あかなくにの意味 - 古文辞書 - Weblio古語辞典 (original) (raw)

あかなくに…

分類和歌

「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげて入れずもあらなむ」

出典古今集 雑上・在原業平(ありはらのなりひら)・伊勢物語八二

[訳] 名残惜しいのに(=まだ十分に見てはいないのに)、早くも月は隠れてしまうのか。西の山の稜線(りようせん)が引っ込んで、月を入れないでほしいものだ。

鑑賞

あるとき、業平は惟喬親王(これたかしんのう)の狩りのお供をし、その夜は一晩中、飲みかつ語り明かしたのだった。十一日の月が沈む時分(=午前三時ごろ)、親王が退席されようとしたときに、名残を惜しんで詠んだ一首。実景の月を親王に見立てた即興性が、おもしろい。「なむ」は、活用語の未然形に付いて相手に対する願望を表す。「…してほしい」と訳す。


あか-なく-に 【飽かなくに】

まだ満足していないのに。名残惜しいのに。▽「なくに」が逆接の意を表す。

「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげて入れずもあらなむ」

満足していないので。▽「なくに」が順接または詠嘆の意を表す。

「わが舟の楫(かぢ)はな引きそ倭(やまと)より恋ひ来(こ)し心いまだあかなくに」

[訳] 私の舟の櫓(ろ)を引いてこぎ始めないでおくれ。大和(やまと)から恋いしたってやって来た心が、まだ満足していないので。

なりたち

動詞「あく」の未然形+打消の助動詞「ず」の古い未然形「な」+接尾語「く」+助詞「に」