請求の範囲、明細書の記載要件と無効理由 特許法36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く) (original) (raw)

こんにちは

意義申し立て、無効審判のときにでも扱おうと思っていたのですが、せっかくなので復習も兼ねて請求の範囲、明細書の記載要件と無効理由を整理しておきましょう。

拒絶理由にはなるけど無効理由にはならないものがあります。

特許無効審判の条文を見てみましょう。(以下は抜粋ですが123条は特別に重要な条文なのでぜひ条文集で全体をご確認ください。)

(特許無効審判)
第百二十三条

特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
(1-3項 略)
四その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。

(以下略)

--------------- 特許法 第百二十三条 引用ここまで ------------

以下上記の赤に該当するところが36条で無効理由になるところです。

(特許出願)
第三十六条

特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二発明者の氏名及び住所又は居所
2願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
3前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一発明の名称
二図面の簡単な説明
三発明の詳細な説明
4前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二特許を受けようとする発明が明確であること。
三請求項ごとの記載が簡潔であること。
四その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。

7第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

--------------- 特許法 第三十六条 引用ここまで ------------

36条の各項はどれが、どれかわかりますか。復習しましょう。

36条4項号は明細書側の記載要件でした。

ipstudy.hatenablog.com

36条4項2号の文献公知発明の開示は無効理由にはなっていません。

ipstudy.hatenablog.com

36条6項は請求の範囲の側の記載要件でしたね。

ipstudy.hatenablog.com

マルチマルチクレームは36条6項4号の経済産業省令で定めているものですので、拒絶にはなるのですが、無効理由にはなっていないのですね。

ipstudy.hatenablog.com

------------------------------------------------------

ここから以下の話は36条から離れます。別の機会に無効審判については深堀したいのですが、無効理由は重要ですので36条以外についてもここで触れておきます。

上記以外で無効理由(と異議申立理由の両方)にならないものは

が有名なものです。そもそも出願当初の明細書にはちゃんと書いてあるのだから審査がOKで設定登録した後はいまさら無効にはしない、そういう扱いなのでしょう。単一性も同様に出願当初の明細書には含まれている内容です。

出願当初の明細書にもともと書いていなかった新規事項の追加(17条の2第3項)は無効理由にも異議申立理由になりますが、それとは違反の性質が違うのですね。

拒絶理由にも無効理由にもどちらにもなるが、意義申立理由だけ外されているものとして共同出願違反、冒認出願があります。異議申立は査定系なので特許庁の審査に対しての異議ありということですから、共同出願違反、冒認出願については、特許庁の審査が過誤があるかの判断という性質のものではないため、誰が特許を受ける権利があるのかの争いは当事者系の無効審判でやってほしいということなのでしょう。

ちなみに拒絶理由でも異議申立理由でもないのだが、無効理由だけのものもあります。設定登録後に無効にする理由が発生するようなものです。123条の7項、8項ですね。

(特許無効審判)
第百二十三条

(1項-6項 略)
七特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許が条約に違反することとなつたとき。
八その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第百二十六条第一項ただし書若しくは第五項から第七項まで(第百二十条の五第九項又は第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)、第百二十条の五第二項ただし書又は第百三十四条の二第一項ただし書の規定に違反してされたとき。

--------------- 特許法 第百二十三条 引用ここまで ------------

試験にも頻出ですし、実務的にも重要ですので、拒絶査定49条、異議申立113条、無効審判123条はお手持ちの条文集でよく読んでおいてください。条文に書いてあれば拒絶理由なり、異議申立理由なり、無効理由なりに該当するとうことでえす。これらは限定列挙ですので条文に書いていないということはその理由にはならないものです。