忍法八犬伝 (original) (raw)

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忍法八犬伝
著者 山田風太郎
発行日 1964年
ジャンル 時代小説
次作 忍法相伝73
ウィキポータル 文学
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忍法八犬伝』(にんぽうはっけんでん)は、山田風太郎の時代小説。忍法帖シリーズの一作。『週刊アサヒ芸能』1964年5月3日号から11月29日号に連載された。『南総里見八犬伝』を根底に、犬士の子孫がくノ一8人と対決する物語である。

将軍家が催した大名たちの家宝陳列の折、安房里見家は『八犬伝』ゆかりの「伏姫の珠」を出品する。珠は将軍家の嫡男竹千代の目に留まり、里見忠義は珠を献上することを約束させられる。

里見家取りつぶしを画策する謀臣・本多佐渡守は、伊賀組頭領・服部半蔵に命じ、半蔵配下の伊賀くノ一たちに珠を偽物とすり替えさせる。進退窮まった里見家では、重臣の「八犬士」が切腹を行い、本物の珠の奪還を甲賀で忍法修行をしている後継者の「八犬士」に託す。しかし、甲賀にいるはずの後継者たちは忍法修行のつらさに耐えかね、江戸に逃げ出していた。

そして、太平の世にどっぷりとつかったろくでなしや、無法者などになっていた犬士たちは、父からの知らせを受けても、その遺言を守る気はなかった。

ところが、里見忠義の妻、村雨の方がこの事態に責任を感じて密かに安房を抜け出すと、状況が一変する。まず、乞食をしていた犬田小文吾が協力を申し出る。小文吾は単身、衆目を浴びながら正面から服部屋敷へ乗り込み、甲賀と伊賀との珠取り合戦の開始を告げる。小文吾は伊賀くノ一に倒されるが、正面からの勝負を挑まれたことで、伊賀者の矜持から珠を始末できなくなる。

他の七人の八犬士も、それぞれ密かに村雨にあこがれており、小文吾の死を皮切りに一命を賭して珠奪還の戦いに乗り出す。忍法の秘術を駆使しながら、次々と伊賀くノ一を倒すが、八犬士たちも倒れて行く。

村雨も捕えられ、服部屋敷に連れ去られ、里見家の姫君と名乗らざるをえなくなった。角太郎は忍法肉彫りを信乃に施し、村雨そっくりの顔に仕立て上げる。忍法肉彫りは骨を削り、肉をつなぐ技であり、元に戻すことはできない術であった。八犬士・最強の誉も高い親兵衛が服部屋敷に斬り込み、村雨の姿をした信乃が囮となった隙に、壮助が本物の村雨の救出に成功する。その後、角太郎自身も忍法肉彫りで小幡勘兵衛に成りすまし、命と引換えに珠を奪い返す。そして、壮助の死をもって最後の珠が取り返される。

江戸城に途上する村雨の懐に、生き残った信乃が珠を放り込んだ。村雨は無事に「伏姫の珠」を献上する。

南総里見八犬伝』で、里見家を守る八犬士達の証となった8つの水晶の珠。

本来は「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字がひとつずつ珠の中に浮き上がっているが、本話中ですりかえられた偽の珠は「狂」「戯」「乱」「盗」「惑」「淫」「弄」「悦」の字となっている。

『里見八犬伝』に伝わる八犬士たちを祖とし、代々継承されてきた重臣「八犬士」の末裔。先代たちが切腹して果てると同時に、それぞれの名を受け継ぐことになる。以下、名の後の( )内はそれぞれの本来継承する珠の文字。「」はすり替えられた珠の文字。

服部半蔵の配下で、里見忠義を色仕掛けでたらしこみ、隙を見て珠を奪う。名は『八犬伝』の登場人物からとられている。

忍法帖シリーズでは全滅が多い「複数の忍者同士の対戦」としては珍しく、女装した犬塚信乃が最後まで生き残る。

山口譲司の作画で『エイトドッグス〜忍法八犬伝〜』として漫画化され、『コミック乱ツインズ』(リイド社)に2016年8月号(2016年7月13日発売)から2017年10月号まで連載された。単行本はSPコミックス(リイド社)より全2巻。

  1. ^くノ一忍法帖』の忍法天女貝と同じ。
  2. ^江戸忍法帖』の忍法流れ星と同じ。