対価 (original) (raw)

アイドルの接触イベントは初めてじゃないけど、男の子のアイドルという点では初めてだった。あと、記憶が正しければ「ハイタッチ」も初めてだったかも。日本のアイドルオタク的には握手とチェキが馴染み深い。

というか、アイドルって意外にもこんなに簡単に会えるんだって思い出した。しばらくドルオタやめてたから忘れてたのもあるし、こんなに「安く」会えていいのかと戸惑った。「安い」というのはエンタメ市場の狂った金銭価値基準もそうだし、アイドルの肉体的・精神的消費量をまるで鑑みていないことに対してだ。二次元のオタク専任だった頃、それはそれはお金を使った。単純に全ての単価が高いのもあるけど、私は物品以外の対価を受け取るのがどうも苦手なようで、物品以上の対価がないお布施的な自己満の方が満たされる性格だった。払った金額の対価はCDという物品で、オリコン1位という栄誉(?)で受け取っているはずだから、アイドルが無料(意図略)で接触イベントをしてくれるというのがなんだかやっぱり違和感だった。

ハイタの前にトークショーと言う名の挨拶があったんだけど、1人だけはやっぱり少し元気がないように見えた。名前は出さないけど… 誤解してほしくないのは、もちろんプロのアイドルとして十分なエネルギーではあったよ。ただ少し心の傷跡が見えた気がしただけ。いつも隠さないで全てを見せて伝えてきてくれたからこそ、ちょっといつもと違うと思っただけ。こんなことになって、誰も信用できなくてもおかしくない。憶測でものを語ることは極力したくないけど、彼らとの間にほんの少しだけ、でも明確に隙間が開いたと感じてるのは私だけなんだろうか。色々な考えが頭をよぎる中、ただ、今日来てくれてありがとうと思うばかりだった。

本題のハイタだけど、一番印象強かったのは、写真や映像よりもずっとずっと、フェイスラインがシャープだったこと。顔が骨から小さいのは勿論なんだけど、細いという印象の方が強かった。シュッとかいうレベルではなく、鋭利。痩せてた。あと目がデカすぎ。目が50個あるのかと思った、って一緒に来た妹とふざけて話したけど、本当に顔の半分を目が占めていると言っても過言ではないくらいの印象だった。目がデケえというのは散々レポで見ていたけど、本当に特大眼球だった。富士山を絵でしか見たことしかなくて、実際に新幹線の窓から見えた時に「うわ、富士山だ。」というような感じ。ハンサムという言葉を使ったことがないんだけど、誰が見てもハンサムだ。これは4回もスカウトされるわ。一目見るだけで大金を徴収するべきビジュアルなのに、無料(意図略)でハイタッチまでしてくれるのヤバすぎるでしょ。

一番愛おしく感じたのは、無料(略)なのに、すごく一生懸命にやってくれてると思ったことだった。数秒の中で目をバッチリと合わせることだけは徹底してる感じがした。あの短時間で何百人を捌くのに、1人も無下にできない状況でどれだけのエネルギーを使うだろう……。アイドルって物理的な移動とかダンスとかもそうだけど、魂からエネルギーを直に削って愛や求められているものに変えるというプロセスが、肉体と精神を酷使するものすごい重労働だと思う。ペンサって超神経使うよな…一番大変じゃないか…?これはめちゃくちゃ疲れる。なんか申し訳なくなった。予想だけど、名前を呼んでもらいたくて名札を付けているファンが8割方なので、まずは名札を見ることを優先しているんじゃないかな。私は彼の中で自分の名前と存在が紐づいてしまうこと(俗に言う認知)が嫌で名札をつけない人なので、逆に何の要求が来るかと余計に神経を使わせてしまっただろうか…。比較的簡単とはいえ失敗できない、かつ3秒ごとに切り替わる問題を数十分間ぶっ続けでやるなんて、ぶっちゃけ正気の沙汰ではない。てか、座ってていいのに。でもありがとうね。

彼のディテールの中でも声が特に好きなのに、肉声の記憶がないのが唯一悔やまれる部分だったかな。ちなみに、私は「RIIZEファイティン!」とだけ言って、彼はそのまま復唱してくれた。言葉は覚えてるのに音は覚えてないなんて、人体ってどういう仕組み?本当は別のことを言おうと考えてたんだけど、単純に時間が足りなかったのと、情勢を鑑みて変えた。他の人のレポで見たけど、ブースに入った瞬間バニラっぽい香りがしたって書いてあって、その情報を目で吸い取るみたいに瞳孔がかつてないほど開いた。普段香りものをつけないらしい彼が珍しくつけているということもそうだし、何より私はバニラの香りが世界で一番好きだからだ!その次にハニー、メープルが好き。好きな人と好きなものが一緒だったりすることってものすごいときめきじゃない?ちなみに香りの感想だけど、私は嗅覚が終わってるのでまったくわからなかった。集団によるミスディオール的な香りは私でもわかるくらい会場中に充満していたけど。あと、手のひらが触れた感触的なものは全く覚えてない。なんか強く叩きすぎた気もするし、もしかしたら触れてすらないかもしれない。

そして視覚の記憶しか残ってないことに気づいてから、接触イベントってうまくやれば五感でアイドルを感じられるめっちゃお得なイベントじゃん…と思った。まさに実質無料。これが対価だと言うなら受け取りすぎだ。

ものすごく大変であろう時に、今日朝からスケジュールもあって、しかも明日もステージがあるのに、 今日もここに来てくれたこと、魂削ってこんなに大変なプロセスを何百回も重ねてくれたこと、そのうちの1回を私のために使ってくれたこと、本当にありがとうと伝えたい。君から受け取った魂のかけらで私も私の人生を成功させなければならないと強く思ったし、君たちのために何かできるようになりたい。君たちにとっては仕事で、報酬の対価かもしれないけど、私にとっては、何度も言うようだけど…金銭の対価じゃなくて無償の愛をもらったと思ってるからさ。