「堤中納言物語」(坂田靖子):おちゃらけとギャグは違う(随想録―70) (original) (raw)

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堤中納言物語」(坂田靖子):おちゃらけとギャグは違う(随想録―70)

恒例になった「マンガ日本の古典」(中央公論新社)の評論。「堤中納言物語」は、平安後期の説話物語集。とくに『虫めづる姫君』で有名な説話集だ。この代表作は、「初めから」、読者を笑わせる意図を持っているので、ある意味作画はしやすいだろう。特に紹介はしない。

問題は、この作品以外のものである。『虫・・・』ほか11作品がフィーチャーされているが、読み進むにつれて私は読書意欲が減退していき、最後まで読めなかった。「恋」を描いて、「軽すぎる」のだ。また、平安期ぽい「うりざね顔」が多用されているのも気になった。
「うりざね顔」については、同シリーズの『源氏物語』(長谷川法世)という「超駄作」ではすべてこのパターンで、登場人物の区別がつかないほど、漫画家の独自性を放棄しているので、それほどでもない。まあ、坂田靖子の「うりざね顔」は許容できる範囲だ。

もう一つの、「軽すぎる恋」については、やはりこれは作画者の坂田靖子の実力の限界なのだろう。坂田は、軽妙・洒脱でユーモアあふれる作風で定評があるようだが、実は私はよく知らない。かつてマンガクラブにいたころ、少女マンガは読み漁ったが、坂田靖子は読んだ記憶がなく、今回読んだのが初、といったところだ。当時、あまり興味がなかったのだな。まあ、大島弓子倉多江美ほど私の興味を引かなかった。(ちなみにこの2人はこのシリーズには登場していない。)

坂田は、「おちゃらけ」を描けてはいても、「ギャグ」は描けていない。ちょっと可笑しい、くすっ、といったレベルの作画をしている。もしギャグ路線で行くのなら、中川いさみのように天地がひっくり返るような作品を描くべきだし、「恋」を描くということにおいても、同シリーズの『ものくさ太郎』(やまだ紫)のごとく、笑えるけれども、ちゃんと「恋」を描き切る作品にもなっていない。

まあ、何事も中途半端なのだな、坂田靖子。今後、私はこの人の作品を二度と手にすることはないだろう。

(2022.12.21)

今日の7句

水仙
可愛いツボミ
覗きけり

(2022.12.10)

クチナシ
冬の姿や
キリっとね

常緑樹。

(2022.12.10)

春を待ち
硬いツボミの
ツバキかな

(2022.12.10)

真っ赤にぞ
壁にはりつく
木蔦かな

(2022.12.10)

石の塚
ストーンヘンジ
余り石

畑から余分な石を抜き取り、積んだもの。農家の苦心の結果。

(2022.12.11)

隙あらば
どこでも生える
タネツケバナ

稲の種を蒔く適期に咲くのでタネツケバナ

(2022.12.11)

霜溶けて
つややかな葉の
アブラナ

(2022.12.11)

堤中納言物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

虫めづる姫君 堤中納言物語 (古典新訳文庫)