背後に迫る足音~狂気の中で逃げる (original) (raw)

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【第31話】

僕の心臓は鼓動を速め、冷たい汗が背中を伝う。

逃げないと刺される!

その言葉が頭の中で何度も反響する。

玄関はミオがいる台所前だ。

後ろを振り返り、他の出口を探すが、窓があるだけ。

咄嗟に窓カギに指を掛けるが、手は震えてうまく動かない。

「ドドドドドドドドド」

重低音のような足音が迫ってくる。

ミオが包丁を片手に、狂気の目で僕の方に走って来る。

そして、包丁を振りかざす。

その瞬間、時間が止まったかのように感じた。

「ギャーッ!!」

咄嗟に包丁をかわす。

ミオは転倒し、僕は一瞬の隙を突いて玄関を見つけた。

全力で玄関に向かう。

ドアノブに手をかけ、後ろを振り返ると、ミオが立ち上がってくるのが見えた。

今しかない!

ドアノブを回しても、ドアが開かない。

「ガチャガチャガチャ」

!?

鍵が掛かっている。

僕はドアノブ周りを探し、ようやく鍵を見つける。

鍵を回すと「ガチャ」と音がした。

その瞬間、ミオが何かを叫んでいる。

「ドドドドドドドドド」と再び足音が近づいてくる。

後ろを振り返る余裕はない

僕は裸足のままで、外に飛び出した。

夕闇の中、道路に向かって猛ダッシュする。

通行人がいる。

助かった。

僕は叫んだ。

「た、た、助けてくださいっ!」

通行人のおばさんは、僕を見て驚いている。

後ろを振り返ると、ミオはいなかった。

中学生になってから、母から聞いた話がある。

ミオとアイコは、幼少期に虐待を受けていたらしい。

別居(離婚)した理由も、お父さん(伯父さん)の暴力が原因だった。

ミオはアイコを守るために、必死だったんだろう。

その狂気は、愛と恐怖が混じり合った結果だったのかもしれない。

その日の出来事は、僕の記憶に鮮明に残っている。

ミオの狂気と絶望が、今でも僕の心に影を落としている。

母:「あの時のこと、よく覚えてる?」

僕:「うん、忘れられないよ。ミオの目が、あんなに狂っていたなんて…」

母:「ミオもアイコも、本当に辛かったのよ。お父さんの暴力から逃れるために、必死だったの」

僕:「でも、なんで僕を襲ったんだろう?」

母:「それは… ミオがもう限界だったのかもしれない。 108を傷つけたくなかったはずよ」

その会話を交わした後、僕はミオとアイコの苦しみを理解し、彼女たちのために何ができるかを考え始めた。

過去の傷を癒すために、僕もまた成長していく必要があると感じたのだった。

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「タケミチ君、108君、お祖母ちゃんから電話だよ!」

階段下からショウ母の声が響き渡る。

タケミチはその声に応え、電話を取り上げた。

「そろそろ、お墓参りに行くから帰って来いって」とタケミチが伝えた。

ショウは眉間にシワを寄せ、「お前等、煙草臭いから、オーデコロン振って行けよ!」と命じた。

俺達はタクティクスのオーデコロンをたっぷりと振りかけた。

「メチャ良い匂いじゃん!」とタケミチが嬉しそうに言う。

「何だか、大人になった気分だ! 小5だけどな」と俺は笑った。

「じゃあね、ショウ君。また遊びに行くね!」と言いながら、俺達は軽やかな足取りで歩き始めた。

金太郎の家はショウ君の家から3分ほどの距離にあった。

道中には古びた墓地があり、俺達はその前を通り過ぎようとしていた。

突然、お墓から何かが現れた。

俺達はその異様な光景に目を奪われ、小走りで近づいた。

オレンジ色のフワフワした塊がユラユラと浮かんでいた。

「これって、火の玉だよな?」とタケミチが声を潜ませて言う。

「見た事ないから、わからねぇよ!」と俺は答えた。

その火の玉は静かにお墓の上を浮遊し続け、まるで俺達を見守っているかのようだった。

「お盆と関係あるのかな?」とタケミチが呟く。

「お化けなのかなっ?」と俺は少し不安げに言った。

不思議な光景に俺達は恐れを感じることなく、ただその火の玉を眺め続けた。

「そろそろ、帰ろうぜ!」と俺が言うと、タケミチも「そうだな」と答えた。

その後、俺達と家族はお墓参りに行ったが、あの火の玉が何だったのか、結局わからないままだった。

それはまるで夢の中の出来事のようで、今でも俺達の心に深く刻まれている。

空き家の静寂が語る秘密

へと続く。

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