友情と愛情~アオイの送別会ドキュメント (original) (raw)
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【96話】
俺は、アオイの送別会について考えながら、リンちゃんに相談することを決めた。
アオイには直接聞けないことが多くて、いつもリンちゃんに頼ってしまう。
でも、リンちゃんはいつも親身になって聞いてくれる。
「何でマドカちゃんまでが、アオイの送別会に参加するんだ!?」と俺はリンちゃんに尋ねた。
リンちゃんは少し考え込んだ後、答えた。
「クリスマス以降、アオイと何度か遊んだみたいだよ。クリスマスイブのカラオケリベンジもいつの間にかしていたみたいで、その時マドカちゃんも一緒だったんだって。意気投合したみたいだけど、何についてかは分からない」
俺は驚いた。
アオイがそんな風に他の子と仲良くなるなんて、少し嫉妬心が湧いてきた。
「それにしても、女子はわからない動物だ」と俺はため息をついた。
アオイは先生と相談して、送別会はしないでクラスメイトには事後報告にしてもらうことにした。
友達も少ないし、恥ずかしいからだ。
俺でもそうするだろう。
昼休み、美術室で俺たち6人は集まって打ち合わせをした。
タキタが口火を切った。
「アオイちゃんの好きなことって何?」
俺はすかさず答えた。
「それじゃ、私とマドカちゃんはドーナツを作るね!」とリンちゃんが言った。
マドカも続けた。
「私、お菓子作り得意だから。こっちは任せてよ!」
ケンジが笑いながら言った。
「と言うことは、男子は『X JAPAN』を歌うってか!?」
クワタも賛同した。
「そしたら、やっぱり、108が『FOREVER LOVE』を歌って俺たちが盛り上げるってどう!?」
タキタとケンジが同時に「それで決まりだな!!」と声を揃えた。
マドカが微笑みながら「私だったら、泣いちゃうかも!?」と言った。
リンもニコニコして「108くん、それじゃ、それで決定ね!」と確認してきた。
「うん」と俺は頷いたが、内心ではもう少し考えたかった。
俺が口を出す暇もなく、催し物は決まってしまった。
このようにして、俺たちはアオイの送別会の準備を進めていった。
アオイのために何か特別なことをしたいという気持ちが、俺たち全員の心を一つにした。
友情と愛情が交錯するこの瞬間、俺たちは青春の輝きを感じていた。
3月23日
俺たちは、タキタとケンジと合流し、児童養護施設に向かう。
早く着いちゃったので、近所の公園で時間をつぶすことにした。
「おっと、間違っておしるこ買っちゃったよ!」と、俺は思わず声を上げた。
いつもアオイのおしるこを買っている自販機で、つい癖でおしるこを選んでしまったのだ。
ケンジがニヤリと笑って言った。
「俺、おしるこ好きだから、飲もうか?」
「大丈夫。俺が飲むから」と、俺は答えた。
たまにはいいかもしれない。
ケンジはしばらく沈黙した後、ぽつりとつぶやいた。
「でも、アオイちゃんと108が付き合っていたことにもビックリだけど、大阪に引っ越しちゃうってホントに悲しいよな」
俺は深くうなずいた。
「大阪は近いけど、遠いよ。新幹線で片道4時間くらいだけど、往復で5万円だからな。実際1年に1回行ければ良い方だよ」
タキタが口を挟んだ。
「でも、遠距離恋愛は燃えるよな!?」
ケンジは笑いをこらえながら言った。
「おまえ、遠距離恋愛どころか、彼女できたこともないだろ!?」
タキタは顔を赤らめながらも、真剣な表情で言った。
「…好きな子はいるんだけど…」
俺は驚いて問い返した。
「えぇっ!? 誰だよ?」
その時、クワタが大声で呼びかけてきた。
「おーい!おまえら、そろそろ入って来いよ。もう、リンちゃんとアオイちゃん来てるぞ!」
ケンジが時計を見て驚いた。
「あれ!? ホントだ。もう、12時じゃん!」
俺たちはクワタに案内されて、屋内に入った。
部屋からはアオイたちの楽しそうな声が聞こえてきた。
何だか盛り上がってるみたいだぞ?
クワタが声を張り上げた。
「それでは、スペシャルゲストの入場だ!!」
会場はシーンと静まり返った。
少し入りにくい雰囲気だ。
俺たちは部屋に入った。
そこには、アオイ、リンちゃん、マドカちゃん、寮母さん、施設の人達がいた。
テーブルにはちらし寿司、海苔巻き、タンドリーチキン、ドーナツ、アップルパイなど、御馳走が並んでいる。
アオイは目を丸くして叫んだ。
「嬉しー!! 108くん、タキタ君、ケンジ君も来てくれたんだ!」
彼女のビックリした表情を見ると、どうやらサプライズは成功したみたいだ。
アオイが疑問そうに言った。
「でも、今日は野球の試合があるって言ってたよね?」
俺はニヤリと笑って答えた。
「あぁ、あれは嘘ね。アオイをビックリさせようと6人で企画したんだ!」
アオイは涙を浮かべながら言った。
「もう、会えないと思ったから、凄く嬉しーよ!本当にありがとう!!」
俺は少し照れながらも問いかけた。
「ところで、大阪のどこに引っ越すの?」
アオイは笑顔で答えた。
「豊中市ってところで、大阪梅田にも電車で15分くらいだよ!? 遊びに来てくれたら大阪案内するね!」
「うん。楽しみにしてるよ!」と、俺は心の底から思った。
その日、俺たちは友情と愛が交差する瞬間を共有し、心からの絆を再確認した。
どれだけ離れても、俺たちの友情は色褪せることはないだろう。
クワタ「俺、ちょっといいか?」
時計を見上げると、もうこんな時間か。
夜の静寂が、少しずつ街に降り注いでいる。
「FOREVER LOVE覚えてきたか?」
クワタの目は真剣だ。
彼の真剣な眼差しに、俺も自然と背筋が伸びる。
「覚えたけど、忘れそうだから、歌詞カード持ってきたよ!」
俺の声には少しの不安が混じっている。
「そうか、それじゃ、3分後に曲を流すから、俺はあのドアからマイクを握り入場をしろ! 後は俺たちが盛り上げるから、自信をもって行こう!!」
クワタの言葉に、俺の胸が高鳴る。まるでディナーショーのようだな。
「っていうか、ディナーショーかよ!?」
俺は思わずツッコミを入れる。
クワタの顔に笑みが浮かぶ。
俺はトイレで用を足し、ドアの前で待機する。
心臓の鼓動がますます速くなる。
Toshiの声は高いし、ちゃんと歌えるかな?
マジでドキドキしてきたぞ。
ドアの向こうでは、友人たちの声が聞こえる。
To BE CONTINUED🔜