アヴェ・マリア (original) (raw)

明日はクリスマス・イブ。そういえば、今年はあまりクリスマス・アルバムを聴いていない。いつもは12月になると、新しく手に入れたその手のアルバムや、かつてのお気に入りをひっぱり出してきて流すのだが・・・

東日本大震災を筆頭に、今年は本当に色々なことがあり、厳しい一年だった。日本はキリスト教国ではないので、あまりそういう感じにはならないが、こういう年のクリスマスは、やはり荘厳な気分で迎えたい。思い立ち一枚のアルバムを取り出す。

タイトルは 『アヴェ・マリア』 。オリジナルタイトルは 『KARAJAN presents CHRISTMAS』 。カラヤン指揮、ウィーン・フィル、レオンタイン・プライスのソプラノによる聖歌集である。名歌手発掘の名人でもあったカラヤンが、黒人歌手として初めて大成した若き日のプライスのために指揮したものだが、カラヤンのこの手のオリジナル・アルバムは後にも先にもこれ一枚。それゆえに1961年、ちょうど50年前に録音されたこのアルバムは、クリスマス・アルバムとして長く愛されてきた。

僕がこのアルバムを手に入れたのは、ちょうど25年前のクリスマス・イブの夜。当時、結婚したての僕は、終業と同時にいそいそと自宅に向かい、途中、梅田のレコード・ショップで購入し持ち帰ったのだ。特にクリスマスプレゼントを用意した覚えもないので、これがプレゼントのつもりだったのだろう。ケーキくらいは買ったかもしれないな。

その一ヶ月前に教会で結婚式を挙げた余韻も残り、少し厳かな気分でクリスマスを迎えていた。恐らくろうそくの灯りのもとで聴いたこのアルバムは、僕たちを少し厳粛な気持ちにさせてくれ、言葉少なにクリスマスを祝ったのだろう。もう随分昔の話なので、記憶はあやふやだが。

13曲の内、最初の9曲までは聖歌が主体であり、聴きなれた聖歌もひときわ厳粛に響く。10曲目シューベルトの「アヴェ・マリア」以降は、カラヤンウィーン・フィルの本領発揮。アダンの「オー・ホーリー・ナイト」、グノーの「アヴェ・マリア」、モーツァルトの「アレルヤ」と続く終盤は圧巻だ。そのカラヤンの手による抑揚、ルバートに、聴いている側は自然と感情を撫でられ、高揚させられる。今は亡きプライス、カラヤンの絶頂期の音楽。これからもずっと、世界中でクリスマスに聴かれる一枚なのだろう。

さて、「アヴェ・マリア」といえば、今年の春先、ソプラノ歌手、森麻季のアルバム 『アヴェ・マリア』 を手に入れた。これは聖母マリアを称える歌を集めた歌曲集。クリスマスにとっておきのアルバムだ。

本当に美しい歌声だ。心洗われるというのは、こういうことを言うのだろう。ずっと聴いていると、ちょっと超越した気分になって、日々思い悩むことなど、取るに足らないことのように思えてくる。しかし、「アヴェ・マリア」とタイトルのつく曲って、こんなにたくさんあったのか、と驚く。サン・サーンス、グノー、モーツァルトカッチーニ、ケルビーニ、アルカデルト、トスティ、シューベルト、マスカーニ・・・できればちょっと異質だけど、ピアソラの「アヴェ・マリア」も入れて欲しかったな。今年は、このアルバムでクリスマスを迎えよう。きっと清新な気持ちで迎えられるような気がする。こういう年のクリスマスには、お勧めですね。

ところで、このアルバムには、最後に「おまけ」というか、ある意味「ぶち壊し」というか・・・まあ、Avexさんやりますねー、と言いたくなるような一曲が入っている。あ、決して文句を言っているわけじゃないですよ。素晴らしい曲なのだし、そのおかげで随分売れただろうし、それで「森麻季」を知った人も多かっただろうし。

それは、この3年に渡って僕も楽しませてもらった、NHKのドラマ「坂の上の雲」のメインテーマ「Stand Alone」だ。興味の無い人には全く何のことやら、だろうが、僕は3年前にこの番組を観て、やっぱりNHKの受信料は文句を言わずに払わなくては、と思った。当時はそういう話題がよく出ていたしね。(ほぼ同時期に始まった「龍馬伝」も素晴らしかったし)

話はどんどん飛ぶのだが、この「坂の上の雲」は25日に第三部の最終回。いよいよフィナーレだ。第三部の評価は色々あるだろうが、第一部の秋山兄弟、正岡子規の志と友情。第二部の愛と命の物語には、引き込まれた。僕にとっては故郷に近い松山での話であり、頻繁に出てきた松山の海は、見覚えのある光景だった。あ~、アレは松山じゃなくて、あの島の海岸で撮影したんだな、と直ぐに分るような風景。それを観ながら、開化期を迎えた日本を支えた若者たちの戸惑いに、真摯な姿に、ただただ心を奪われた。

そういう思いもあって、今年の夏、帰省時に松山の「坂の上の雲ミュージアム」を訪ねてみた。僕の田舎からは、かつては汽車(!)で一時間という距離ながら、ちょっと遠出する感覚だった。今や便利になり、道も整備され、車で1時間もかからない。近くなったものだ。

その建物は、松山の大街道からお城に向かう場所にある。安藤忠雄の建築による、ちょっと現代的な建造物は道からはよくわからなかったが、一歩足を踏み入れると、覆いかぶさるように迫ってくる。その裏手には旧松山藩主、久松定謨(さだこと)の別邸として建てられた立派な洋館・萬翠荘があり、そこでの一面に漂うちょっと古臭い時代の香りには、まいってしまったのだが・・・いやいや、クリスマスの話だった。そんな無粋な話はやめておこう。

今年のクリスマスは、こんな感じで静かな音楽と共に迎えることにしよう。

<関連アルバム>

アヴェ・マリア

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