父が?」
とその時
サデスパー「カレン様。」
サデスパーが親衛隊四人を引き連れて登場しました。ちなみに親衛隊を演じているのは大野剣友会のメンバーのようで岡田勝さんと山田茂さんの顔が見えます。
サデスパー「死にに来たなようだな、渡五郎。」
その言葉を聞いて驚くカレン。
カレン「渡五郎! この人が?」
サデスパー「カレン様。この男が我がデスパーに弓引く渡五郎ことイナズマンです。」
親衛隊員「よくもカレン様を拐かしてくれたな。」
カレン「待って。」
カレンは五郎と荒井を庇いました。
親衛隊員「こいつは憎むべきイナズマンなんです。」
カレン「怪我をした私を助けてくれたのよ。」
サデスパー「おどきください。いくらカレン様の言いつけでも、これだけは聞けません。」
なおもカレンは抗弁。
カレン「サデスパー市長。」
サデスパー「わかりました。ガイゼル総統のお裁きを受けましょう。連れていけ。」
五郎と荒井は親衛隊に連行されたのでした。
さてガイゼル総統のいる建物。第12話でも登場した建物でロケ地はおそらくこどもの国。ガイゼル総統とカレンは口論になりました。
ガイゼル総統「何! 渡五郎が助けてくれたと?」
カレン「ええ。誰の娘であろうと関係ない。君が怪我をしたから助けたまでだ。渡五郎はそう言ったわ。人間は凶悪な生き物だ。下手に近づくと命が危ない。あの言葉は嘘だったのね。私を人間社会から遠ざけるためにわざとあんなことを。」
ガイゼル総統「馬鹿者!」
ガイゼル総統はカレンをビンタ。
ガイゼル総統「部屋に帰っていなさい。」
憮然としたまま出ていくカレン。その後、ガイゼル総統はサデスパーと親衛隊員全員を杖で打ちました。
一方、牢に入れられた渡五郎と荒井誠は「うまく本部に入れた」とニヤリとし、脱獄。その報告をサデスパーから聞いたガイゼル総統はこう命じました。
ガイゼル総統「イナズマンをデスパーシティーから出してはならん。最後の切り札を使うのだ。」
サデスパー「というと、人工太陽を爆破。」
ガイゼル総統「イナズマンを5万市民と一緒に抹殺してしまうのだ。そして最後の計画を直ちに実行してしまうのだ。この人工太陽にはNM元素を基にした核爆発装置が仕込んである。これが日本全土の地底を流れる火山帯に作用して一瞬のうちに日本は海の底に沈む。我々の帝国を築く、ある地域を残してな。サデスパー、お前が犠牲になるのだ。イナズマンめ。憎んでも余りある奴。悉く我がデスパーの計画を邪魔した奴め。」
このやりとりをカレンが聞いていたとは流石のガイゼル総統も気がついていませんでした。元ネタは『日本沈没』でしょうが、イナズマン最終話でも使っていた気が。
ガイゼル総統「日本全土を支配する野望は捨てた。我々は新しいデスパー帝国を築かねばならん。」
じっとカレンが聞き耳を立てているとは知らず
ガイゼル総統「人工太陽を1時間後に爆発するようセットするのだ。早く行け!」
カレンも慌てて立ち去りました。サデスパーは命令通りに時限装置を設定。ここでCM挿入です。
CMが明けるとカレンが思い悩む姿が挿入されます。その後、荒井誠と渡五郎はある人物の声を聞きました。
荒井千津子(野口ふみえ)「さあ、今日はみんなで島崎藤村の若菜集を読みましょう。『まだあげ初そめし前髪の林檎のもとに見えしとき』」
一同「『まだあげ初そめし前髪の林檎のもとに見えしとき』」
荒井誠「(その様子を聞き)千津子…」
荒井千津子「『前にさしたる花櫛の花ある君と思ひけり』」
荒井誠と荒井千津子「『やさしく白き手をのべて』」
荒井千津子、何かに気がつき読む声を止める。
荒井誠「(続けて)『林檎をわれにあたへしは薄紅の秋の実に人こひ初めしはじめなり』」
荒井千津子「(荒井誠の存在を確認し)あなた…」
ついに荒井誠は妻の千津子と娘のルミ(土田里美)と再会したのです。なお上記と似た場面は帰ってきたウルトラマン 第1話「怪獣総進撃」の脚本にも登場します。
hirofumitouhei.hatenadiary.org
さてカレンはデスパー兵士からシェルターの中に避難してほしいとの報告を受けました。カレンが向かった先はシェルター…ではないようです。サデスパーと親衛隊をやり過ごしてどこかへ向かいます。
その頃、五郎と荒井は千津子やルミ達と話をしていました。束の間の家族団欒です。
渡五郎「荒井さんのこんな嬉しそうな顔を見るのは初めてですよ。」
ですが、荒井はこう言いました。
荒井誠「千津子、皆さんを連れてここを脱出するんだ。」
渡五郎「荒井さん、後は俺がやる。折角、奥さんやお嬢さんと会えたんだ。荒井さんが皆さんを連れて。」
ですが荒井の決意は変わりません。
荒井誠「五郎君。馬鹿を言うんじゃない。私はインターポールの秘密調査官だ。デスパーを叩く使命の前に私情は許されない。千津子、私はデスパーを討つためにインターポールに入った。わかってくれるな。」
千津子は頷きました。
荒井誠「ルミも。」
ルミも頷きました。とそこへサデスパーと親衛隊がやってくるという知らせが。読書会に参加していた人達は五郎と荒井を物陰に隠れさせました。サデスパーと親衛隊(岡田勝さんと山田茂さん以外のメンバーが変わっていてセリフのある人は湯川泰男さんのような気がしますが)は渡五郎の居場所を尋ねましたが、「言いたくない」と知ると
サデスパー「人工太陽は本日19時30分に爆発する。」
と言いました。残り時間は30分。
サデスパー「渡五郎に伝えよ。このデスパーシティーでもがいてももう遅いとな。」
サデスパーと親衛隊が立ち去った後、千津子から事情を聞く荒井誠と渡五郎。二人は決意しました。
渡五郎「それがもし本当なら日本は愚か地球の命は危ない。」
というわけで二人は人工太陽爆破を阻止するためにデスパー軍団の本部に乗り込みました。親衛隊とサデスパーと格闘する渡五郎と荒井誠。爆破の時刻が迫ります。
渡五郎「剛力! 将来!」
即座に
サナギマン「超力! 将来!」
イナズマンはサデスパーと戦闘開始。ちなみにサデスパーは「ケケーン」と叫びます。ウデスパーと同じです。
その頃、なんとカレンが時限装置を止めました。サデスパーは腹を開けてあの悪趣味な武器でイナズマンを挟み、荒井誠は親衛隊員と格闘。しかしサデスパーはあの悪趣味な武器の内側のトゲトゲを全て外され、最期は
でした。
荒井誠「イナズマン、速くガイゼルを!」
さてその頃、ガイゼル総統はカレンの背後に現れて
ガイゼル総統「カレン!」
そして本部へカレンを連れて行き、
ガイゼル総統「貴様は。」
杖に仕込んだ刃を抜き、カレンをブッ刺して殺してしまいました。ガイゼル総統が刃を元に戻した直後にイナズマン登場。
ガイゼル総統「来たか、イナズマン。」
イナズマン「ガイゼル、自分の娘までも手にかけたのか。」
ガイゼル総統「私に歯向かう者は生かしてはおけん。お前もだ、イナズマン!」
即座に戦闘が始まります。外へ出て戦闘続行。ロケ地は新宿駅西口の淀橋浄水場跡地の空き地。後に東京都庁が移転するまでは荒涼とした空き地が広がり特撮番組ではよく登場しました。勝負は互角。
イナズマン「ガイゼル、人の心を持たない奴は許さん!」
ガイゼル総統「ほざくなイナズマン。デスパーシティーとともに消え失せろ。」
仕込み杖から刃を出して戦闘を続行するガイゼル総統。イナズマンは顔をパンチしようとしましたが、右目の手前でガイゼル総統は受け止めました。その後、イナズマンはチョップしましたがガイゼル総統に効いた様子はありません。さらにまたイナズマンは顔に向けてパンチしましたが、また右目の手前でガイゼル総統は受け止めました。この時、イナズマンは気がつきました。
イナズマン「なぜ目を庇う。この右目に秘密があるに違いない。」
イナズマンはガイゼルから刃を奪い、潰れている右目にブッ刺しました。すごい映像ですが、これはかなり効き、ガイゼル総統は苦しみ始めました。時空(?)が歪み、デスパーシティーの建物はなくなり(?)、気がつくとイナズマンとガイゼル総統はデスパーシティーの入口の辺りの海岸にいました。まだ夜。フィルターかけて撮っています。それでもしばらくイナズマンとガイゼル総統の戦いは続きました。イナズマンの飛び蹴りはかわされて空を切り
分身してジャンプして放ったパンチもかわされて空を切りましたが、イナズマンはガイゼルが持つ刃を奪って投げ捨てることに成功。最期はなんとパンチ一発でガイゼルは倒されたのでした。まさに死闘。ぜーバーを使っていないのが意外です。
最後の場面は荒井親子とイナズマンが海岸で登る朝日を観る場面。ルミは「本当の太陽」を初めて観ます。
荒井千津子「ルミちゃん、動物園でもどこでも好きなところへ連れてってあげるわ。みんなイナズマンのお陰よ。」
荒井ルミ「イナズマン、ありがとう。」
イナズマンはルミを抱き上げて肩の上に載せ、登る朝日を四人で一緒に観るのでした。
イナズマン「よかった。人類に平和が訪れて。」
放送された物語はこうして幕を閉じたのでした。
さて当初考えられていた話はこういう幸せな最後ではありませんでした。題名は「さらばガイゼル イナズマン最期の日」となっていました。加藤貢プロデューサー、塚田正煕監督、助監督の長石多可男さん、脚本を書いた上原正三さん、そして主役を演じた伴大介さんなどがやりたい放題していたのは映像を観ればよくわかると思いますが、かなり暴走した話でした。「さらばガイゼル イナズマン最期の日」は荒井誠も妻子も死に、渡五郎はガイゼル総統を倒すものの超能力をなくしてイナズマンへの変身能力を失い、最後は東映まんがまつりのイナズマンのポスターを何の感慨もなくみた渡五郎が歩行者天国の雑踏の中に消えていく、という話だったそうです。こういう最終回にならなかったのは、それまで皆の自由に任せていた平山亨プロデューサーが待ったをかけたからです。平山亨著「泣き虫プロデューサーの遺言状~TVヒーローと歩んだ50年~」から引用しましょう。
私は他にも番組を抱えていたので、基本的に『イナズマンF』は加藤くんたち若手に任せて好きにやってもらった。それであんな学生映画みたいに理屈っぽい作品になってしまったが、そういうのが良いというコアなファンもいるからね。ただ、最終回の脚本には異論があって、「宿敵のガイゼル総統を倒した渡五郎は生きる目的を失った人のように呆然と歩きながら雑踏の中に消えていった」というのは変えてもらった。そんな救いようのないシーンを見たって誰も喜ばないし、番組にとってもプラスにならないからやめようと言ったんだ。世の中が平和になったんだから、ヒーローは口笛でも吹きながら消えりゃいいんだよ。敵を倒して生きる目的を失ったなんて、子供向けのアクション番組でやるべきことじゃないからね。
というわけで加藤貢プロデューサー、塚田正煕監督、助監督の長石多可男さん、脚本を書いた上原正三さん、そして主役を演じた伴大介さんなどの暴走は止められてしまい、放送された最終回となったそうです。まあチーフプロデューサーは平山亨さんですから、そう言われてしまうとやめざるを得なかったのでしょう。
さて当初の構想通りに制作されていたら私がどう思ったのかはわかりません。でもジャイアントロボの最終回も子供心に残りましたから、そのままでもよかったような気もしますし、終盤の話をあまり覚えていなかったのもたしかなので、平山亨プロデューサーの待ったがかかってよかったのかなあとも思いますし、私には判断できません。
さて『イナズマンF』を取り上げるのも今日で最後。子供の事など考えずに自分達の作りたい話を制作したというのが改めてわかった気がします。子供達に媚びなかったからこそ幼かったけれども私の胸に響いたのでしょう。