Harry Caezar | Kanazawa University (original) (raw)
ハリー・セイザー 1.はじめに 第 2 次世界大戦後、史上で初めて普遍的な国際機構である国際連合(以下「国連」とする)が生まれ た。国連憲章の第 1 条 3 項、「人種、性、言語又は宗教による差... more ハリー・セイザー 1.はじめに 第 2 次世界大戦後、史上で初めて普遍的な国際機構である国際連合(以下「国連」とする)が生まれ た。国連憲章の第 1 条 3 項、「人種、性、言語又は宗教による差別なく、すべての者のために人権及び基本 的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること」に示されているように、設立後 70 年間、国連は平和および安全の維持という課題に取り組んだ。それと同時に国連は人権の保護に携わり 加盟国の行動を調整してきた。しかし、その活動過程において国連による平和および安全の維持が人権侵害の 問題につながることがある。その一つは、近年で懸念されている平和維持活動(以下は PKO とする)の要員 による性的搾取・虐待である。 以下では PKO の歴史的な概要を紹介し、ポスト冷戦の PKO への評価に触れた後、PKO 要員による性的 搾取・虐待という本題に入る。後半ではその問題に対する国連の姿勢を述べ、それの解決のための必要な行 動を考えてみる。 2.PKO の概要 国連が行う「国際社会の平和と安全」 1 の維持は PKO と安全保障理事会(以下では「安保理」)が主導 している。設立直後の平和維持は安保理が中心であったが、常任理事国である米国とソ連が東西冷戦下で 対立し、安保理における拒否権の発動が多かった 2 ため、機能不全という状況が長く続いた。しかし、冷戦後、 平和維持への国際社会の期待が高まり、PKO による国内紛争への介入が多くなった。そして紛争の多様化に ともない、PKO に与える任務およびその活動が広範囲になった 3 。 PKO の伝統的な活動内容は 3 点が挙げられる。それは「派遣地域のパトロール」、「休戦協定違反の防 止」、「紛争の再発の場合の調停者」 4 である。しかし、ポスト冷戦ではその任務が拡大され、停戦の監視役に 加え,元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や治安部門改革(SSR)、選挙、人権、法の支 1 国連憲章第 1 章。