【うちの子が結婚しないので】あらすじとネタバレ感想 垣谷美雨 (original) (raw)

想像してみてください。

今あなたには28歳独身の1人娘がいます。

正社員ではあるけれど小さなアパレル会社勤務。若い子向けの服がメインの会社なので、年を取ると退職していく社員も多い。

娘は控えめで社交的ではなく、顔やスタイルは可もなく不可もなくといった感じ。

手に職があるわけでもなく、彼氏がいる気配ゼロ。

家のローンは後少し残っている。

1人娘なので、兄弟姉妹もなく将来どうやって生きていくのか?

ふとそう考えた時、自分たちの老後の心配より娘の老後の方が気になってきませんか…

【うちの子が結婚しないので】あらすじ

老後の準備を考え始めた千賀子は、ふと一人娘の将来が心配になる。 28歳独身、彼氏の気配なし。自分たち親の死後、娘こそ孤独な老後を送るんじゃ……? 不安を抱えた千賀子は、親同士が子供の代わりに見合いをする「親婚活」を知り参加することに。しかし嫁を家政婦扱いする年配の親、家の格の差で見下すセレブ親など、現実は厳しい。果たして娘の良縁は見つかるか。親婚活サバイバル小説!

『うちの子が結婚しないので』 垣谷美雨 | 新潮社

【うちの子が結婚しないので】作者

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『女たちの避難所』『夫の墓には入りません』『姑の遺品整理は、迷惑です』『うちの子が結婚しないので』などがある。

『うちの子が結婚しないので』 垣谷美雨 | 新潮社

【うちの子が結婚しないので】ネタバレ感想

垣谷美雨さんの小説は、家庭内のどこにでもあることが毎回テーマとなっているので面白いです。

人には言えない本音も書かれてあり(なんや、みんな言わないだけで同じこと思っているんや)みたいなところがなんだか可笑しかったりしている自分がいます。

主人公と同じように腹がたったり、娘を想う親の気持ちは痛いほど分かります。

また娘も親に対して気を遣うところなんかは(そら、そうだわね)と思ってしまいます。

人が考える不安な気持ち、友人、親、自分、夫、子供。

考え方は似ているようで微妙に違います。

本を読んで思う事、考える事は10人中8人位は似たりよったりかもしれません。

けれども残りの人たちは全く違う意見を持っているし、捉え方も違います。

似ている8人だってまったくピッタリではなく、(やっぱそうやんな~)くらいです。

そこから一緒に過ごしていく中で微妙にズレていくというのがそのズレが大きくなるにつれて、だんだんと傷が大きくなってしまう場合もあります。

本だとそれに気づくのに、実際はそうはいきません。

気づかないまま傷が大きくなっていく感じです。

人生は上手くいかない。

それでも前に進まなくてはいけない。

何度も何度も失敗し、反省し、自分を責めつつ、大きな一歩は踏み出せないけれど、毎日やるべきことをこなしていく。

作者の本はそんな人生について教えてくれています。

主人公の福田千賀子は、正月早々年賀状を見てショックを受けていました。

去年まで娘が結婚しないと2人でなぐさめあっていた親友の娘さんが結婚することになったと受け取った年賀状に小さな文字で書かれていたからです。

裏切られた感じをぬぐえなかった。そもそもモリコの方から電話をくれてもよいのではないか。年賀状に小さくたった一行で報告なんて、あんまりだ。モリコが連絡をくれないのは、こちらに対して申し訳ないという思いがあるからに決まっている。

去年まで一緒に慰め合っていたのに、いざ結婚してしまうとどうしても嫉妬してしまう感じ。素直におめでとうと言えない自分。そう思う自分がなさけない。

そういう気持ちってありますよね。

夫、娘と話し合った結果、千賀子が親婚活に参加し、娘の友美も婚活パーティに参加することに。

身上書に載せる写真はプロに撮ってもらった方がいいと2万円支払い撮ってもらった写真の出来はイマイチ。

自分達で撮った方がよっぽど良かったと後悔する千賀子たち。

私が成人式を迎えた当時は私も含め、周りの友人達は当たり前のようにプロの方に写真を撮ってもらっていました。

当時は朝早く起きて、写真館へを足を運び並んでいたことを思い出しました。

その写真を使用する事はありませんでしたが、プロの方に撮ってもらった写真よりも、自分で撮ったほうがよっぽど良かったです。

いよいよ初めての親婚活の日、いざ行ってみるとなんだか思っていたのと違うかったと感じる千賀子。

自分達よりも10歳年上の世代となると未だに、「女は家事育児をするのは当然」という考え方の方ばかり。加えて息子の給与だけでは生活が苦しいので、仕事もして下さい。という始末。

「私の娘はあなた達の家政婦ではありません」心の中ではそう言ってやりたいのに、身上書の交換もままならない。

そんな相手が多い中、参加費が15000円。

1人15000円で参加者90人。

もうこれだけで、かなり儲かりますなぁ~。

しかも1家族15000円じゃなく1人なので、夫婦で参加となると30000円もかかってしまうんです。

それでもめげずに、親婚活に参加する千賀子。

かわいい1人娘の為にと必死に頑張る千賀子はですが、自身が過保護なのでは?と感じています。

私も本を読む前はそう思っていたのですが、本を読んでいくうちに少し考え方が変わりました。

主人公の千賀子や夫は娘のことを第一に考えているし、娘の意見を尊重しています。

娘も一生独身でいたいわけじゃない。

ただ自分で出会いを見つけることが出来ずにいる。

「いつの日か結婚したい」という、のほほんとした考えが娘にあるなら「今」行動に移そう。

「出会いの場を広げよう」そう思って行動しているだけなんだ。そう思いました。

親婚活をしたから全て親が決めてくるのではなく、最終的には本人同士が決めるということなんですよね。

それにしても千賀子の周りで恋愛結婚して離婚して出戻ってくる女性の多い事。

私の周りでもシングルはたくさんいます。

理由のほとんどが、性格の不一致。

そう考えた時少しでも見た目ではなく、中身からという親心が分かる気はしました。

見た目とはどこまでが大切なんでしょうか。

親婚活での身上書に載せる写真や合コンでも見た目は大切。

女性も男性も容姿が良い方が多くの申込がきます。若くて美人だとなおさら。

どうもそういった人たちはさくらが多い可能性大。

じゃあ、整形はありなのか?

プチ整形で美しくなるなら、良いと思うのですがガッツリ整形はどうなのか?など。

本人の好みでもあるし、性格が良くてもどうしても子供が欲しい場合、生理的に受けつけないこともあるし…

本性なんていくら付き合ったところで分かるはずもなく。

思うように進まない親婚活ですが、「結婚」を意識したデートを重ねていくうちに、千賀子も娘の友美も次第に精神的に強くなっていきます。

お互い「結婚」について家庭について育児についてどう思うか考え方が分かってくるからです。

思いもしない考え方をする男性やその親、意外にしっかりした男性など、そういった結婚についての価値観等を含め考えながら読んでいると、親婚活を頭ごなしに「ゲッ」と思うことはなくなりました。

さて、千賀子の周りの女性たち、娘も含め良縁はあるのでしょうか!?