耳管開放症 (original) (raw)

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耳管開放症のデータ
ICD-10 H69.0
統計
世界の有病者数
日本の患者数
学会
日本 日本耳鼻咽喉科学会
世界
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耳の模式図
1:頭蓋骨 2:外耳道 3:耳介 4:鼓膜 5:卵円孔 6:ツチ骨 7:キヌタ骨 8:アブミ骨 9:前庭 10:蝸牛 11:聴神経 12:耳管

耳管開放症(じかんかいほうしょう、英: Patulous Eustachian tube)とは、通常は閉鎖されている耳管が開放されたままの状態になり、耳閉感自声強聴(自分の声が大きく聞こえる)などの症状を引き起こす疾患である。鼻すすり型耳管開放症患者(鼻を啜らなければ通常に戻らない状態)は、通常の耳管より異常に軟らかい。

耳管鼻咽腔中耳腔をつないでいる管で、大気中耳腔の圧調整を行っている。嚥下運動を行うと耳管が短時間開放する。耳管開放症はジャーゴによって1867年に初めて報告された病気であり、耳管が開放されたままの状態になり症状が出る。

ゾルナー(1937)は0.3%、フィッシュバーグ(1970)は7%、ミュンカー(1980)は6.6%と報告している。小林(2005)は1%の有病率と報告している。

発症機序は不明であるが、誘因として体重減少(ダイエット)、妊娠や経口ピル、中耳炎、運動、放射線照射、顎関節症、頸部自律神経異常、吹奏楽器演奏が報告されている。その原因となる基礎疾患としては、高度の体重減少、ロイマ、多発性硬化症、パーキンソン病、ポリオ、性ホルモン連用、放射線照射があげられている。しかしながら実際の耳鼻咽喉科診療において、これらの基礎疾患が認められないにもかかわらず、耳管開放症と診断せざるを得ない症例も存在する。[1]

耳閉感自声強聴(自分の声が大きく聞こえる)、自分の呼吸音の聴取が典型的な症状であるが、ロビンソン(1989)は低音域の難聴非回転性めまいが起こる事を報告しており、耳痛、音程のずれなどの症状も起こる。前屈や仰臥位でこれらの症状が軽快消失する事がある。6ヶ月以上の保存治療で効果がない場合、難治性難病とする。(難病指定はされていない)

  1. ^ 石川 滋 (1994). “耳管開放症に対する薬物療法の試み -加味帰脾湯の使用経験”. 耳 鼻 臨床 87巻10号: 1337.