ふなばし動物医療センター 日々の診療 (original) (raw)

今回は角膜が穿孔してしまったわんちゃんです。

当初、診察時は眼の痛みが強く、顔まわりを触られるのを極端に嫌がっていました。

眼の中の眼房水も流出して、眼の周りも毛が濡れていました。

よく見ると角膜に穴が開いています。

今症例に対しては、穿孔した部位の保護、治癒促進のため、結膜フラップ術を実施しました。

穿孔部位の近くの結膜を切開し、移動して縫合しました。

今回は経過観察の途中で、フラップ部位が脱落してしまいましたが、

その時にはすでに角膜損傷は治癒されていました。

光を当てると、縫合した部位と傷があった部位には瘢痕が残っていますが、

もともとあった症状はなくなり、今では点眼もいらなくなっています。

目の上には目に見えない菌がたくさんいます。

すこし傷がついてしまい、治癒がなんらかの影響で遅れてしまうとどんどん角膜が溶けて穴が開いていくこともあります。

目の病気の進行は早いです。

目周りで気になる症状がある際には早めに病院へご相談ください。

呼吸促迫、元気消失で来院された猫ちゃんが胸腺腫でした。

来院時胸水、前胸部に腫瘍病変があり、細胞診と胸水抜去を行いました。

胸腺腫は前縦隔にできる良性の腫瘍です。高齢の犬猫で発生が多いと言われています。胸腺腫は腫瘍随伴症候群として、重症筋無力症、剥奪性皮膚炎、高カルシウム血症、リンパ球増加、貧血、胸水があります。

胸腺腫の根治治療として、外科摘出があります。様々な理由で、外科が行えない場合は、緩和治療として、ステロイドの内服をおこないます。

この猫ちゃんは17才、CT検査にて線維素性胸膜炎の発症、腹側胸膜への浸潤、前大静脈、腕頭動脈、右心房と癒着しており、手術のリスクが高い為、緩和治療となりました。

現在ステロイド内服で1年経過しています。

口唇にできた扁平上皮癌の症例です。

最近皮膚をよく掻く、唇から軽度の出血があるとの主訴で来院。

病変は口唇部に限局していますが、自壊していました。

病理検査の結果、扁平上皮癌と診断されました。

扁平上皮癌とは、犬の口腔内に発生する悪性腫瘍のうち、悪性黒色腫についで2番目に発生頻度が高い腫瘍です。

上顎、下顎、舌、歯肉、扁桃など様々な部位に発生します。一般的に局所浸潤率が強く、遠隔転移はしにくい傾向にあります。

しかし、扁桃に発生した扁平上皮癌の転移率は7割程度と高い傾向にあります。

治療の第一選択は外科的切除であり、完全切除ができれば予後は数年単位が期待できます。また、完全切除が困難な場合には術後の放射線治療や化学療法が考慮されます。

後日、病変の摘出を行いました。

これが術後1週間後の状態です。口唇を切除したので外貌が変わり歯が露出した状態になりました。多少お水やご飯はこぼれてしまうかもしれませんが、普段通り摂食はできます。

この症例は病変の摘出マージンがギリギリであるため、週に一度の通院で再発がないかチェックしています。放射線治療も提案しましたが、内科治療を希望されました。また、現在は分子標的薬(パラディア)とNSAIDs(フィロコキシブ)の投与をしています。

術後3ヶ月になろうとしていますが、再発はない状態です。

先日、おへその部分が腫れているワンちゃんが来院されました。

触診してみると、ちょうどおへその部分の腹壁に穴が空いておりました。

相談の上、外科手術をすることになりました。

おへその腫れは、腹壁の穴から脂肪が飛び出てしまっていた脂肪でした。

空いていた穴を縫合し、無事に退院されました。

猫の突発性乳び胸の症例で、呼吸数増加、えずきを主訴に来院。

X線やエコー検査にて胸水貯留、前縦隔内の充実物がみられました。胸水は乳びで、CT検査にて突発性乳び胸と診断されました。

突発性乳び胸の保存療法としては定期的な胸腔穿刺と内科治療として低脂肪食やルチンの投薬があります。保存療法で改善がない場合は外科手術が選択されます。

初期治療で胸水抜去で通院していましたが、胸水の貯留と肺の繊維化に伴う萎縮が進行し、胸水の貯留する期間がどんどん短くなっていました。オーナー様も通院が難しく、また猫ちゃんの通院ストレスもかなりあった為、胸腔ドレーンを設置しました。

胸腔ドレーンとは胸腔内に溜まった主に空気や液体を抜去するために設置します。設置には全身麻酔が必要です。

これを設置することにより自宅での胸水抜去が可能になりました。

術後は毎日ドレーン留置部の皮膚を消毒してもらい胸腔内への細菌感染が起こらないように注意しました。

内服薬が全く飲めないため、定期チェックの時にステロイド注射と長期作用型抗生物質の注射をしました。

この症例は術後1ヶ月ほどで胸水が抜去できないくらい少なくなったため、ドレーンを抜去しました。

その後も定期的に胸水チェックで来院していますが、胸水貯留はない状態で経過観察しています。

症例は1歳、雌の、エキゾチックショートヘアー。

主訴は目が黒くなってきたということで、来院されました。

見てみると、角膜の中央部分が黒く壊死してしまっている、角膜黒色壊死症という状態になっていました。

黒色壊死症は慢性的な角膜潰瘍や角膜炎などに続発し、猫ヘルペスウィルス1型感染や眼瞼内反症などが背景となって、発症するケースが多いです。

眼痛を伴い、流涙等を呈したり、感染を伴う場合は角膜穿孔に至るケースもあります。

治療は手術で、壊死した組織を取り除き、角膜を保護する点眼薬で治療を行いました。

角膜黒色壊死症は動物に不快感を伴ったり、角膜穿孔を起こす事があるので、似た症状にお気づきの方はいつでもご相談下さい。

シニアのMIX犬

元気食欲低下で来院、触診で可視粘膜の蒼白が見られました。

血液検査では再生性貧血、低タンパク結晶。

腹部レントゲン検査で腹腔内に巨大な腫瘤が認められ、腹部エコー検査にて脾臓発生の腫瘤と判明しました。また、同時に腹水の貯留も確認しました。

以上の結果から、**脾臓腫瘤からの腹腔内出血と診断し、その日のうちにCTと脾臓摘出を実施**しました。

脾臓腫瘤は悪性にものから良性のものまで様々あるため、その診断の1つのツールとしてCT検査は有用です。

また、悪性だった場合転移の有無も判断できる事がある上、手術を円滑に進めるために今回は手術と同時にCT撮影を実施しました。

脾臓には巨大な腫瘤と出血の瘢痕として血餅が見られました。

その後、病理検査結果で良性の”血腫”と分かったため、この子の治療は無事完結し現在も元気に過ごしてくれています。

腹腔内出血は大変緊急性のある病態で、中には残念な結果になってしまうこともあります。

そのため、愛犬愛猫の調子が少しでもおかしいと感じたときはすぐに来院をお願いします。