瞳 (original) (raw)

朝、出勤途中死んだ顔で電車に乗っていると赤子を抱いた友達とばったり会った。瞳、大きな丸い瞳。まだこの世の穢れを何も知らない純粋無垢な綺麗なきれいな存在。大きな瞳でじっとこちらを見ている。私とその子とは対極にあり、体調が悪くなった。でも、赤ちゃんは可愛い。君とはまだおしゃべりをした事がないけれど、きっと可愛いかわいい、女の子に育つんだろうね。

すらっと高い身長、長い手足、纏まらないくせっ毛は父譲り 発光して眩しいくらいの柔らかな白い肌、大きな目と丸い顔は母譲り。父は優しい、ちゃんと話ができる人。母は素直すぎるくらい素直な人。父が母に声を荒げているところを今まで一度たりともみた事がない。いつだって穏やかで、ぷんぷんと怒る母を静かに宥める父しか見たことがない。関西で暮らしてもう10年 いまだに両親と電話するときは方言が出て、すこし照れくさい。ひとりっ子の私を寂しくさせないように、お休みのたびに両親はたくさん色んな場所に連れて行ってくれた。プールや遊園地が楽しめない子供だったので川、海、山、水族館。青や緑が多い場所に沢山たくさん連れて行ってくれた。大きくなってからはいろんな音楽や映画、本を教わり、馴染めずあまり学校に行けなかったわたしは没頭した。

25年、本当に色んなことがあった。おそらく、一生分のやな経験を20代前半で全部経験した。自分が女になってる事を自覚する瞬間、本当に嫌すぎる。性欲は薄いのに触れられると身体はちゃんと反応する。あんなにたいせつに、大切に育てられたのに。生物学的上、子供を産むためには必要不可欠な行為なのに、後ろめたい気持ちになる。いつからだろう、そんな気持ちに取り憑かれるようになったのは。暴力的で生々しい音楽や映画が好き。優しい音楽や映画だってもちろん好き。本だけは、優しく柔らかなものが好き。飲みの場やコミュニケーションの場でひけらかされる露骨な下ネタがさいきんは苦手。

夜は、背後から急に黒いもやもやが襲ってきて、たまに駄目になる。1人だ。いや、1人じゃないんだけれど。1人なんだ、わたしは。死にたい…と思いながらも決まった時間にピルと常服薬を飲み、スキンケアをし、丁寧にヘアオイルまでつけて髪を乾かす。あしたの朝起きてから飲むための食塩不使用トマトジュースを冷やす夜。明日からも生きる気満々だ。朝起きて、また顔を洗い歯を磨き、綺麗にお化粧をして120度に温めたヘアアイロンで髪を撫でる。わたしの名前ね、すごくかわいいんですよ。みんな、ももちゃんって呼んでくれる。それはそれは愛おしそうに、ももちゃんってみんなが呼ぶんです。

f:id:mainichigenkiyo:20241007231912j:image