Wiktionary:アイヌ語のカナ表記 - ウィクショナリー日本語版 (original) (raw)

ここでは、アイヌ語のカナ表記についての詳細をローマ字表記・発音と絡めて解説(記号は国際音声記号を使用)。

2000年1月にJIS規格としてJIS第三水準漢字(記号類を含む)・JIS第四水準漢字が新規に制定され、このうちのJIS第三水準漢字にアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(日本語の文章に通常使用される範囲外での小文字カタカナや半濁音付きカタカナ)も含まれている。
ISO規格などに準拠したUnicodeでは、2002年3月に改定されたUnicode 3.2からアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナも追加され、世界中のパソコンでアイヌ語カナ表記が扱えるグローバルスタンダードな枠組みが整えられた。

ㇰ (ク)、ㇱ (シ)、ㇲ (ス)、ㇳ (ト)、ㇴ (ヌ)、ㇵ (ハ)、ㇶ (ヒ)、ㇷ (フ)、ㇸ (ヘ)、ㇹ (ホ)、ㇺ (ム)、ㇻ (ラ)、ㇼ (リ)、ㇽ (ル)、ㇾ (レ)、ㇿ (ロ)、セ゚ (セ゜)、ツ゚ (ツ゜)、ト゚ (ト゜)、ㇷ゚ (プ)

※ 括弧外の文字はUnicode 3.2準拠表記

※ 括弧内の文字は代用表記 (小文字カタカナは通常サイズのカタカナの縮小表示、半濁音は通常の全角半濁音記号を付与)

パソコンでアイヌ語カナ表記(Unicode 3.2準拠)を扱う場合、

2008年現在Windowsの標準状態ではアイヌ語カナ表記入力機能を備えていないものの、カナ表記入力を可能にするためのユーティリティなどが有志により作成公開([1][2]など)されており、アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応する商用フォントやフリーフォントも増えつつある。
(対応フォント一覧はainu_exchangeの取扱説明書内で記述されている)

OS標準フォントがアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナに対応してないパソコンでは、アイヌ語カナ表記用拡張カタカナ対応フォントを入手してパソコンにインストールする必要がある。

  1. ・Windowsxp~の場合、(ディスプレイ画面左下の) 田 スタート ボタンから コントロール パネル(C) を選択。
    ・Windows ~Me/~2000の場合、沺 スタートボタンから 設定(S) ▶→ コントロール パネル(C) を選択。
  2. ・Windowsxpの場合、「コントロール パネル」画面の デスクトップの表示とテーマ をクリックしてから、左側の「関連項目」内にある フォント を選択して「フォント」フォルダを開く。
    ・Windows Meの場合、「コントロール パネル」画面左側の「すべてのコントロールパネルのオプションを表示する。」の文字列をクリックしてから、「フォント」をダブルクリックして「フォント」フォルダを開く。
    ・Windows ~98/~2000の場合、「コントロール パネル」画面で「フォント」をダブルクリックして「フォント」フォルダを開く。
  3. 「フォント」フォルダの中へ、TrueType Fontファイル(やWindows 2000~の場合はOpenType Fontファイル)を移動すると、該当フォントがパソコンにインストールされる。
    (「フォント」フォルダ内のフォントファイルを「ごみ箱」へ移動すると、該当フォントがパソコンからアンインストールされる)

また、一般的なアプリケーションでは表示フォントの設定作業も必要となる。

  1. Internet Explorerのメニューバーの ツール(T) から インターネット オプション(O)... を選択。
  2. 「インターネット オプション」画面の 全般 タブを選択し、下の方にある フォント(N)... ボタンをクリック。
  3. 「フォント」画面で、上の方にある「言語セット(L):」欄を日本語▼にして、中段左側の「Web ページ フォント(W):」欄で“お好みのアイヌ語カナ表記用拡張カタカナ対応TrueType Font”▼を選択して反転表示し、下の方にある OK ボタンをクリック。
  4. 「インターネット オプション」画面で OK ボタンをクリックすると、Internet Explorer上でのひらがな/カタカナ/漢字/全角英数部分が設定したTrueType Fontで表示され、アイヌ語カナ表記も表示できるようになる。

Mozilla FirefoxOpera 7.10~などの高性能ブラウザソフトであれば、アイヌ語カナ表記用拡張カタカナ対応フォントをパソコンにインストールするだけで、インターネット上でのアイヌ語カナ表記を表示できる。
(Mozilla系ブラウザソフトOpera 7.10~ではアプリケーションの表示フォント設定作業をしなくても、OS標準フォントでは対応していない文字部分を他のインストール済みフォントで自動置換表示する機能を有している)

Y.OzFont ペン字版 (TrueType Font)

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Y.OzFont ペン字版は、ペン字の先生が作成された高品位な手書きフォントで、ひらがな/カタカナ部分の字形デザインの違いや漢字部分の収録文字数と正字体(2004JIS字形)/略字体(97JIS字形)の違いなどによってシリーズ化されている。ディスプレイ上でもそこそこ見やすく、印刷に用いても節度感を持ちつつ温かみのある文章に仕上がる。OpenType規格による合成文字処理にも対応している。
(アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナに対応しているのは「Y.OzFont TTF JIS X 0213:2004パック」の.7z圧縮形式ダウンロードファイル同梱.ttfフォントのみ)

XANO明朝U32 (TrueType Font)

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XANO明朝U32 (Unicode 3.2版)は、往年の金属活版印刷活字をモチーフとした懐古趣味的字形デザインの中太明朝体フォントである。ディスプレイ上での表示目的としては視認性に優れたフォントとはいいがたいが、印刷に用いると味わいのある文章に仕上がる。OpenType規格による合成文字処理にも対応している。

ainu_eudc.tte (TrueType Extention Font)

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ainu_eudc.tteはゴシック体と明朝体との二種類がセットになっており、いずれも癖のない端整な字形デザインでディスプレイ上での視認性は概ね良好だが、印刷に用いると細かい粗がやや気になる。TrueType Extention Fontならではの優れた特徴も有している。

これなら、Internet Explorerなどの一般的なアプリケーションでも表示フォント設定作業なしにアイヌ語カナ表記を表示できる。

Windowsの標準状態ではアイヌ語カナ表記入力機能を備えていないものの、“快適な入力”を求めないのであれば

などを用いなくても、WindowsのOS標準日本語入力システムであるMicrosoft IMEでアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナをとりあえずは入力できる。

Microsoft IME 98~のIMEパッドでの「文字一覧」の シフト JIS ▼をクリックして Unicode ▼へ切り替えた上で、表示フォントを“お好みのアイヌ語カナ表記用拡張カタカナ対応フォント”▼にして、「文字種選択ドロップダウンメニュー」にて、

がそれぞれ出てくる。

Microsoft IME 2000~での「単語/用例の登録」で、下記の表の内容を事前に単語登録しておく。

読み(R): 語句(D): 品詞(P): ユーザーコメント(C):
独立語 合成文字用半濁音記号 (U+309A)
まる 独立語 合成文字用半濁音記号 (U+309A)
はんだくてん 独立語 合成文字用半濁音記号 (U+309A)
セ゚ 独立語 半濁音付きセ (U+30BB U+309A)
ツ゚ 独立語 半濁音付きツ (U+30C4 U+309A)
ト゚ 独立語 半濁音付きト (U+30C8 U+309A)
とぅ ト゚ 独立語 半濁音付きト (U+30C8 U+309A)
k 独立語 小文字ク (U+31F0)
s 独立語 小文字シ (U+31F1)
s 独立語 小文字ス (U+31F2)
t 独立語 小文字ト (U+31F3)
n 独立語 小文字ヌ (U+31F4)
独立語 小文字ヌ (U+31F4)
n 𛅧 独立語 小文字ン (U+1B167)
𛅧 独立語 小文字ン (U+1B167)
p ㇷ゚ 独立語 小文字プ (U+31F7 U+309A)
m 独立語 小文字ム (U+31FA)
y 独立語 小文字イ (U+30A3)
r 独立語 小文字ラ (U+31FB)
r 独立語 小文字リ (U+31FC)
r 独立語 小文字ル (U+31FD)
r 独立語 小文字レ (U+31FE)
r 独立語 小文字ロ (U+31FF)
w 独立語 小文字ウ (U+30A5)
読み(R): 語句(D): 品詞(P): ユーザーコメント(C):
h 独立語 小文字ハ (U+31F5)
h 独立語 小文字ヒ (U+31F6)
h 独立語 小文字フ (U+31F7)
h 独立語 小文字セ (U+31F8)
h 独立語 小文字ホ (U+31F9)

アイヌ語カナ表記入力時には、IMEツールバーの入力モードボタンのあをクリックして全角カタカナ(K)を選択しカへ切り替えた上で、「カムyチェp」「イワmペ」などと入力して変換し、「カムィチェㇷ゚」「イワㇺペ」とShiftキーを押しながらカーソルキーの← →で音節区切り位置を調節して変換・確定する。
最初のうちは音節区切り位置の調節が煩わしいものの、そのうちに音節区切り位置を学習してそこそこ賢くなっていくので、短文であれば苦痛を感じない程度には入力できるようになっていく。

近年はカタカナやローマ字による記述が浸透しつつある。

しかし、統一国家をもったことのない民族の言語であるアイヌ語には多くの方言が存在しており、文章の規範となる標準語がなく困難が伴っているものの、『アコㇿ イタㇰ』(北海道ウタリ協会編アイヌ語テキスト)で範示されている文章表記に基づいた、各方言としてのカタカナやローマ字での記述が多くなされている。

また、日本語に慣れ親しんでいるアイヌやアイヌ語を学ぶ日本人にはローマ字よりはカタカナによるアイヌ語表記が好まれるものの、アイヌ語の発音では閉音節があるためアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナも必要であり、日本語の文章に通常使用される範囲内のカタカナ文字種だけで手軽に表記ができないという欠点がある。
ローマ字によるアイヌ語表記でもアクセントを表記するため、英語の文章に通常使用される範囲内のアルファベット文字種だけで手軽に表記ができないという欠点がある。

アイヌ語のカナ表記は、アイヌの大部分が日本国民であること、(日本の)幼稚園から習得が容易であることから、広く学ばれ、また使われている。しかし、使われ始めたのがかなり古いことから、ローマ字表記と比較しても、「表記の揺れ」は、21世紀初頭の現在でもなお大きい。字母そのものの揺ればかりでなく、単語のなかでの「ン、ㇺ、ㇴ」の書き分けや、複雑な音韻変化法則とともに、アイヌ語がフランス語などと同様に連声(リエゾン)をすることから、ローマ字表記では可能な子音おわり(閉音節)の語とその具体形、または母音始まりの語との複合語の、構成要素単位での切り分けが難しい、などが主な理由である。

表記傾向について、ローマ字表記は日本語の文語調のような語源志向の正書法の方向に、カナ表記は日本語の口語調のような実音声志向の表音書法の方向に進んでいるのではないかと推測する人もいるようであるが、定かではない。

アイヌ語のカナ表記(カタカナ・スクリプト)に使われる文字(字母)一覧表。
(Netscape Navigator 4.xでは正常に表示できません)

(ほぼ)五十音順表 | ア | カ | シャ/サ | タ | チャ | ナ | ハ | ㇵ | パ | マ | ヤ | ラ | ㇻ | ワ | ン | | | | | | | ---- | - | ---- | ---- | --- | ----- | --- | -- | - | - | ----- | - | - | ---- | ---- | - | - | - | - | | | イ | キ | シ | ㇱ | チ | チ | ニ | ヒ | ㇶ | ピ | ミ | リ | ㇼ | ウィ/ヰ | | | | | | | | ウ | ク | ㇰ | シュ/ス | (ㇲ) | ト゚/ツ゚ | (ッ) | チュ | ヌ | ㇴ | フ | ㇷ | プ | ㇷ゚ | ム | ㇺ | ユ | ル | ㇽ | | | エ/𛀀 | ケ | シェ/セ | テ | チェ | ネ | ヘ | ㇷ | ペ | メ | イェ/𛄡 | レ | ㇾ | ウェ/ヱ | | | | | | | | オ | コ | ショ/ソ | ト | ㇳ | チョ | ノ | ホ | ㇹ | ポ | モ | ヨ | ロ | ㇿ | ウォ/ヲ | | | | | |

※ 「ト゚/ツ゚」は、tu [tu]。「ツ [ʦu]」ではない。日本語風に「トゥ」とも書くが二重母音と混同しやすい。

※ 「イェ」は、ye [je]。「イエ [ie]」ではない。二重母音と混同しないよう日本語の古語風に「ヱ」とも書くことがある。

※ 「ㇲ」は末音で「ㇱ」と同義だが、(表音的でないので)あまり使われない。

※ カタパチャ行には有声音(濁音)化したガダバヂャ行も対応する。チャ行はさらにツァ行にもヅァ行にも対応する。

アィ カィ シャィ/サィ タィ チャィ ナィ ハィ パィ マィ ヤィ ラィ ワィ
ウィ クィ シュィ/スィ ト゚ィ/ツ゚ィ チュィ ヌィ フィ プィ ムィ ユィ ルィ
オィ コィ ショィ/ソィ トィ チョィ ノィ ホィ ポィ モィ ヨィ ロィ ウォィ/ヲィ
アゥ カゥ シャゥ/サゥ タゥ チャゥ ナゥ ハゥ パゥ マゥ ヤゥ ラゥ ワゥ
イゥ キゥ シゥ チゥ チゥ ニゥ ヒゥ ピゥ ミゥ リゥ ウィゥ/ヰゥ
エゥ ケゥ シェゥ/セゥ テゥ チェゥ ネゥ ヘゥ ペゥ メゥ イェゥ レゥ ウェゥ/ヱゥ
コゥ
エィ ケィ シェィ/セィ ティ チェィ ネィ ヘィ ペィ メィ イェィ レィ ウェィ/ヱィ

※ 「フィ」は huy [hu̜ɪ]。 [ɸi] ではない。日本語で「フィルム」を「フイルム」と発音するに同じ。

※ 「コゥ」は、ココゥ(kokow)のみに現れる、非生来的二重母音。

※ 「{エィ段」は、短母音「エ」が強調されたときのみに現れる、非生来的二重母音。

※ 「アエ/アェ」もあるが、語頭のみの非生来的二重母音。
(= 第一人称接頭辞「ア・」と指相の接頭辞「エ・」の結合した複合語「ア・エ・」)

樺太方言(タライカを除く)でのみ、日本語と同様に弁別的な長母音も存在する(古い語形の保存)。

アー カー シャー/サー ター チャー ナー ハー パー マー ヤー ラー ワー
イー キー シー チー チー ニー ヒー ピー ミー リー ウィー/ヰー
ウー クー シュー/スー ト゚ー/ツ゚ー チュー ヌー フー プー ムー ユー ルー
エー ケー シェー/セー テー チェー ネー ヘー ペー メー イェー レー ウェー/ヱー
オー コー ショー/ソー トー チョー ノー ホー ポー モー ヨー ロー ウォー/ヲー

ローマ字表記字母一覧表(上記のカナ表記字母に対応する位置での表組み)。
(Netscape Navigator 4.xでは正常に表示できません)

| a | ka | sa | ta | ca | na | ha | ah/ax | pa | ma | ya | ra | ar | wa | n/m | | | | | | - | -- | -- | -- | -- | -- | -- | ----- | ----- | -- | ----- | -- | -- | -- | --- | -- | -- | -- | | | i | ki | si | s | ti | ci | ni | hi | ih/ix | pi | mi | ri | ir | wi | | | | | | | u | ku | k | su | s | tu | cu | nu | n | hu | uh/ux | pu | p | mu | m | yu | ru | ur | | | e | ke | se | te | ce | ne | he | eh/ex | pe | me | ye | re | er | we | | | | | | | o | ko | so | to | t | co | no | ho | oh/ox | po | mo | yo | ro | or | wo | | | | |

※ 灰色の母音字は r, h, x の前に来る母音の影響を表し、その母音字そのものは含まれない。

※ s は sh, š, ç とも書く。c は ch とも書く(ç は主に北海道中部・北部方言で語源上 c の場合)。

※ k, t, p, c は有声音(濁音)化すると g, d, b, j/dz とも書く(語意そのものは変らない)。

ay kay say tay cay nay hay pay may yay ray way
uy kuy suy tuy cuy nuy huy puy muy yuy ruy
oy koy soy toy coy noy hoy poy moy yoy roy woy
aw kaw saw taw caw naw haw paw maw yaw raw waw
iw kiw siw tiw ciw niw hiw piw miw riw wiw
ew kew sew tew cew new hew pew mew yew rew wew
kow
ey key sey tey cey ney hey pey mey yey rey wey

樺太方言(タライカを除く)で用いられる長母音には、サーカムフレックスのâ, î, û, ê, ôを用いる表記法とマクロンのā, ī, ū, ē, ōを用いる表記法とがある。
(国際的にはサーカムフレックスのâ, î, û, ê, ôを用いる表記法のほうが優勢のようである)

サーカムフレックス表記法 | â | kâ | sâ | tâ | câ | nâ | hâ | pâ | mâ | yâ | râ | wâ | | | - | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | | | î | kî | sî | tî | cî | nî | hî | pî | mî | rî | wî | | | | û | kû | sû | tû | cû | nû | hû | pû | mû | yû | rû | | | | ē | kē | sē | tē | cē | nē | hē | pē | mē | yē | rē | wē | | | ô | kô | sô | tô | cô | nô | hô | pô | mô | yô | rô | wô | |

マクロン表記法 | ā | kā | sā | tā | cā | nā | hā | pā | mā | yā | rā | wā | | | - | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | | | ī | kī | sī | tī | cī | nī | hī | pī | mī | rī | wī | | | | ū | kū | sū | tū | cū | nū | hū | pū | mū | yū | rū | | | | ē | kē | sē | tē | cē | nē | hē | pē | mē | yē | rē | wē | | | ō | kō | sō | tō | cō | nō | hō | pō | mō | yō | rō | wō | |

日本語における「ッ」「ン」を、かつては“書かない”もしくは“「ウ」で書く”としていた時期もあったが、現在では改められている。

「ッ」(促音)は多義だが、日本語ほどではない。声門閉鎖 [ʔ] を意味しない。

  1. 語末に書かれていれば、/t/ の入声(内破音) [t̚] を表す。
    pet = ペッ = ペㇳ。
  2. 語中に書かれていれば、次の字母の頭子音と同音素(c, s の前では t)の入声(内破音)を表す。
    orta = /otta/ = オッタ [ʔot̚ta]。 △オㇿタ
    cupkes = /cupkes/ = チュㇷ゚ケㇱ [ʧup̚keʃʲ]。 ×チュッケㇱ
    akpe = 北部方言 /appe/ = アッペ [ʔap̚pe]。 ○アㇰペ 他方言

「ン」(撥音)も多義だが、日本語には到底及ばない。(日本語では数え方にもよるが「ン」は22種類もの音声を表す)

  1. 語末に書かれていれば、/n/ を表す。
    iwan = イワン = イワㇴ。 kem = ケㇺ。 ×ケン kew = ケゥ。 ×ケン

  2. 語中に書かれていれば、n か -np- = /m.p/, -nm- = /m.m/ の n /n, m/ を表す。
    pon-pe = /pompe/ = ポンペ。 △ポㇺペ ×ポㇴペ ただし、pon-pe = ○ポㇴ + ペ。
    tan-mosir = /tammosir/ = タンモシㇼ。 △タㇺモシㇼ ×タㇴモシㇼ ただし、tan-mosir = ○タㇴ + モシㇼ。

  3. -nk- の n [ŋ] は、音素としては /n/ のままであるから「ン」「ㇴ」と書く。
    repunkur = /repunkur/ = レプンクㇽ(レプㇴクㇽ)。
    「ㇴ」で書いた方が語源的に分かりやすい例. i + nukar = inkar イㇴカㇻ(インカㇻ)

  4. 調音上(すなわち語呂で)挿入される n, m, w は、「ㇴ」「ㇺ」「ゥ」とも書くが「ン」とは書かない。
    tá-okay > ta_n_ókay = タㇴオカィ。 ○タノカィ ×タンオカィ
    i-oma > i-_w_-oma > i_m_oma = イㇺオマ。 ○イモマ ×インオマ
    u-ok-ok > u_w_okok = ウゥオコㇰ。 △ウウォコㇰ ○ウヲコㇰ ×ウンオコㇰ

  5. ワタリ/ハナレの y をアイヌ語では「ィ」と書くこともある。
    i-oman-te > i_y_omante = イィオマンテ。 ○イヨマンテ。

カナ表記では、一般的にアクセントの表記はおこなわない場合が多い。
(ローマ字とは異なり、表記に用いる文字そのものにアクセントが付いているものがないので、カナ表記では手軽にアクセントの表記ができない)

しかし語学学習用として、ローマ字表記でのアキュート・アクセントに対応するカナを、

などでマーキング

などとさまざまな方法で簡易表記している例が見られる。

しかし、これらの簡易表記では問題もある。
日本語(標準語)におけるアナウンスなどの発音やアクセントは「日本語発音アクセント辞典」(NHK放送文化研究所)「新明解日本語アクセント辞典」(三省堂)の二つのアクセント辞典が事実上の規範となっており、これらでは高低アクセントのうちの高アクセント部分をすべて「上線付き」として表現している。
アイヌ語ローマ字表記は欧文でのアクセントに則った表記法である以上、アイヌ語カナ表記も和文でのアクセントに則った表記法に合わせることが望ましい。

ワープロソフトであれば、アキュート・アクセントに対応するカナを傍点( ● ○など)でマーキングしつつ、高アクセント部分には上線を引くことで、両方の要素をスマートに併記することができる。

HTMLの場合でも、罫線と枠線(下記の例では赤色)では文字からの距離が異なるため併用することが可能で、

  1. ○○○○○
  2. ○○○○○

などと、アキュート・アクセントに対応するカナをマーキングする上線と高アクセント部分に該当する上線との両方を併記することもできる。

なお、この辞典(Wiktionary)でのカナ表記にアクセントを記す場合については、wiktionary:スタイルマニュアル/アイヌ語を参照。

外来語の表記では、これまで慣例的に_斜体_(斜体斜体)を用いることが多々あるが、カナ表記では_斜体_を用いることは望ましくない。

本来の和文の活字文化には_斜体_という概念は存在しない。和文の文字を用いるアイヌ語カナ表記でも、本来の和文の活字文化に合わせる事が望ましい。ワープロ/パソコンでは、欧文で_斜体_を適用するための機能が和文でもいままでは使えていたが、新しい世代のパソコンではそれが是正される。

なお、この辞典(Wiktionary)でのカナ表記で外来語をを記す場合については、wiktionary:スタイルマニュアル/アイヌ語を参照。