第189話 能ある亀は頭を隠すPart1 (original) (raw)
ある日の午後、主人が吾輩のいる水槽に近づいて来た。
吾輩は、「きっと、いつもの巡回だろう」と思い、相手にしなかった。
しかし、主人は、いつもとは違い、水槽全体に被せている板の一部をはずし、その隙間から吾輩をじっと覗いていたのである。
いつもは板もはずさず、こちらをちらっと見て、さっさとその場を立ち去るのに・・・。「なしか?※1」と不思議に思っていると、今日は何か良いことが起きるような予感がしてきた。
それで、吾輩は、主人に出来るだけ近づきたいと思い、水槽の壁をよじ登ったのである。
そして、主人は、吾輩の顔のすぐ近くまで自分の顔を接近させてきた。
吾輩は、「何か美味しい食べ物をくれるのかなぁ?」と期待して、普段はあまり使わないカメ語で、クスクスとのどを鳴らしたのである。すると、主人は、
主人:おい、カメ子いったいどうした?
いつもはテレパシーで会話をしているのに、今日は、わざわざカメ語で、「どうしたの?」と言ってきたりして。
でも、この後、吾輩が期待していた言葉が主人の口からは出ず、意外な言葉が返ってきたのである。
主人:お前も知っているように、今、我が家にはいろいろな出来事が起こり、ごたごたしている。
それで、お前達の水替えや三度の飯の支度を十分にしてやることが出来ず、迷惑をかけているので、謝罪をしに来たのだ。本当にごめんよ!
主人からは、吾輩が期待していたような良い話はなかったが、なぜかとても胸が熱くなり、「何だ。そんなことか。我が家の事情はみんなわかっているので、あまり気にしないでも良いよ」と答えた。
すると、この後、主人はカメ輔がいる水槽に向かって行った。
そして、水槽の中を覗き込み、主人は言ったのである。
主人:おい、カメ輔。最近ワシらがパソコンでyou tubeを観ているとお前はいつもこちらを向いているなぁ。
もしかして、人間の言葉や人間社会のことを勉強しているのか?
すると、奥さんが突然、主人とカメ輔の会話に割り込んできたのである。
奥さん:カメの世界では、賢いカメのことを「能ある亀は頭(ず)を隠す※2」と言われているみたいだけれど、もしかしたら、カメ輔はそうかもしれないわね。
カメ輔は、たくさんいるカメの中から激選して我が家に連れてきたカメだもの※3。彼は、一番先頭ではなく、いつも二番手を走っているような目立たないカメだったけれど、何か特別な物を持っていると感じたのよ!
彼を選んだ私の目に狂いはなかったわ。
吾輩はそれを聞き、「ほう、なるほど。でもちょっとカメ輔をかいかぶり過ぎだよ」と思った。
このことについては、今夜にでもカメ輔にこっそり聞いてみることにしよう。
そして、この後、奥さんからもっとびっくりするような爆弾発言が飛び出してきたのである。
次回の話は、ますますおもしろくなるので、乞うご期待!
※1:なぜ?(大分県の方言)
※2:人間社会では「能ある鷹は爪を隠す」というが、カメの世界では「能ある亀は頭を隠す」と言っているらしい。
※2:第142話 自我のめざめ
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