うれしいニュース。ハワイの山火事で焼けた樹齢151年の木が驚異の回復力を見せる (original) (raw)
1年前にハワイで起きた山火事はまだ記憶に新しいところだと思うが、当時この火事で壊滅的な被害を受けたのが、マウイ島の中心街ラハイナだ。
102名もの犠牲者を出した山火事から1年が過ぎた今、まだ街にはがれきが残り、被災者の住宅問題なども解決に至っていないという。
そんな中、明るいニュースが飛び込んで来た。山火事で焼けて再生が危ぶまれていたラハイナのシンボル、樹齢151年の巨大なバニヤンツリーが、見事に復活を遂げたそうだ。
150年前に植えられたバニヤンツリーが山火事の犠牲に
この木はインドの宣教師から寄贈され、1873年4月24日に植樹されたバニヤンツリーで、プロテスタントの宣教師がハワイに到着して50年目を記念して植えられたものである。
当時の樹高は約2.5mほど。そして植樹から150年経った昨年夏には樹高約18mに達し、人々の憩いの場となっていた。
山火事に襲われる前のバニヤンツリー
image credit:photoAC
だが昨年8月にこの地区を襲った山火事により、このバニヤンツリーも炎に包まれ、約40%が枯死したと報じられていた。
こちらは被災直後のバニヤンツリーの様子。まだ周囲がくすぶっているのが見えると思う。
Video shows Lahaina’s 150-year-old banyan tree smoldering but ‘still standing’ in Lahaina, Maui
専門家たちの献身的な努力で数週間後には新芽が
山火事が落ち着いた後、現地ではボランティアが給水車を出して、数時間ごとにこの木に水をかけ続けた。
その後も樹医や造園業者などの専門家が集まり、ラハイナの象徴でもあるバニヤンツリーの再生に向けた取り組みを続けられた。
そしてその努力が実り、昨年9月にはこのバニヤンツリーに、新芽が芽吹いているのが確認されていた。
被災からちょうど1年経った先日、見事に生き返ったバニヤンツリーの様子が報道陣に公開された。
マウイ島樹木委員会の委員長デュアン・スパークマン氏は、次のように語っている。
木は焦げて部分的に黒くなっていましたが、問題は炎ではなく、熱によって水分が失われてしまったことでした。
木は乾燥して枯れてしまうと、二度と元には戻れないのです
専門家たちはまず枯れてしまった枝を取り除き、木の持つエネルギーが生きている枝に向くようにした。
幹には14個のセンサーが差し込まれ、内部の樹液の流れを追跡し、健康状態と成長具合を監視し続けている。
基本的には、(木の)心拍数モニターですね。治療を続けていくうちに、木の心臓の鼓動はどんどん強くなっていきました。
現在では、何百枚もの葉がついた長い枝がたくさん復活しているのを見ることができます。木の大部分が元に戻ったのは、本当に素晴らしいことです
スパークマン氏によると、枝から地面に向かって垂直に伸びる気根を保護するために、垂直のチューブを設置する計画もあるという。
このチューブには、枝が地面に達したときに栄養分を供給するための堆肥と、少量の水が入っています。
気根が大きく育って、安定した支柱根になるようにするのが目標です
ガジュマルの仲間で、1本で森のように広がる不思議な木
バニヤンツリーは和名をベンガルボダイジュと言い、インド亜大陸原産のクワ科イチジク属の樹木である。
広く張り出した枝から次々に気根を下ろし、その気根が地面に達すると新たな幹のような支柱根となって、どんどん枝が広がっていく。
たった1本の木が森のように周囲を覆って広がるのが特徴で、ラハイナのバニヤンツリーも周囲の半径100mを覆うまでに成長していたそうだ。
ちなみにラハイナのバニヤンツリーの学名はFicus benghalensisとのこと。日本の沖縄などに生えているガジュマルは、英語でチャイニーズバニヤンとも呼ばれ、イチジク属のいわば親戚ではあるが、学名はFicus microcarpaなので同じ種ではないらしい。
ただ広義にはバニヤンツリーもガジュマルも仲間同士ということで、報道などでは一緒にされていることも多いようだ。
山火事に襲われたラハイナのビフォーアフターを比べた映像。冒頭に件のバニヤンツリーが写っている。
ちょっとした森か林のように見えるが、これが1本の木だというから驚きだ。
バニヤンツリーの復活を告げるニュース番組。
Lahaina’s 151-year-old banyan tree is coming back to life after devastating fire
被災から1年が過ぎたラハイナの現在の様子は、先日日本のメディアにも公開され、生々しい被災地の様子が報道された。
ハワイ・マウイ島の山火事から1年「全て無くなってしまった」再建は長期化か|TBS NEWS DIG
既にがれきはほとんど片付いているが、住民の生活が元通りになるのはまだまだ先になりそうである。
スパークマンを含む専門家のグループは、Treecoveryという非営利団体を設立。現在約3,500本の木々の苗木を育てながら、かつての緑に覆われた美しいラハイナの復活を目指しているそうだ。
References:How Lahaina’s 151-year-old banyan tree is coming back to life after the Maui wildfires / written by ruichan/ edited by parumo