夜の水温 (original) (raw)

まず、近場の映画館の上映期間がめちゃ短くて、間に合ってよかった〜の気持ちが大きい。

公開前から特撮、造形、操演が楽しみで、とても満足な映画でした。ヤマタノオロチのデザインと造形がすごく好みだったし、ゴランザやムグムグルスの昭和平成ぽさのある怪獣たちの良さもあって、それがスクリーンいっぱいに動いていてワクワクしました。

現実世界(時宮の記憶の世界)にヤマタノオロチが現れて、壊した建物越しに首をもたげる構図は定番な気もするけど大好物なのでテンションが上がりました。あと部屋の中から怪獣を見ている視点も好き。

やっぱりミニチュアがどんどこ壊されて本物の炎が上がるという画作りが好きなんですよね。

ストーリーとしては、未完成の作品に対する未練が穂積となって現れて、執念はヤマタノオロチの姿になっていたのかなぁ。知られないまま忘れ去られてしまうかもしれない恐怖や焦りがヤマタノオロチとなって、制御不能になって(本人は亡くなっているから)創った世界の中で暴れてしまっていたのかなと。

本来の作品への愛着や家族への想いは穂積となって助けを求め、筆は朱莉ちゃん専用にムグムグルスになっていたのかなぁなんて想像しました。

この先本当に「神の筆」が撮られたらいいなぁと楽しみに思うと同時にじんときました。若者が希望を持って足を踏み出す描写に弱いので……

あと、私が知らないだけで特撮ファンには嬉しいオマージュがたくさんあったんだろうけど、「金子監督がリメイクした平成ガメラ」のセリフにふふっとなりました。平成ガメラめちゃ好きなんです。樋口監督が出演してるのもこのセリフが入った理由の一つかな?

8月は7冊。面白くて衝撃的な作品をいくつも読めた月だったように思う。やっぱり読書はいいなぁ。

8/2

密室の如き籠るもの/三津田信三

刀城言耶シリーズの波が来ていたのでさくっと刊行順に次の本を。こちらは短編集。ホラーよりはミステリ色強め。

表題作での、分類に当てはめて可能性を潰していく推理方法は難しいけど嫌いじゃないですね。凶鳥でも頭を使うけど楽しんで読んでいました。

そうして丁寧に検討をして推理をするのに何度も自らひっくり返してしまうので読んでいる側としてはリセットが大変なのですが、刀城言耶のその手法自体は嫌いじゃないです。

他の三篇、刀城言耶の出番が少ないのもこれはこれで面白かった。他の登場人物が丁寧にキャラクター付けされているから特に。迷家の胡散臭い感じ好き。

8/5

誰が勇者を殺したか/駄犬

うお〜〜〜〜とても良かった…………。

6月くらいに一度見かけて、その後書店に行くたびにプッシュされてるな〜とは思っていたのですが、いわゆる勇者ものを読んでこなかったことと、衝撃の展開!と言われると敬遠してしまう天邪鬼な気質が相まって気になりつつも避けていました。が、なんとなくエイヤで購入。そしたらめちゃくちゃ面白かった。

魔王を倒したあとに死んでしまった勇者の足跡を追うという話で、パーティの道中の描写はほとんど無し。当時のことがそれぞれの視点から描かれるという静かな進み方なんだけど、だんだんと「勇者はどんな人物だったのか」が明らかになってきて、彼の目的や正体はもしかして……?と気付いてからがまた面白かった。何度もじんと来て涙ぐみました。ハッピーエンドで本当に良かった!(もしかしてバドエンなのか?と身構えていたので……)

8/7

AΩ超空想科学怪奇譚/小林泰三

自分はSFが苦手だと思っているのですがこの作品はとても楽しんで読めた!

グロ描写は気分が悪くなるくらいの書きぶりなんだけど、でもギリギリ理解が追いつく塩梅のSFでどきどきハラハラしながら読みました。

何よりこれはある種のウルトラマンの可能性なんだ……と気付いてからはぐいぐい引き込まれて読みました。生命としての構造も文化も倫理観も違うエイリアンと人間が出会って相互理解して、しかも融合エンドじゃないですか……融合エンドに悲しくなるタイプなんですけど、そこに至る共感と理解と思いやりが良すぎてグワーッとなっています。読めて良かった。

8/14

バラバラ屋敷の怪談/大島清昭

短編集としてひとつひとつを楽しんで読んでいたら、あれもこれも繋がり始めて「あっそうか連作短編か…!」とハッとした。影踏亭もそうだったもんね。

主な怪談(怪異)は二つってことでいいのかな。片野様とワンピースの少女は直接には関係してない?

バラバラ屋敷はミステリ色強め、ワンピースは怪談としてのホラー、片野山古墳は人ならざる怪異としてのホラー、にしうり駅は都市伝説と異界の怖さ、と四つとも全部毛色が違って面白かった。

そろそろ時系列を整理したほうがいいかもしれないな〜と思ったり。

8/19

テメレア戦記6/ナオミ・ノヴィク

ちょっと久しぶりに読んだテメレア戦記。今回も面白かった!

グランビーを推していると自覚してからは彼の出番があるたびにきゃっきゃして読んでしまう笑

よくオーストラリアまで来てくれたし、相変わらずローレンスのために色々手助けしてくれるのが本当にいい人すぎてびっくりする。もう部下じゃないし、自分もキャプテンになってるし、7歳から空軍にいるんだからローレンスの考え方より空軍の在り方のほうが染み付いているはずなのに尊重しようとしてくれるし。なんでこんないい人なんだ??

前までイスキエルカのことが少し苦手だったのですが、今回は結構好きだった。言ってることに筋が通っているというか、単なる我儘じゃなく見えたというか(テメレアの言動のほうが無分別に思えることが多かったからかも)。

テメレアとイスキエルカの間に卵!?え?!ここがカップルに!?とまさかの可能性に驚いたし本人たちも甘い空気ゼロだけど、この二頭の子どもがどんなドラゴンなのかはすごく気になりますね。ないのかな。ちょっとその展開は見たいな。

8/20

玩具修理者小林泰三

AΩが面白かったから読んでみるか〜の気持ちで。『アリス殺し』に挫折した過去があるので小林泰三作品には尻込みする気持ちが少しあったんだけど、面白いよという感想が多かったので読んでみた。

玩具修理者」も「酔歩する男」もどちらも面白かった。「玩具修理者」はすごく短いけど、この短さだからこその面白くて悍ましさのあるホラーだった。解剖の描写のグロさはギリギリ耐えられた。もう少し詳細だったら読めなかったかもしれない……。

「酔歩する男」は時間の認識とか逆行で起こるパラレルな出来事とか、やや小難しい理屈が説明されるんだけど、その理屈を完全に理解する必要はなくて、「小竹田がどう大変な状況にあるか」は十分にわかる。わかるから怖い。

そしてその怖さは血沼にも伝染してしまい、真実に辿り着いてしまった…ということなのかな。

肉体は一つだけど意識が異なるから別人と捉えたり、観察により収束した非実在パラレルワールドと表現していいのか微妙だったり、そのへんの考え方が面白かった。SFすぎず着いていけてよかった。

8/26

テメレア戦記7/ナオミ・ノヴィク

オーストラリアを出発したローレンスとテメレアだったけど、めちゃくちゃ大変な試練が次々起こってずっとハラハラしっぱなし。

船は沈むわ捕虜になるわ無人島に放り出されるわ水兵が反乱を起こすわドラゴンと人の共同体と揉めるわインカ帝国に襲撃されるわ、人はたくさん死ぬしで戦争って本当に嫌なものだなって思う。

新しい仲間が増えたり懐かしい仲間と再会したり、また中国に行くことになりそうだったり、果たしてこれから一体どうなることやら……。

ぼんやりしていたら8月も10日を過ぎてしまいました。さて7月の読書記録です。冊数は4冊と少なめ。でも毎月小説を読めていることが嬉しいし楽しい。

7/11

山魔の如き嗤うもの/三津田信三

刀城言耶シリーズ、結構久しぶりに続きを読みました。今回も面白かった!

推理が二転三転してようやく真相が明らかになったかと思えば説明のつかないことも残り……というホラーな後味がいいバランス。

ミステリとしても、視点を変えると全くの別物に見えてくるというどんでん返しが気持ちいい。明らかに描写されているのに、それでも見逃されるように巧みに書かれているのがすごい。

7/23

失われたものたちの本/ジョン・コナリー

序盤にすごく時間をかけてしまったけれど、もう一つの世界に行ってからはぐんぐんと読み進められた。

特に騎士ローランドが好きだったのと、元の世界の人の持つ恐怖と混ざり合って世界が変容しているというのがとても面白かった。デイヴィッドの後日談いるのかな?と思ったけど、続編に繋がるようだし近いうちに読みたいです。

7/24

猿の戴冠式/小砂川チト

前に新聞の書評で読んで気になっていた本。あらすじから想像したのと全然違った。

どこまでが事実でどこからが登場人物の空想なのかが曖昧で、結局何が起きているのかがよくわからなかった。

ミステリとか、はっきりした「おしまい」が描かれるファンタジーばかり読んでるから馴染みがないだけなのか、私が純文学に向いてないのか。多分どちらかといえば因果関係や正解をはっきり知りたいタイプではある。

7/29

ドールハウスの惨劇/遠坂八重

高校生が探偵役のライトミステリ。といいつつ事件とその背景は全然ライトじゃないんだけど。でも登場人物たちが若いし現代物なのでテンポや読み心地は軽やかな印象。

空白部分があるからこそのミスリードにすっかり騙されてしまった。

あとタイトルの「ドールハウス」の本当の意味に最後の最後まで気付けなくて謎解きの部分でゾッとした。何度も「お城のよう」とか「美耶のために用意された」という文があったのに、「ドールハウスは誰が何のために楽しむものか」に思い至っていなくて、そういう意味か……と恐ろしくなりました。

再会があるといいなぁと思いつつ、ひとまずは続編を読みたいです。

10冊の大台〜!すごいよ自分〜この調子で読書を楽しんでいきたい。

6/4

テメレア戦記3/ナオミ・ノヴィク

2巻ではローレンスにもテメレアにもいらっとしたりもやもやしたりしてすっきりしなかったんだけど、3巻がめちゃくちゃ面白くてびっくりした。

今作、伏線というか積み重ねの手法?が凝ってるような気がしてて、例えばオスマンで馬がドラゴンに怯えずに側で仕事が出来ていることへの疑問があって、そのあとオスマンはナポレオン寄りに方向転換したんだ、ということがわかると同時にリエンが現れるわけなんだけど、それよりあとにフランス軍プロイセン軍の戦闘になって馬に匂い袋を使っていると判明して、リエンはあのときからオスマンにも中国式のやり方を教えて実益をもたらしていたんだ…!と気付いて驚いたんです。

何故かリエンがオスマンに現れた=オスマンにドラゴンのノウハウを教えた、とは思い至っていなくて、もしそれが微妙に目を逸らさせる手法なんだったらめっちゃすごいなと思った。

グランビーについても、序盤に家族の話があって、中盤でのテメレアの権利主張を手助けするなら昇進が遠のく云々のやりとりがあってからの、行軍中に卵が孵化するかもという事態に対してのグランビーの葛藤が、うまく積み上げられてきていて効果的だな〜と思った。自分のドラゴンは欲しくて、でもローレンスの手助けもしていたくて、上の命令で孵化に立ち会うというセオリーではなく戦場で降って湧いた幸運を良しとしたくない真面目なところもあって…。

ローレンスがグランビーの心情を察しているのも良き。

グランビーが担い手になれて本当にめちゃくちゃ嬉しいんだけど、私グランビーのことが好きなので、パートナーは気の強そうな女の子のドラゴンか〜〜〜とすごく複雑な気持ちになった。これは嫉妬なのか?雌ドラゴンに尽くすグランビーをあんまり見たくないというか……嫉妬かなこれ……

長くなったけどさらにたくさんのことを訳者さんと友人に手紙を送って満足しています。わはは。

6/10

テメレア戦記4/ナオミ・ノヴィク

こちらも友人に長文の感想手紙を書いたのでもうメモ書き程度に。

竜疫に見舞われる英国軍の危機。テメレアと仲の良いドラゴンたちが死ななくてよかった。

アフリカの竜の生まれ変わりを信じる一族のくだり、恐ろしい暴力性と理解のできなさで怖かった。

フランスのドラゴンを助けたいと訴えるテメレアと、竜疫を蔓延させる作戦を受け入れられず反逆を選ぶローレンスの終盤の行動の悲壮さがつらくもあり……。

木曜日にはココアを/青山美智子

色んな人の色んなひと時が、寂しかったりつらかったりしても優しく救われている感じの短編。

それぞれの人がゆるく繋がっていくのも好き。

6/13

ほうかごがかり/甲田学人

甲田先生の新作!怪談!小学校!とわくわくしながら読んだ。

1巻はホラーもグロさも痛みも控えめで読みやすいです。

6/18

叡智の図書館と十の謎/多崎礼

文庫で既読だけど、完全版ということで購入・再読。

6/23

テメレア戦記5/ナオミ・ノヴィク

冒頭からサルカイの再登場で喜んじゃった。

テメレアが交渉術を身に付けていたりリーダーとして振る舞えていたり、成長を感じられてよかった。

ひたすら仏の徴収部隊を叩き潰す残虐な命令に従ってるローレンスについ興奮するなどしたし、サルカイに軽蔑されてると思い込んでるローレンス、結構自己肯定感低くて可哀想になる……

6/24

竜の医師団2/庵野ゆき

1巻から少し間が空いちゃった。今回もすごくよかった!

真っ直ぐに熱い思いを持っている若者たちがすごく眩しくて、終始うるうるしていた(笑)

ディドウスの血をもらって金色の眼になるリョウくん良すぎませんか……?人外と人間の絡みシチュの中でもオタクが大好きなやつ。

ほうかごがかり2/甲田学人

七話!!!!!

甲田学人節炸裂という感じ。このへんの描写ほんとにうまくて、ぞわぞわしながら吐きそうになってた。でも読む。

怖がればいいのか死んじゃった子のことを悲しめばいいのか「ほうかご」とはなんなのかに頭を悩ませればいいのか……頭の中が忙しかった。

6/25

ほうかごがかり3/甲田学人

終わっちゃう〜という寂しさとともに読み進め、続きがあることがまずは嬉しい。

菊ちゃんほんとに辛かった……その死には理由がなくて、回避する方法もなくて……というのが本当に辛い。

中学生になった啓くんはどうやってほうかごに関わっていくのかな。

6/7

最恐の幽霊屋敷/大島清昭

怖いかも、と身構えて読んだら耐えられないほどではなかった!よかった!でもお風呂とか暗がりとかにはしばらくびくびくしてしまった(笑)

ホラー耐性ないので読みきれるか不安だったけど、怪異の正体というか由来が推測されてて一応検討がついてることと、ガンガンに人が死ぬので誰かが怖がっている描写が長くは続かなかったおかげかもしれない。

いやでも折りたたまれて死ぬのも一晩で300人が自殺するのも水槽の中に顔があるのも怖すぎるが。

5月に読んだ本

今月は3冊。図書館の魔女がとても読み応えのある作品なので、数が読めなくても満足度がすごいなという感想。

5/7

図書館の魔女 下/高田大介

twitterでも騒ぎまくったのでここでは割愛。

5/13

テメレア戦記2/ナオミ・ノヴィク

主人公たちにイラッとすることもありつつ読了。

完全無欠じゃなくて欠点があるところが引っかかるんだけど、そんな主人公は多くの物語に存在しているんだからそれだけで嫌いにはならないはずで。

じゃあなんでこんなにイラッとしちゃうのかな〜と思った時に、身近な欠点だからなのかなとなんとなく思った。

人間味があるというか、理解できる欠点だから、なんでそういう行動になるの?直せばいいのに?って思っちゃうのかな。

5/21

図書館の魔女 烏の伝言/高田大介

twitterで相変わらず騒いでいるので割愛。

図書館の魔女は単行本がどうしても欲しくて中古で買っちゃった。

文庫はちゃんと本屋で買ったので許してほしい。

6月も色々読むぞ〜。

ひとまずテメレア戦記の続きからかなと思ってる。

『図書館の魔女 烏の伝言』を読んで、うわ〜!好きだ〜!という気持ちでいっぱいになり、ただ吐き出します。感想でもなんでもない。

私はヴァーシャがすごくすごく好きなので、彼の再登場と活躍と前向きに生きている様子が見られてとても嬉しくて、それだけで胸がいっぱいなんですね。

初登場時、右腕が無いと書かれていて「ヴァーシャでは?!」と思って、でも違ってたら悲しいしミスリードかもしれないしと、期待しつつも用心して読んでいました。

その後も、笛を作っている、利き手が左、手品と聞いて表情を変える、手話を話題にする、喋れないが最も賢い人を知っている発言、義手、と示唆するものが出てくるたびに「もしかして?いやいや期待しちゃだめだ……」と予防線を張っていました。

これは信じてもいいのでは?と思ったのは作っていた笛は犬笛だった、長らくのお家芸だった、という文を読んだとき。

そのあと、人を謀って生きてきた、その代償にたった一人の肉親と右腕を失った、という文で確信。これで別人だったら何も信じられなくなると思った(笑)

結果、こんなに頑なにミスリードを疑わなくてもよかったですね。素直にいつ名乗ってくれるのかな?と楽しみにしておけばよかった……。

ところで終盤、牛目に「双子座」呼びされてるところ、最高に良すぎません?

足を洗ったはずの過去の己を呼び起こされて苦しんだり動揺したりする描写が好きなので……

罪滅ぼしだとしても己を己で許せなくても、それでも正しくあろうと努力してるんだろうな、という想像をしてしまって勝手に胸がいっぱいになっていました。

こう書くとキャラ萌えだけで読んでるんか?と思われそうですね……。

そんなことはないんですが、お話の構造というか組み立てというか要素というか言葉選びというか、そこもすごく好きなんだけどうまく言語化して説明ができないのがもどかしいです……。

姫御前と近衛と剛力の一行は無事に落ち延びられるのか?のあらすじからは予想できないほどに危うく恐ろしい事態になり、そこでの出会いと義に熱い人々と、裏切りの街で虐げられていた者が最後まで折れなかったこと、そして折れなかったのは仲間と新たな出会いとがあってのことで…という、ハラハラドキドキしながらも、本を持つ手に力がこもって必死に応援してしまうという、全力で読書した!って感じがすごく好きです。

図書館の魔女という作品を読めてよかったなと心から思います。

続編も、待っていていいんですよね……?

※注意書きです※

※ここからちょっと腐向けの話をします。

※問題ないよという方はスクロール↓

私、一作目からヴァーシャ×キリヒトだと思ってて……

刺客であったヴァーシャは本当のことを何も見せていなくて、商家の次男坊として軽快なキャラクターを演じていて、害する側だからこそ「キリヒト」の強さを理解して警戒していて、一方のキリヒトは人殺しに長けていて、でも本当は好きでやっているわけではなくて、守るためには殺すやり方しか学んでいなくて葛藤していて、本人の気質としては人当たりが良くて誰とでも親しくなろうとしていて、本当の己を偽っていたのは二人とも同じだけど、生かすために腕を切り落としたり、キリヒトのヴァーシャを問い詰める声が震えていたり、図書館の仕事をしながら二人でやりとりした言葉を覚えていてそれがきっかけでヴァーシャは自分の命を諦めないでいてくれたり、なんか、うわーっ!てなるんですよ。

ほわほわしたやりとりをしていた二人のシーンが好きで、ヴァーシャは演技でキリヒトは素だったわけだけど、全部が演技じゃないって私が信じたいのもあるし、ヴァーシャにも自分自身の気持ちとか言葉とか表情とかでキリヒトと相対したいって思ってくれないかな……と思っちゃって……

キリヒト、ヴァーシャに一番懐いてなかった?って思っちゃう。

牛目のことを「キリヒト並だ」と言ったところでうわーっ!てなったし、「俺ならキリヒトを向かわせたりしない」にもうわーっ!てなった。

前者は人を害する術を知っているが故にキリヒトの強さをわかっているんだな……他の近衛とはそこが違うよな……ってなったし、後者はキリヒトのことを大事にというか守る対象に含んでいる発言だと思ったので……。

古アルデシュの館に赴いたときの話はきっと書かれないんだろうけど、兄弟を弔って、自分にできることを見つけて、今がむしゃらに頑張っているヴァーシャが、いつかただのキリヒトとして図書館に勤めるようになったキリヒトと再会して、互いに会わなかった間の話を聞きたい・聞いてほしいってなってぽつぽつ会話をしながら距離を縮めていくようなそんな妄想を……しています……。

傍目には図書館の近衛と魔女の随身だったときのやりとりに見えるけど、自覚する立場が変わってのやりとりだから僅かな変化があるような……そんな妄想……。

2週間かかってしまった本があり、今月はあまり数は読めないなぁと思っていたけれど、下旬からさくさく読めて6冊という結果。

今月はファンタジー熱が加速した。読みたい本がどんどこ増える。毎週図書館か本屋に行きたい!

読みたい欲が強くなってるの、嬉しいんだけど困る。身体と時間が足りないから……。

4/1

楽園とは探偵の不在なり/斜線堂有紀

タイトルだけ話題になっていたことは知っていて、でもあらすじは知らなくて、『本の背骨が最後に残る』を読んでそれがすごく良かったので読んでみようと思った作品。

あらすじを読んで「特殊設定ミステリなんだな?!」ということすらはじめて知りましたが、めちゃくちゃ良かった…………。

特殊設定だからこそのトリックは勿論、天使が現れたことによって大切なものを奪われ傷ついた人の心情がすごくて……

ぐさぐさ刺さってしまい、読了後のtwitterで怒涛のツイートをしてしまった(混乱そのままで見苦しかったので後でごっそり削除したけど)。

あと『本の背骨が〜』でも思ったんだけど、文体そのものが好みというか、すごく読みやすくて相性がいい気がします。

4/22

図書館の魔女 上/高田大介

読み終えるまで2週間もかかってしまった。

テーマも登場人物も好きな感じなんだけどなかなか読みづらくて……。とても難解というほどではないのに飲み込めなくて目が滑ってしまい、文体の好みの問題なのかなぁと思ったり。

まぁ難解な箇所は難解だけど。たとえば仮定の叙法云々の話をしているところはそれが主題じゃないから完全に理解しなくても大丈夫だとは思うんだけど、でもやっぱり「片言隻語から全体を読む」ことがテーマの物語なので、隅々まで気が抜けないなと思う。

二部の後半は怒涛のスピード感でぐいぐい読まされた。

下巻どうなるんだろ〜。キリヒトが近衛兵の人と仲良くなれたらいいなと思ってる。

4/22

変身/カフカ

中学生くらいのときに読もうとしたけど、ザムザの変身後の姿の描写が気持ち悪くて挫折していました。

ザムザ可哀想だな〜という陳腐な感想になってしまいますが、ちゃんと読めてよかったです。

4/23

竜の医師団1/庵野ゆき

話題になっててちょっと出遅れたら地元書店に置いておらず、都会に出たときに購入した作品。

めーっちゃ面白い!

散りばめられた疑問は早すぎず遅すぎないタイミングで明かされて、でもそれは全ての答えではなくてあれは?これは?とまだ気になるところが残されていて引き込まれる。

人と竜の交流は読む前から「絶対好きなやつ!」と思ってたし予想を上回ってとても良い。リョウの「竜を救いたい」という真っ直ぐさがたまりません…。レオやリリとの交流も良い。早く2巻を読みたい!

4/27

テメレア戦記1 気高き王家の翼/ナオミ・ノヴィク

友人がファンレターを書くほどハマったと言っていたので読んでみた。面白い!

戦記ものはあんまり得意じゃないんだけど、人とドラゴン、人と人、ドラゴンとドラゴンの交友の描かれ方がとても良いし、テメレアの可愛さとローレンスの実直さも好きです。

まず何よりドラゴンとその担い手の間の信頼と愛情がとても深くて、ペアの数だけ在り方があり、それぞれにぐっとくるものがあります。

続きも楽しみ!

4/29

純喫茶トルンカ しあわせの香り

純喫茶トルンカの2作目。結構間が空いてしまったけれど、トルンカとそこにいる人々の温かさがすぐに染み込んできました。

収録の3作とも、うるっとくる素敵なお話でした。

みんな幸せに過ごしてほしい。

図書館の魔女の下巻とテメレア戦記2巻を借りてきたのでまずはそこから取り掛かる!

分厚い単行本が目の前にあるとワクワクするな〜。

もちろん文庫本もいつも持ち歩けるところがすごく好きなんだけど、幼少期に児童書向け海外ハードカバーファンタジーに夢中になっていたころを思い出すのでなんとなく懐かしさもあり……。

読み聞かせ以外で自分からハマったのがファンタジーだったから、原点みたいなものなのかなぁ。