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映画 ナチュラル ウーマン またまた素晴らしい映画に出会いました。アカデミー賞の外国語映画賞受賞のチリ映画「ナチュラルウーマン」です。監督はセバスティアン・レリオ。アカデミー賞の作品賞も監督賞も主演女優賞も全部この作品にあげたい!!こんなふうに行きなくちゃ、と思わせてくれる美しくも切ない映画でした。 映画 ナチュラル ウーマン_a0223379_227511.jpg映画はイグアスの滝の空撮から・・・力強い滝の水しぶきが、やがてサンティアゴにあるサウナのミストにつながって、パワフルでエモーショナルな愛の物語が始まります。サウナでマッサージを受けているのはオルランド、57歳。妻子とは別居中。テキスタイルの会社を経営しながら年の離れた恋人、マリーナと暮らしていました。マリーナはトランスジェンダー。昼間はウェイトレス、夜はナイトクラブで歌いながらオペラ歌手を目指しています。その日はマリーナの誕生日。オルランドからのお祝いはイグアスの滝の旅行券でした。幸せそうなふたり・・・しかし、いつものように愛を交わした後、突然別れがやってくるのです。ベッドで体調不良を訴えたオルランドはマリーナがすぐに病院へ連れて行くも動脈瘤破裂と診断されあっけなく帰らぬ人となってしまうのでした。映画 ナチュラル ウーマン_a0223379_21175049.jpg愛する人を失い深い悲しみの中にいるマリーナ。トランスジェンダーであるがゆえにあらぬ疑いをかけられ詮索され侮辱され病院や警察から受ける理不尽な扱いは耐え難いものでした。それにも増して立ちはだかるオルランドの遺族との確執。遺族からすればマリーナは夫、父を奪った憎き存在。ましてや相手がトランスジェンダーなのですから拒否反応は凄まじいものがあります。ふたりで暮らした部屋からも追われ愛犬も取り上げられ葬儀にも参列させてもらえない。マリーナの願いは、愛する人に最後のお別れがしたいただそれだけでした。心苦しくなるシーンの中にもマリーナを理解してくれる存在も描かれていて救われます。声楽の先生もそのひとり。レッスンに訪れたマリーナに「世間から逃れてきたのか?」と聞きます。「愛の意味を知りたくて・・・」と答えるマリーナ。「愛は与えるものだ」と先生。ありふれた言葉だけれど、人を幸せにするのが愛。だからマリーナは歌うのです。映画 ナチュラル ウーマン_a0223379_2118543.jpg激しい向かい風を受けながら前に進もうとするシーンは人生の逆境に立ち向かうマリーナを象徴しています。どんなにズタズタに傷つけられても卑屈になったり泣いたりしない。卑劣な言葉を浴びせられても叫びも反論もしない。真っ直ぐ見つめ返すことで怒りを跳ね返すマリーナの目が印象的です。そんな演出が他の映画と一線を画すところ。いつの間にかマリーナに頑張れ!と共感している自分がいます。「お前は何者だ?」と問われて「人間よ」と答えるマリーナ。性別を超えて自分らしく生きようとするマリーナに誇り高く美しい人間の姿を見たような気がしました。 映画 ナチュラル ウーマン_a0223379_2118268.jpg愛し愛された記憶が人を強くします。劇中、何度か現れるオルランドの亡霊は、彼の愛がいつもマリーナの傍にあることを物語っていました。葬儀場に駆けつけたマリーナでしたが追い出されてしまいます。もう会えないと諦めていたマリーナをオルランドの亡霊が導きます。そこは火葬炉の前。亡霊との最後のキスシーンに涙が溢れます。マリーナは火葬になる寸前のオルランドに会えるのでした。泣いたり喚いたりすることなくオルランドの手をそっと握りしめるマリーナ。マリーナはオルランドの死を静かに受け入れるのでした。映画の最後はマリーナのオペラ歌手デビューの舞台。ヘンデルのオペラ「セルセ」からアリア「オンブラ・マイ・フ」の絶唱です。かつてこれほどまでに心地よい木陰はなかった・・・と歌うアリアの美しいこと! このやさしい木陰こそオルランドの愛。マリーナがナチュラル ウーマンで居られる場所なのでした。何と言ってもこの映画はマリーナを演じるダニエラ・ヴェガの逞しい美しさと、唯一無二の存在感に尽きます。自身もトランスジェンダーで歌手というのですから、まさにはまり役。ウィキペディアによるとヘンデルはこのアリアをカストラートのために書いたのだとか。現在では主にソプラノが歌うのだそうです。そういう意味でも監督の「オンブラ・マイ・フ」の選曲に納得。これもマリーナが歌ってこそのアリアなのでした。そしてエンドクレジットのバックに使われたアラン・パーソンズ・プロジェクトの「Time」も本編からの実に美しい流れです。イグアスの滝も川となってやがて海に辿り着くのでした。 公式サイトの予告編でマリーナの「オンブラ・マイ・フ」も聴けますのでぜひ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督・脚本:セバスティアン・レリオ原題:「Una Mujer Fantastica」英題:「A Fantastic Woman」製作年/国:2017年 チリ・ドイツ・スペイン・アメリカ出演:ダニエラ・ヴェガ フランシスコ・レジェス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆ ☆ ☆ にほんブログ村 写真ブログ フォトエッセイへにほんブログ村応援ありがとうございます。 by ishikoro-b | 2018-04-16 21:31 映画 Comments(0) << 新緑のオンブラ・マイ・フ ヤマセミを探して・白賀渓谷 >> 小さな旅で見つけた美しい風景、素敵なものたち。 by ishikoro-bプロフィールを見る 画像一覧 更新を通知する 最新の記事 十四夜月とスーパームーン at 2024-10-17 23:41 彼岸のヒガンバナ at 2024-10-13 22:37 エノキの実・岡山県自然保護セ.. at 2024-10-08 22:29 ヒガンバナとミズアオイ・岡山.. at 2024-10-02 23:30 秋の使者飛来・みやま公園 at 2024-09-26 23:07 カテゴリ 春の野の花 夏の野の花 秋の野の花 冬の野の花 絵本 映画 春の旅 夏の旅 秋の旅 冬の旅 自然 日々是好日 フォト575 文学 はじめまして その他 最新のコメント ひろかず様 技もなにも.. by ishikoro-b at 22:30 野鳥を手に乗せて餌を食べ.. by ひろかず at 23:06 ひろかず様 コメン.. by ishikoro-b at 22:06 白鳥の白さが青いコメント.. by ひろかず at 09:12 この様な書込大変失礼なが.. by aki at 23:29 阿修羅さま コメントあ.. by ishikoro-b at 00:34 石ころ様 だんだん暮れ.. by 阿修羅 at 08:41 リンク集 main site 石ころホリデー 猫日和。キルト日和。 くるくるbookダイアリー ワタリガラス エンジョイキャリアライフフォロー中のブログ 今日の一枚 ロマラン店長のつぶやき serendipity ... 以前の記事 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 06月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 ファン 記事ランキング 映画 フランスの思い出 梅雨の夜、こんな映画はい... 彼岸のヒガンバナ 帰省の途中の川沿いでヒガ... 亀石神社を訪ねて・岡山市東区水門湾 厳しい寒波も緩んだので、... 宵空の惑星たち 夕焼けが残る西の空。 ... 化粧地蔵のある集落を訪ねて・玉野市沼 玉野市の出崎海岸の小さな... 東京の旅の最後は岡本太郎記念館 根津美術館から迷いつつも... ヤマセミを探して・白賀渓谷 次々とお花が咲いて、季節... 「落ちこぼれ」 茨木のり子 茨木のり子さんの詩集の中... 芥川龍之介の「蜜柑」 今週はもう節分。 ミカ... 巨石のオーパーツ?石の宝殿を訪ねて 兵庫の旅の最後は高砂市に... ブログジャンル 画像一覧 もっと見る エキサイト XML |ATOM Powered by Excite Blog 会社概要 プライバシーポリシー 利用規約 個人情報保護 情報取得について 免責事項 ヘルプ
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