ラブライブ!スーパースター‼ 3期第4話「No Rain, No Rainbow」感想 (original) (raw)
こんにちは。今回は、『ラブライブ!スーパースター‼』3期第4話「No Rain, No Rainbow」の感想を書いていきます。
第4話は鬼塚姉妹回であり2年生回でしたが、思っていたよりもヘビーな話が来てびっくりしました。
「夢」はラブライブ!シリーズを通してのテーマですが、「夢を追いかけることは無駄だ」と、ここまではっきりとしたアンチテーゼをメインキャラクターの口を通して語らせたことは今まで無かったように思います。
冬毬:わかりました。では、私は全力で姉者に思い知ってもらいます。夢を追いかけることが、いかに無駄かということを。
(『ラブライブ!スーパースター‼』3期4話)
ということで今回は、鬼塚冬毬の心情に焦点を合わせることにしましょう。
冬毬は、予想していたよりも複雑なキャラクターだったと私は感じています。効率・利益重視の人間性の中に、Liella!メンバーとの触れあいを通して「夢」が芽生えていく。私は、おおまかには、彼女はそんな道筋をたどるのかなと思っていました。
しかし、この第4話からすると、むしろ冬毬は、はじめは、夢を持つということを信じていたことになります。
夢を信じる気持ちを知らないのではなく、夢を信じる気持ちを枯らしてしまった子、それが冬毬なのです。
冬毬は姉の傷つきを恐れ、姉の笑顔を望むあまり、先回りをして姉の未来を縛りつけてしまいます。
私は精神疾患の経験を持つ人を支援する仕事をしていますが、精神疾患当事者の家族には、時々この冬毬のような人がいます。本人のことを大切に思っているからこそ、本人に失敗を回避させようと考えすぎてしまう。
支援者からしたら、もっと本人のことを信頼して放っておけばいいのに、と思います。本人の人生は本人のものなのですから。でも、それを軽々しくは口に出せません。本人の人生をずっと見てきた当の家族の複雑な思いは、支援者には計り知れないからです。
そんなことと重なるがゆえに、冬毬がかのんに言った言葉は私自身にも重く響きました。
冬毬:あなたと姉者の関係は、スクールアイドル活動をしている間だけになるかもしれない。けれど私は、これまでもこれからも、ずっと見ていくのです、姉者のことを。もう傷ついて欲しくないのです、姉者に。
(『ラブライブ!スーパースター‼』3期4話)
冬毬が間違っていると断ずることは簡単にはできません。姉の傷つきを恐れる冬毬の思いの奥底には、実は、冬毬自身の深い傷つきが存在しています。
第4話に込められたメッセージの通り、本当は大事なのは、傷つきも本人の大切な経験である、ということだと思います。けれども冬毬には、そのことが今は見えていません。
ところで姉・夏美は、どうして再び夢を持とうと思うことができたのでしょう。今まで見てきた夢とスクールアイドルの夢、それらは夏美にとって、どのように違うのでしょうか。
きっとそれはとてもシンプルで、「みんなと一緒だから」だという気がします。
2期第6話において、夏美がスクールアイドルの夢を持ち始めた時、彼女の目の前には、すでに同じ夢を信じている具体的な他者がいました。スクールアイドルそのものへの憧れというよりも、目の前でその夢を追うきな子、メイ、四季、あるいはかのんらへの憧れの気持ちが、夏美をスクールアイドルへと導いたように思います。
きな子:夢を叶えようと思ったら、傷ついたり落ち込んだりするから、笑顔になれる日が来るんすよね。
(『ラブライブ!スーパースター‼』3期4話)
夢を信じるとは、傷つきの先にある笑顔という、希望の物語を信じること。
そして、同じ物語を共有する他者=仲間がいるからこそ、それを信じることができる。夏美が得たのは、そんな仲間でした。
この3期第4話の終わりで、そのことを夏美は妹に伝えようとします。
果たしてそれがどれだけ冬毬の心に響いたのか、それは物語の続きを見てみないことには我々にはわかりません。冬毬は、今一度姉の夢を信じることができるようになるのでしょうか。
そしてまた、我々はこうも問うておきましょう。
冬毬自身もいつか「傷つきの先にある笑顔」というものを信じることができるようになるのでしょうか、と。冬毬自身が自分の夢を持とうと思えるようになる日が、いつか訪れるのでしょうか、と。
そんな冬毬の変化が描かれるのは、まだ少し先でしょう。楽しみに待っておきたいと思います。
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