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映画 さよなら子供たち 1987年のフランス映画、ルイ・マル監督の「さよなら子供たち」を観ました。私が初めてフランス映画の魅力を知ったのがルイ・マル監督の「地下鉄のザジ」・・・「死刑台のエレベーター」も有名ですね。そのルイ・マル監督の「さよなら子供たち」も、悲しい物語ですが少年の感性が瑞々しく描かれていて、私の大好きな作品です。以前、幸運にもBSで放送されて録画したものを繰り返して観ていますがフランス映画に出て来る少年ってなんでこんなに美しいの、と観るたびに思ってしまいす。ネタバレ注意!映画 さよなら子供たち_a0223379_17114043.jpg舞台はナチス占領下のフランス。戦火のパリから、カトリック僧院の寄宿学校に疎開した少年の悲しくも美しい一冬の物語。ルイ・マル監督の12歳の時の体験を綴った自伝的作品です。1944年、パリの駅のホームから映画は始まります。休暇を終え、疎開先の寄宿学校へ戻るジュリアンは12歳になるのに見送りに来た母親に行きたくないと駄々をこねる甘えん坊。母親の付けたおでこの赤いキスマークが可愛いです。列車の音と、車窓から見える寒々とした風景が母親と別れた後のジュリアンの不安な心を映し出しシューベルトの「楽興の時」のピアノの音がジュリアンの心に寄り添うように静かに流れるのでした。ある日、寄宿学校に3人の少年が転入してきます。その中のひとり、ボネという少年がジュリアンのクラスにやってきました。どこか打ち解けないボネに、歓迎の挨拶代わりのイジメごっこが始まりジュリアンもまた他の生徒と同じようにボネに冷たくしたりするのでした。しかしボネは成績優秀でピアノも上手。それまで優等生だったジュリアンのライバル意識をくすぐるのでした。ベッドが隣同士で読書の趣味が同じなのになかなか仲良くなれないふたり。みんなにいじめられてもボネにとって学校は束の間の楽園のような場所でした。裕福な家庭の子供たちが暮らす寄宿学校。校長先生のジャン神父をはじめ職員もみな良心的です。子供たちが勉強したり無邪気に遊んだりしている姿だけを見ていると戦争の最中であることを忘れてしまいそうになりますが空襲警報や停電、食糧難や寒さ、時折学校にやって来る義勇兵やドイツ兵の姿など、ここにも例外なく戦争の影が忍び寄って来ているのでした。給食の豚肉を食べないボネ。夜中のお祈りなど、ボネのすることは普通の男の子と少し違います。校長先生のボネに対する態度もなぜか匿っているような印象。不思議に思ったジュリアンは好奇心からボネの私物を盗み見してしまうのでした。そしてボネはユダヤ人で、この学校に匿われていることを知るのです。と言っても、ジュリアンにはまだユダヤ人がなぜ身を隠さねばならないのか、わからずにいたのですが。次第に打ち解けて仲良くなっていったふたり。真夜中の懐中電灯で一緒に読んだ本、ピアノの連弾や大笑いして楽しんだチャップリンの映画・・・しかし、そんな日々は長く続きませんでした。密告によってボネたち3人と、ボネ達を匿った罪で校長先生もゲシュタボに捕らわれてしまうのでした。中庭に集められた生徒たちの前を校長先生やボネたちが連行されていきます。誰からともなく「さよなら神父さま」という声が聴こえその声が次々と広がっていきます。そして校長先生も答えます。「さよなら子供たち、またな」と。そして裏門を出る直前にジュリアンの方を振り向くボネ。ボネに「さよなら」と小さく手を振るジュリアン。なぜ?何もしていないのに・・・理不尽な光景が理解できないでじっと見つめるジュリアン。ジュリアンの瞳がだんだん潤んでいく最後のカットも心を揺さぶるものがありました。映画 さよなら子供たち_a0223379_1713142.jpgボネたちはアウシュビッツで、校長先生はマウトハウゼンで死亡。最後にルイ・マル監督自身の声でナレーションが入ります。「私は死ぬまで、あの1月の朝を忘れない」生涯心に刻まれた永遠の別れの朝のこと。監督として世界的な名声を得た後の55歳になって撮った作品と知って驚きました。どんな映画の撮影中にも、自分自身の人生をもう一度見つめ直すように、少年時代の体験を映画化する構想をずっと温めていたのでしょう。残虐なシーンなく戦争の悲劇を伝える手法も、そうした年月が余計なものを取り除き、研ぎ澄まされた純度の高い映画の仕上がりに繋がったのかもしれません。宗教を超えてボネたちを守ろうとした校長先生のジャン神父。聖体拝領の日の説教にもこの映画のメッセージが込められています。世の中は反目と憎しみに満ちている。嘘や裏切りが横行し、信者同士が殺しあっている。だが、利己主義や無関心は許されない。物質的豊かさは魂を堕落させる。冨は人間を不誠実にし、軽蔑すべき存在に変える。持たざるものの怒り尊大な冨に向けられる。信者の一番大切な義務「慈悲」を忘れぬように悪をもって悪に対するな。飢えた敵には食事を、渇いた敵には飲み物を。祈りをささげましょう。被害者だけではなく加害者のためにも。この映画の素晴らしいところはドイツ兵だけが悪人ではなく、フランス人の中にも親独義勇兵がいてユダヤ人狩りをしていたということ。寄宿生たちの料理番として働く、足が不自由で貧しいジョセフをジュリアンたちは闇取引などで都合よく利用していたこと。ジョセフの密告も実はジュリアン達にも責任があるということもちゃんと描かれているのです。戦争の悲劇だけでなく人間の本質をきちんと描いたルイ・マル監督。ぜひおすすめの映画です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・原題:Au revoir les enfants製作年:1987年 製作国:フランス・西ドイツ監督:ルイ・マル 製作:ルイ・マル 脚本:ルイ・マル 出演:ガスパール・マネス/ジュリアン ラファエル・フェジト/ボネ フランシーヌ・ラセット/ジュリアンの母 フィリップ・モリエ・ジュヌー/ジャン神父・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆ ☆ ☆ランキングの応援に駆けつけてくれたブログ「猫日和。キルト日和。」でおなじみのふーくん。ふーくんバナーをクリックするときっとあなたにもいいことが・・・ にほんブログ村 写真ブログ フォトエッセイへ応援ありがとうございます。 by ishikoro-b | 2015-08-12 17:55 映画 Comments(0) << 金持神社を訪ねて・鳥取県日野町 100日で100脚の椅子・猪熊... >> 小さな旅で見つけた美しい風景、素敵なものたち。 by ishikoro-bプロフィールを見る 画像一覧 更新を通知する 最新の記事 十四夜月とスーパームーン at 2024-10-17 23:41 彼岸のヒガンバナ at 2024-10-13 22:37 エノキの実・岡山県自然保護セ.. at 2024-10-08 22:29 ヒガンバナとミズアオイ・岡山.. at 2024-10-02 23:30 秋の使者飛来・みやま公園 at 2024-09-26 23:07 カテゴリ 春の野の花 夏の野の花 秋の野の花 冬の野の花 絵本 映画 春の旅 夏の旅 秋の旅 冬の旅 自然 日々是好日 フォト575 文学 はじめまして その他 最新のコメント ひろかず様 技もなにも.. by ishikoro-b at 22:30 野鳥を手に乗せて餌を食べ.. by ひろかず at 23:06 ひろかず様 コメン.. by ishikoro-b at 22:06 白鳥の白さが青いコメント.. by ひろかず at 09:12 この様な書込大変失礼なが.. by aki at 23:29 阿修羅さま コメントあ.. by ishikoro-b at 00:34 石ころ様 だんだん暮れ.. by 阿修羅 at 08:41 リンク集 main site 石ころホリデー 猫日和。キルト日和。 くるくるbookダイアリー ワタリガラス エンジョイキャリアライフフォロー中のブログ 今日の一枚 ロマラン店長のつぶやき serendipity ... 以前の記事 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 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