クアルコム、miniUSB接続型のMediaFLOチューナーを初公開 (original) (raw)

パソコンに装着したチューナー
パソコンに装着したチューナー

クアルコムが開発した携帯電話向け放送技術「MediaFLO」の業界団体、FLO Forumは28日、日本で初めて定例会議を開催したことにあわせ、業界関係者向けセミナー「Asia 2007 FLO Mobile TV Product Demonstration Showcase」を開催した。

イベント後半には、会場の一角でMediaFLO関連の送信装置やチップセットなどを紹介する展示コーナーが設置され、その中でクアルコムはMediaFLOを受信できるminiUSB接続型チューナーを世界で初めて公開した。

■ パソコンでもMediaFLO

miniUSBポートを搭載
miniUSBポートを搭載
今回はWindows Media Playerで映像を再生
今回はWindows Media Playerで映像を再生

今回披露されたチューナーは、miniUSBポートを備え、パソコンなどと接続できる。携帯電話向けに開発されたMediaFLOだが、このチューナーを使えば、パソコンなどでもMediaFLOでの映像コンテンツを楽しめる。国内で実用化しているワンセグでは、同様のUSB接続型チューナーがさまざまなメーカーから出荷されており、そのMediaFLO版と言えるものとなっている。

現状では世界に3台しかないとのことだが、機能としては、リアルタイム視聴のほか、クリップキャスト(端末内の映像蓄積)やIPデータキャスト(文字や静止画のコンテンツ配信)など、MediaFLOの全機能を利用できる。ただし、試作版とあって、パソコン内に保存する映像データの著作権保護の仕組みなど、実装されていない部分もある。今回のデモでは、MediaFLOで配信されたH.264の映像データを変換して、Windows Media Playerで再生していた。

このほか、MediaFLOで実現できるサービスとして、番組を見ながら投票できる機能や、他のユーザーと同時にコメントを投稿しあえる機能も披露された。これは、IPデータキャストで実現しており、放送側が「誰に投票しますか?」といった告知内容を表示するタイミングを指定できる。コメントや投票なユーザーの操作した結果は、通信経由でサーバーにアップロードするが、他のユーザーが投稿したコメント内容は放送波で送信されてくることになる。通信だけではなく、放送波を使うことで、インフラに大きな負担を与えることなく、多人数参加の番組作りが可能となっている。

■ MediaFLO関連製品も

RoundBoxのソフトで生成されたコンテンツ
RoundBoxのソフトで生成されたコンテンツ

このほか展示コーナーでは、さまざまな企業からMediaFLO関連製品が紹介されていた。NEW PORT MEDIA(ニューポートメディア)では、単体でMediaFLOの受信・処理が可能なチップセットを出展していた。たとえばクアルコムが今回披露したminiUSB接続型チューナーでは、MediaFLO受信チップに加えて、映像処理を行なうためにMSMシリーズのチップセットを搭載しているが、NEW PORT MEDIAの製品は、受信と映像処理を1チップで行なえる。さらにミドルウェアまで提供するとのことで、クアルコム製のベースバンド・アプリケーションチップを採用しない携帯電話メーカーに適したチップとなっている。

また、パケットビデオのブースでは、OMAP対応のMediaFLO再生ソフトウェアを紹介していた。映像再生エンジンのコア部分は、同社が「OSCL」と呼ぶ仕組みによって、どのプラットフォームでも動作するようになっているが、今回のデモでは、さまざまな携帯機器向けのOSに対応できることをアピールしていた。

IPデータキャスト用のコンテンツを生成できるソフトを提供していたのは、米企業のRoundBoxだ。端末内にキャッシュされたコンテンツは、野球の試合中に配信されるデータをイメージにしたものや、音楽再生できるラジオプレーヤーアプリなど。国内では伊藤忠テクノソリューションズが販売代理店となっている。

■ 総務省河内氏が周波数再編を説明

総務省の河内氏
総務省の河内氏
慶応大の岸准教授
慶応大の岸准教授

セミナーでは、総務省 情報通信政策局担当の大臣官房審議官 河内 正孝氏が登壇し、周波数再編の動向などを説明した。国内では、2011年に地上アナログテレビ放送が終了し、デジタルテレビへ完全移行することにともない、アナログテレビ放送用の電波(VHF帯/UHF帯)などを、2011年以降、別の用途で活用していく方針となっている。

河内氏は「2011年に、アナログテレビの1~12chが空く。テレビの53~62chも2011年から1年かけて整理する。情報通信審議会の答申が6月に出ており、ある程度の方針は決まったが、どう割り当てるかは今後の議論。車の事故防止などを目指すITSや次世代の携帯電話などがあるが、たとえば携帯電話向けマルチメディア放送サービスは、8月から懇談会を開催しており、検討を開始したばかり」と述べる。

携帯電話向けマルチメディア放送サービスについては、たとえば基幹放送と位置付けるかどうかでビジネスモデルにも影響が出るという。同氏は「基幹放送であれば全国で視聴できるよう普及させる義務があるが、自由な利用を認めると、ビジネスとして儲かるところだけでOK、ということになる。国民から見てどちらが良いシステムか議論することになる。免許については、サービス開始の1年ほど前であれば間に合うかと思っていたが、ヒアリングしてみると、もっと早めて欲しいと要望があり、できるだけ早くできるよう、現在全体的なスケジュールを見直している。2011年まで時間があるようだが、手順を踏んでいくとさほど余裕があるわけではない」と語り、懇談会終了後、早期に免許付与できる体制を整える考えを示した。

このほか、セミナーでは、慶応義塾大学准教授で、竹中平蔵氏が総務大臣在職時に政務秘書官を務めていた経産省出身の岸 博幸氏が登壇。国内の状況を「放送、通信、コンテンツ、広告代理店、広告主の企業とそれぞれ問題があるのではないか。ただ、地方の放送局や新聞社は、従来のモデルでは儲からなくなってきている」と指摘する一方、米国ではテレビ局がネットとの連携に熱心で、新聞社も課金モデルから広告モデルにシフトしていることを説明。携帯電話は、コンテンツにとって重要な出口の1つと分析し、テレビ局やクリエイターが報われる仕組みを取り入れること、あるいは、米国の音楽産業が著作権保護などで苦境に陥ったことなどを教訓にすべきと語っていた。

■ URL
MediaFLO 案内サイト
http://www.mediaflo-info.com/ ■ 関連記事
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(関口 聖)

2007/11/28 21:40