神々の武装解除 ~雷について~ (original) (raw)
この広告は、90日以上更新していないブログに表示しています。
アメリカの100ドル札でおなじみの
ベンジャミン・フランクリン。世界的なベストセラーとなったユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』にも、科学技術が人々の生活を豊かにした初期の好例として、彼の雷についての実験が紹介されている。
100ドル紙幣に描かれているフランクリン(*1)
有名な例が雷だ。多くの文化では、稲妻は罪人を罰するために使われる、怒れる神の鉄槌だと信じられていた。一八世紀半ば、ベンジャミン・フランクリンは科学史でもとりわけ有名な実験を行った。雷雨のときに凧を揚げ、稲妻はただの電流に過ぎないという仮説を試したのだ。フランクリンはこのときの経験的観察結果と、電気エネルギーの特性についての知識を組み合わせ、避雷針を発明して神々の武装を解除することができた。(*2)
神々の武装を解除するベンジャミン・フランクリン(*3)
ハラリの言う通りギリシア神話のゼウス、ローマ神話のユピテル(ジュピター)、北欧神話のトール、ヒンドゥー教のインドラ、日本民間伝承の雷神など古今東西多くの神々が雷を使う。ユダヤ・キリスト・イスラム教の唯一神もまた雷を使い、ペシリテ人を恐れさせ、イスラエル人を救った。(*4)
ゼウス(*5)
ユピテル(*6)
トール(*7)
インドラ(*8)
雷神(*9)
フランクリンが避雷針を発明したのは1749年のことである。それ以降、我々は神々の鉄槌を恐れる必要がなくなった。ところでこの鉄槌はどのくらいのパワーを持っているのだろうか。2011年4月4日の東京電力電力供給量は3850万キロワット。これに対して雷のエネルギーは200億キロワットにもなる。(*10)
しかし我々は雷を蓄電していない。できないのだ。その理由は第一に電力があまりにも膨大すぎるためであり、第二に発生時間があまりに短すぎるためだという。(*11)。
ここで思い浮かぶのが超電導だ。超電導とは特定の金属や化合物を非常に低い温度へ冷却した時に、電気抵抗が急激に0になる現象のことを指す。物質を超電導状態のまま温度を室温程度まで上げることができれば超電導素材が完成する。これは材料科学の大いなる目標の一つだ。もしそうなれば我々が200億キロワットの「神々の鉄槌」を「神々の恩恵」として手に入れることも夢ではないかもしれない。
【引用元】
*2:河出書房新社 ユヴァル・ノア・ハラリ (著) 柴田裕之 (翻訳)『サピエンス全史(下)』p.77
*3:Benjamin Franklin and His Son, Divided by Independence | The New Republic
*4:旧約聖書:サムエル記上:7章:10節
*10:【Q&A】地震や雷で発電・蓄電できる? - Case#3.11 地震≫原発≫復興 科学コミュニケーターとみる東日本大震災
*11:6月26日は雷記念日!雷発電が普及しない理由とは?|不動産コラムサイト【いえらぶコラム】
【追記】
にほんブログ村のランキングに参加しています。
下のアイコンからにほんブログ村にアクセスしていただければ幸いです。