歌舞伎「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」+長安のことなど (original) (raw)
歌舞伎座での9月の昼の部の演目が、『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』の再演でした。
(と…アップが遅くなりましたが)
「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」
夢枕獏さんの同名小説が原作。
原作ファンです。長編小説ですが、語りがアツく、一気読みしてしまう勢いのある作品。
日中合作で映画化もされています。
歌舞伎としては、新作歌舞伎『幻想神空海 沙門空海唐の国にて鬼と宴す』として、弘法大使誕生250周年を記念し、平成28年に初演された作品の今回は再演でした。
初演に引き続き、松本幸四郎が空海、松本白鸚が憲宗皇帝を演じるという豪華さ!
あらすじ(歌舞伎座サイトより)
唐の都長安では、「皇帝の次は皇太子も倒れるだろう」という不穏な立札が夜な夜な現れる怪奇現象が起きていました。さらには、皇帝の崩御を予言した化け猫がいたという話まで。そんな話を聞いた空海(幸四郎)は、早速噂の化け猫がいるという屋敷に向かい一連を解決しようとしますが、事件は50年前にまで遡り…。時空を超えて唐王朝を揺るがす大事件に空海が挑みます。
序幕のクライマックスは、遣唐使として唐の都長安にやってきた、空海と橘逸勢が白楽天と共に、楊貴妃の墓にやってきて、阿倍仲麻呂の手紙を読むところ。
実際には50年の差があり、長安で空海と阿倍仲麻呂が出会ったことはなかったのでしょうが、もし出会っていたら…と夢の広がる展開。
大詰では、白楽天は長恨歌を書き上げ、さらに空海たちは憲宗皇帝に謁見。
皇帝は空海に、宮殿の壁に書かれた王義之の書(曹操の「短歌行」)を見せ、それと対をなす書を所望。
みんながしり込みするような難題を、空海は颯爽と引き受け、曹操の子・曹植の「高樹悲風多し」という詩にちなみ、「樹」の一文字を記します。
皇帝はこれをたいそう気に入り、空海の異例ともいえる早期帰国を認める…という結末。
空海が真言密教を習得した「青龍寺」
物語の序盤で、空海は真言密教の免許皆伝を得るために、「青龍寺の恵果和尚に会いたいけれど、普通に会いに行ったり、寺に修行に行っては、奥義を授かりまでに時間がかかりすぎる、相手から請われて行かねばならぬ」と語っています。
そのために、化け猫の謎を解こうと楊貴妃の墓に行き、見事50年前の恨みを紐解き浄化させることに成功させ、最後には恵果和尚からのお呼びがかかるという展開でした。
もちろん小説や舞台で脚色はあるでしょうが、実際に四国からの私費留学僧だった空海が、長安滞在わずか2年で、弟子数千人と言われた恵果和尚から真言密教の奥義を唯一授けらえたというのは、すごい話だなあと。
昔の人って、どうやって中国語をネイティブ並みにマスターしてたんでしょうね。
生まれ変わるなら長安に…
最近、友人たちと集まったときに、過去の好きな時代と場所に生まれ変われるならどこでよいという話になり、「江戸」人気が高かったのですが、あと平安時代の京都とか、私は断然唐代の長安だなあと。
あの多様な民族と文化が混然とする長安に、行ってみたいなあと。
(長安で長生きできる自信はありませんが…)
そうそう、神奈川漢詩連盟のネット吟行会の前回のテーマは「長安」だったんですね。
残念ながら参加できませんでしたが、公開された連句を眺めているだけで長安への夢が広がりますね。
阿倍仲麻呂と李白の交わりも、時代のあこがれ!
羊の肉を片手に、詩の宴…いいですね。
神奈川漢詩連盟のホームページより