【アニメ『虚構推理 (In/Spectre)』】さすがは小説原作クオリティ!知的好奇心をくすぐる理知的な物言いと理論構築が魅力の名作アニメ。 (original) (raw)
アニメ
虚構推理 (In/Spectre)
さすがは小説原作クオリティ!知的好奇心をくすぐる理知的な物言いと理論構築が魅力の名作アニメ
『虚構推理』とは
『虚構推理』は城平京先生による小説シリーズ。
怪異たちの知恵を司る神となった少女と不死身の男性の2人を中心に繰り広げられるミステリである。
2011年より講談社から刊行されている。
2012年に第12回本格ミステリ大賞で小説部門を受賞。
2012年版本格ミステリ・ベスト10で4位に選出された。
2021年10月時点で、シリーズ累計発行部数は400万部を突破している。
また2015年以降からは、講談社の漫画雑誌「少年マガジンR」でのコミカライズやブレインズ・ベース制作によるアニメ化などのメディアミックスが行われている。
本シリーズの第1作は『虚構推理 鋼人七瀬』である。
この小説は2011年に講談社ノベルスから刊行された。
その後、2015年に講談社が「少年マガジンR」を創刊するにあたり、同誌でコミカライズが掲載されることが発表され、創刊号から連載がスタートした。
コミカライズは片瀬茶柴先生が担当しており、片瀬先生は本作で漫画家デビューを果たした。
本シリーズは「虚構」をテーマとしており、事件の真実よりも「どうやって人々を納得させるか」に重きが置かれている。
城平先生は、『雨月物語』の「蛇性の婬」を読んで「価値観や理屈がねじれて歪んでいても、なぜか全てがおさまるべき所におさまって世界がうまく成立していると見える、けれど何かおかしい」と感じたといい、そこから本シリーズの着想を得たと述べている。
しかしシリーズ第1作の『虚構推理 鋼人七瀬』は、「妖怪や幽霊が当たり前に実在し、まごうことなき事件の真相をすっかり明らかにした後で、四種類の《嘘の解決》をあらかじめ嘘とことわった上で並べる」という内容から、果たしてミステリと呼べるのかという議論を巻き起こすことになった。
2017年、『虚構推理 鋼人七瀬』のコミカライズが完結する。
しかしその後も「城平が続編小説を執筆し、それを片瀬がコミカライズする」という形で連載が続けられており、加えて城平先生が執筆した続編小説も講談社タイガから書籍化されている。
なお『虚構推理 鋼人七瀬』では清原紘氏がカバーイラストを手掛けているが、講談社タイガから刊行された書籍では片瀬先生がイラストを担当している。
アニメ『虚構推理 (In/Spectre)』とは
2019年1月に漫画版のテレビアニメ化が発表された。
第1期『虚構推理 (In/Spectre)』は、2020年1月から3月までテレビ朝日・BS日テレほかにて放送。
原作の長編『虚構推理 鋼人七瀬』をメインに、プロローグ(琴子と九郎の出会い)と本編の間に短編集より『ヌシの大蛇は聞いていた』を挿入した構成となっている。
第2期『虚構推理 Season2』は、2023年1月よりTOKYO MX・BS日テレにて放送された。
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あらすじ
1st Season
虚構推理「鋼人七瀬編」
主人公・岩永琴子は、怪異絡みのトラブルを解決する日々を送っていた。
ある日、琴子のもとに、怪異から相談が持ち込まれる。
それは真倉坂市という地方都市で、「鋼人七瀬」と呼ばれる怪異が暴れているので対処してほしいというものだった。
琴子は真倉坂市に赴き、現地で出会った弓原紗季という警官に協力を要請する。
同じころ、琴子の恋人・桜川九郎は突如消息を絶った従姉の六花を探す途中、真倉坂市に立ち寄りそこで「鋼人七瀬」と遭遇する。
九郎は「鋼人七瀬」と戦うが、「鋼人七瀬」を退治することはできなかった。
その現場を目撃した琴子と紗季は九郎と合流し、3人で「鋼人七瀬」を退治する策を練り始める。
一方「鋼人七瀬」は力を増していき、紗季の同僚を殺害するに至る。
インターネット上には「鋼人七瀬」のまとめサイトがあり、殺人事件を受けて書き込みが多数寄せられていた。
琴子は六花がこのサイトを管理しており、サイトの閲覧者の想像力を膨らませることで「鋼人七瀬」を実体化させたのだと気づく。
そして4つの「虚構の推理」をまとめサイトで披露し、「鋼人七瀬は実在しない」と閲覧者に思わせることで「鋼人七瀬」を消滅に導く。
登場人物
岩永琴子
声 - 鬼頭明里
本シリーズの主人公。
作中世界の名家・岩永家の令嬢で大学生。
一人称は「私」。
人間だが11歳のときに怪異たちの知恵の神になるという契約を交わしており、それ以来社会の秩序を守るため怪異に関するトラブルの解決に尽力している。
怪異が関係している事件・事故を、人間社会において受け入れられる表向きの答えの必要性や、また人智を超えた価値観である怪異に真相を詳らかにすることが必ずしも適格ではないことから、詭弁や架空のストーリーの構築に長けている。
可愛らしい容姿の美少女だが、小柄で作中ではしばしば中学生に間違われる。
また怪異たちの知恵の神になることと引き換えに片目と片足を失っており、右目には義眼、左足には義足をはめている。
外出時には赤色のステッキをついて歩く。
風貌はお嬢様然としているが、しばしばその風貌にそぐわない言動を見せる。
特に下ネタを言うことが多く、この点については複数の作中人物から「品がない」「たちが悪い」と指摘されている。
桜川九郎
声 - 宮野真守、本山かおり(少年)
琴子と同じ大学に通う大学院生。
琴子の彼氏。
一人称は「僕」。
人間だが、幼いころに祖母(声 - 大南悠)から人魚とくだんの肉を食べさせられた影響で、不死身の身体と「未来を自分の望むものに決定できる能力」を有している。
ただし、未来を決定する能力を使う際はその都度死ぬ必要がある。
好きな女性のタイプは従姉の六花であり、六花と似ている紗季と長期にわたって交際していたが、婚前旅行先で発生したトラブルが遠因となり別れる。
その後琴子から告白され、琴子が高校3年のときに恋人として正式に付き合うようになり、現在に至る。
琴子のことをぞんざいに扱うが、彼なりに琴子の身を案じており、特に六花の魔の手が琴子に及ばないよう苦心している。
弓原紗季
声 - 福圓美里
真倉坂市の警察署の交通課に勤める女性警官。
琴子が通う大学のOGであり、九郎の元彼女。
九郎とは結婚も視野に入れていたが、婚前旅行先で発生したトラブルが原因で九郎の体質を知り、恐怖から彼との別れを選ぶ。
真倉坂市で「鋼人七瀬」と遭遇したところを琴子に救われ、琴子や九郎と協力して鋼人七瀬への対処に当たる。
九郎と別れた後も彼のことを引きずっており、琴子とはいがみ合うこともあったが、「鋼人七瀬」消滅後、九郎のことを吹っ切る。
桜川六花
声 - 佐古真弓、前田玲奈(少女)
九郎の従姉。
人間だが、従弟の九郎と同じく不死身の身体と「未来を自分の望むものに決定できる能力」を有している。
琴子も通院していた病院に裏取引による長期の検査入院をしていたが院長の退任により退院させられ、一時岩永家に居候していたが現在は失踪中。
人間の想像力が怪異を生み出す力を持つことに注目しており、そのことを利用して、自身の身体を普通に戻せる怪異を生み出そうと企んでいる。
自身の能力で状況を絶えず操作しており、生活費もそれを利用してギャンブル等で稼いでいる模様。
主題歌
- 「モノノケ・イン・ザ・フィクション」
嘘とカメレオンによる第1期オープニングテーマ。
作詞はチャム(.△)、作曲・編曲は渡辺壮亮氏。
- 「LAST DANCE」
宮野真守氏による第1期エンディングテーマ。
作詞は由潮、作曲・編曲はJin Nakamura。
- 「火炎放射器とわたし」
七瀬かりん(CV.上坂すみれ)による第1期第4話劇中歌。
作詞は桑原永江さんと漫画版作者の片瀬茶紫先生、作曲・編曲は渡部チェル氏。
生前の七瀬かりんがレギュラー出演した深夜連続ドラマ『青春!火吹き娘!』の主題歌という設定であり、漫画版『虚構推理』に分散して出てくる歌詞を基に制作された。
作品紹介の宣材にすっかり騙されたわ!
本作はずっとおすすめされてきた作品だった。
タイトルはなんだか知的っぽくてかなり好み。
だが作品紹介の宣材が、本作が好みではないことを匂わせていた。
それがこれ↓。
『虚構推理』なんて興味深いタイトルをつけておいて、実は不思議魔法少女の物語?
釣りなのか?
個人的に不思議魔法少女系は、おそらく最も観ないアニメのジャンルである。
そう思ってずっと敬遠してきたが、あまりに推してくるからこのたび意を決して第1話を視聴してみた。
結論は、久しぶりに一気見するほど相当面白い作品だった。
いやはや、やはり食わず嫌いはよくないな。
同じように宣材を見て本作を敬遠している人がもしいるなら、安心してほしい。
この宣材のシーンは魔法シーンでもなんでもない。
むしろかなり笑えるシーンだったから、物語の内容を示唆するものでは一切ない。
小説原作だからこそ?
1クールをキッチリ完結させる構成の妙
1st Seasonの大半は「鋼人七瀬」にまつわる物語である。
そして「鋼人七瀬」は1st Seasonでキッチリ完結してくれている。
中途半端に2ndへ持ち越さず、見事に1クール12話で収められているのは視聴者としては非常に有り難い。
ちなみにここでいう完結とは、あくまで「鋼人七瀬」というひとつのエピソードのみに限る。
これが出来たのは原作が各章ごとに分けられているからだろう。
1クール内で長編を1話、残りを短編に充てる構成は小説原作ならでは。
続く2nd Seasonも、もちろん1クールで十分に楽しめる作品となっている。
さすがは小説原作
知的好奇心をくすぐる理知的な物言いと理論構築
理知的な物言い
本作はさすが小説が原作だけあって、非常に丁寧な日本語を遣う。
だからといって堅苦しくはない。
おまけに文学的ギャグ要素ともいえる言い回しも散見する秀逸な作品となっている。
例えば「破瓜」というセリフがあった。
恥ずかしながら知らない単語が故に思わず調べてしまった…。
これ、みんな知ってる言葉なの?
意味は割愛するがこんな言葉がギャグとして遣われ、それに対し正確にツッコミを入れられる登場人物たちの存在は、知的好奇心をくすぐり続ける。
ついでに言えば、「破瓜」と発言したのは件の作品紹介の宣材写真の少女。
このギャップも本作の魅力であることを付け加えておく。
ちなみに再度確認するが、「破瓜」ってみんなが知ってる言葉なの??
巧妙な虚構の理論構築
1st Seasonは大半が「鋼人七瀬」にまつわる物語である。
「鋼人七瀬」の物語の根幹は、推理というより議論と呼んだ方が適切な表現だといえる。
どちらがその他大勢を納得させられるだけの嘘(虚構)をつけるか。
その一点に争点は絞られる。
その虚構理論を構築するために群衆心理を推理するといった具合だ。
結果的に4つの「虚構の推理」をまとめるのだが、巧妙な理論と巧みな人心掌握術で少女が群衆心理を操作していく様は見応え十分。
存分に知的好奇心をくすぐってくれる。
※注意:暴力的シーンあり
ヒロインの風貌からはおよそ想像がつかないが、本作には暴力的なシーンが割と多く存在する。
ちなみにヒロインも顔こそ幼いが、一眼一足というかなりエグい境遇にある。
気にする人は注意が必要だ。
ただし個人的にはさほど気にはならなかった。
それはおそらくヒロインの魅力的なキャラに起因しているかと思う。
まず一眼一足という境遇にも関わらず、ネガティブな感情が一切ない。
おまけに下ネタまで言えちゃう。
そして何より、どんなに暴力的なシーンでもヒロインが致命傷を負うことはなかった。
この安心感が本作をほんわかした印象に落ち着かせてくれたように感じる。
子供に見せられるかというと悩ましいところだが、大人は十分楽しめる作品となっていることは間違いない。
第2期『虚構推理 Season2』
2023年1月よりTOKYO MX・BS日テレにて第2期『虚構推理 Season2』が放送。
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